「第1回北ノ聲」 10月6日(月) 札幌、ギャラリー北のモンパルナス
「第1回北ノ聲」は3日間の予定だった。札幌に1泊して余裕をもって帰京するはずだった。しかし台風のため帰りの便が欠航し、札幌にもう1泊することになった。宿のオーナーは画廊も経営していて、その画廊では「北ノ聲」参加詩人の大島龍の版画の個展が開かれている。
宿泊の手続きをするときに、参加詩人の田中健太郎が新刊の詩集『犬釘』をオーナーに贈呈した。犬釘は線路を枕木に固定する釘だが、宿のオーナーがそれを、いち早く理解してくれて、旧国鉄労働者の歌を歌ってくれた。そのあと詩や詩人についての話でオーナーと僕たちは意気投合し、お礼として、急遽「聲の会」をその画廊で開くこととなった。僕は最後の一日で京都と同じように一日観光バスで札幌を巡るつもりだったが取りやめた。
参加詩人は、天童大人、大島龍、原田道子、福田知子、岩田亨、田中健太郎の6名。前日に引き続いて、札幌の写真家、中島博美が聞きに来てくれた。
会は先ずオーナーの独唱から始まった。僕の出番は何番目だったか忘れてしまったが、大島龍のアドバイスに沿って、読み方を工夫してみた。『短歌』に発表した7首詠を3組、『うた新聞』に発表した5首詠、それに「詩人の聲」で完成させた30首詠を一気に読んだ。
「意思表示」の主題は「平和の希求」『うた新聞』。
「薔薇の白き」の主題は「原子力の平和利用の安全神話の崩壊」『短歌』。
「青深くあれ」の主題は「原子力災害からの復興の願い」『短歌』。
「遠き雷鳴」の主題は「作者の汎神論的世界観」『短歌』。
30首詠「鎮魂」は「詩人の聲」に掛けながら完成させた、連作。
時間は計らなかったが、アドバイス通りそれぞれの作品の主題を聲に出して再確認しながら読んだ。この旅で、4回「聲を撃った」が、4回とも違う作品で違う読み方をした。これも僕にとっては、初めての経験だった。
この会の最後は6人の詩人と、写真家の中島博美、宿のオーナー、の8人で、吉田一穂の「白鳥」をリレー音読した。
「第1回北の聲」は非常にハードで、クタクタになった。その細々としたことは別途、紀行文「小樽の旅」「北海道の旅」に書こうと思う。
だがこの旅は僕にとって又とない体験だった。作品も僕自身も、生まれ変わったような気がしている。聲も心も作品も考え方も、一皮剥けたような心地だ。これを今後の創作活動に活かしたい。
(終わり)
