岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「ブナの木通信」(「星座65号」より)

2013年04月01日 23時59分59秒 | 作品批評:茂吉と佐太郎の歌論に学んで
ブナの木通信

 今号より選者を務めます。この通信の名は「ブナの木通信」としました。白神山地のの森の土は、厚い堆積物によって出来ています。作者一人一人が今まで培ってきた人生観や価値観、世界観。そういったものが背景に感じられる作品を期待したいと思います。


 (夕映えの中の銀杏ももぢの歌)

 具体は「夕映」と「銀杏もみぢ」。二句目から四句目までは作者の主観です。客観と主観が上手く相まって、銀杏の生命力のようなものを捉えることに成功しました。


 (御灯の炎を見つめる歌)

 炎を見つめるという作者の主体的行為によって、心を鎮める祈りのような情感を表現出来ました。一首の中に作者の行為を明示することによって、情感がより鮮明になります。


 (街路樹の高く連なる街に心が膨らむ歌)

 抒情詩は作者の心情を表現するもの。この一首には「嬉しい」「悲しい」といった主観語が使われていませんが「心ふくらむ」という表現によって主題が伝わって来ます。上の句の場面設定がそれを支えています。

 (父と夫と二代使った籐の椅子にもたれる歌)

 国や人に歴史があるように、家族にも歴史があります。結句によって、その歴史を落ち着いた気持ちで振り返っている様子までが伝わって来ます。

 (不知火の海の秋ざれの岸辺を行く歌)

 五句目が擬人法ですが、言葉を飾っている印象が全くありません。初句と二句目とで景を確かに捉え、結句で作者の場所と行為とをしっかり表現しているからでしょう。

 (色褪せた前掛けの歌)

 (風の生まれる始めを思う歌)

 (草を焼く煙がゆるくのぼる歌)

 (穏やかな日和の歌)

 (弱い植物からすがれてゆく歌)





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