岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

落武者の影曳くごとき男らがひしめき合えり 終バスの中

2010年06月08日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「夜の林檎」所収。帰宅途上の歌。

 終バスには仕事に疲れ切った人々が乗る。私鉄の駅から乗るが、23:00が終バス。それ以降は「深夜バス」となり料金は2倍。にもかかわらず満員になる。

 酔っ払っている人あり、席に座って目を閉じる人あり。僕もその一人なのだが、駅が始発なので何とか座れる。

 不意に「落武者」という言葉が浮かんだ。揶揄しているのではない。同情しているのでもない。直感的にそう思ったのである。

 月例の歌会に出した。「もっとリアルに詠んだ方がよい。」という意見もあったが、「かわいそう」という女性の声が上がった。これ以上リアルに表現する必要はないと判断し、原案通りにした。

 最近、同じバスの時刻表を見た。「深夜バス」の便数が増えている。23:00過ぎにわずか2本だったのが、今では4本。そのかわりタクシー乗り場の列は短い。

 これも社会の一面だろう。




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