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日本による朝鮮の植民地支配(歴史学による検証)

2014年05月02日 23時59分59秒 | 歴史論・資料
日本による朝鮮の植民地支配

 1876年まで、朝鮮は鎖国をしていた。欧米各国は軍艦を派遣して開国を迫った。だが、1866年のアメリカの武装商船、同年のフランス艦隊は、朝鮮の反撃にあって、撃退された。朝鮮を開国させたのは、日本の引き起こした「江華島事件」だった。日本は1875年に、軍艦を江華島に派遣し、江華島の砲台を破壊して、朝鮮に開国を迫った。こうして締結されたのが、「日朝修好条規」だった。これは、日本が欧米と締結した「不平等条約」を朝鮮に認めさせたものだった。これがこれ以降の日本の朝鮮政策(侵略)の手始めとなった。

 日清戦争まで、朝鮮の宗主国は、清国だった。前近代の東アジアには「柵封体制」というものがあった。中国の歴代王朝を「宗主国」として、周辺諸国が「朝貢」をするシステムだ。しかし、これは儀礼的なものであって、必ずしも、東アジアが、中国に臣従したものではなかった。いわばヨーロッパが入り込めない、特殊な「東アジア世界の多国間体制」と言える。朝鮮は清国の属国ではなかった。

 日清戦争の結果、「下関条約」によって、清国は「朝鮮を独立国」と認めた。これは「柵封体制」からの朝鮮の離脱を意味し、日本を含む植民地帝国が朝鮮に侵攻するきっかけとなった。朝鮮の植民地化、経済進出の、意思は、ロシア、日本をはじめ、アメリカ、イギリスにもあった。

 日清戦争の結果、日本は台湾を植民地とした。遼東半島も清国から割譲した。遼東半島は朝鮮半島の付け根部分にあたり、ここを日本が領有するのは、日本が朝鮮、満州を侵略する橋頭堡となるはずだった。しかし、ロシア、フランス、ドイツの「三国干渉」によって、日本は遼東半島を清国に返還した。

 日露戦争中に日本は朝鮮からロシアの影響力を排除し、1904年に「第一次日韓協約」を締結。これによって日本は朝鮮の外交権を奪った。

 1904年の元老院会議、閣議決定で、日本は「朝鮮を食糧、原料の供給地と位置付け、日本人の朝鮮国内での土地所有権、借地権を要求、朝鮮国内での林業、鉱業、漁業面でも日本人の経営権の拡大」を国策として決定した。

 1905年。「第二次日韓協約」を締結。日本は朝鮮統監府を置き、朝鮮の内政をにぎり、朝鮮を「保護国化」した。これにより朝鮮は独立国の地位を失った。この協約は、韓国皇帝の批准がなかった。しかし、「第一次日韓協約」で、韓国は外交権を失っており、1906年の「第二回万国平和会議」に代表を送り、欧米各国に「第二次日韓協約」の不当性を訴えようとしたが、実現できなかった。

 1907年。「第三次日韓協約」。朝鮮の内政面での韓国統監の指導権を明記、法令の制定、諸政策の実行には、統監の承認が必要とした。

 1910年。「日韓併合条約」。日本は朝鮮を完全に日本領とした。

 この一連の過程で、伊藤博文などの日本政府が、神経を尖らせたのは、日本の朝鮮植民地化への、イギリス、アメリカ、ロシアの了解を取り付けることだった。イギリスには「ビルマ、インド防衛」(第二次日英同盟)、アメリカに対しては「アメリカの植民地であるフィリピンに、日本が手を出さないことで、了解を取り付けた(桂タフト密約)。

 植民地支配下の朝鮮。朝鮮総督府には、代々軍人が任命され、武力による抑圧が続いた。普通学校は公立とされたが、「朝鮮語」の使用は禁止され、日本語による授業が強制された。また土地調査事業によって、多くの韓国農民は、小作農に転落し、かわって日本人の大土地所有者が増加した。日本の民間企業、半官半民の企業が、日本よりの農業移民や鉄道電話電信事業を行い、日本産の綿織物の重要な市場として、朝鮮は位置づけられた。

 「創氏改名」制度を作り、朝鮮人に日本名を名乗るのを強要し、朝鮮語教育を全廃し、朝鮮語を使った児童に罰を加えた。(朝鮮人の反発が強く、のちに一部緩和された。)

 しかし数々の差別迫害が原因で、1940年には、朝鮮人の80パーセントが、日本人名を名乗らざるを得なかった。(皇民化政策)

 こういう事実に対し、歴史修正主義者たちは、「日清戦争を朝鮮の解放戦争」と描き、皇民化政策の緩和されたときの資料を持ち出してその政策を否定し、「日韓併合は国際法にのっとった条約だ」、「ハングル語を広めたのは日本の功績だ」、「朝鮮を欧米列強の脅威から守った」「ポルトガルやスペインの南米支配よりも緩やかだから朝鮮は植民地ではない」などと主張する。

 日本の戦争責任を過少に見せようとする、自国の歴史を相対化出来ない、不当極まりない主張である。

参考文献「これならわかる韓国、朝鮮の歴史」(大月書店、三橋広夫著)、「日清日露」宇野俊一著(小学館、「日本の歴史」26巻)、「朝鮮史」(講談社現代新書、梶村秀樹著)、「日本近代史要説」(東京大学出版会、高橋幸八郎ほか編)




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