・悔しまむ罪さへなくて堪へがたきこの空白は夜半につづかむ
「さるびあ街」所収
強い自己凝視作品だ。「悔しまむ」「罪」「堪へへがたき」「空白」とたたみかけられて、作者の限界に近い苦しみを表現して余りある。
「何を悔しむ」「なぜ悔しむ」「原因は何か」これらは全て捨象されている。「捨象」「自己凝視」佐藤佐太郎の技法を引き継いでいるが、佐太郎にはこのように強い表現はない。
そこが作者の独自性だろう。
作風は全く異なるが「私ほど佐太郎の歌論を継いでいるものはない、と思っている」と作者は言う。確か、歌集「炎環」の後記にそう書いてあった。