岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

梅雨の日のうちしめりたる生け垣に薔薇はいよいよ輝きを増す

2010年02月09日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「夜の林檎」所収。

 2001年1月の「NHK歌壇」佳作作品。選者:尾崎左永子。

 このころは作歌を始めて2年目。あちらこちらの短歌大会や雑誌に入賞するのが嬉しくて盛んに投稿していた。

 僕は「薔薇の歌」を好んで詠うが、理由がないことはない。僕の生家には薔薇の生け垣があり、従兄弟の家の入り口は薔薇のトンネルがあった。よく遊んだ友人の家には、薔薇ではないが椿の生け垣があった。少年時代の原風景であろうか。

 いま住んでいる団地の近くにも生け垣や塀に沿って植物が植えられているところが多い。薔薇・椿・葡萄・糸杉など様々だが、そこに目が行くのも少年時代の記憶が深く刻まれているからだろうか。

 薔薇は美しい。雨のあとに花びらに露が残っていたりすると、ことに。この一首が成功しおたとすれば、「雨後の一瞬の美」を捉えられたことであり、「うちしめる」という表現が「梅雨」の季節感を的確に表現したからだろう。

 写生だとか写実という意識はまだそれほどなかったが、美しいものを美しく表現したいという願望が強かった。

 この作品以外の「NHK歌壇」の佳作作品はこのあと順次紹介していこうと思う。






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