岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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落日の岬・万騎疾走の歌:尾崎左永子の短歌

2022年09月06日 20時42分44秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・落日を送る岬の夕凪に聴こゆ万騎疾走のおと

「春雪ふたたび」所収。

 地名は捨象されているが、これは稲村ケ崎の故事を素材とした作品。鎌倉時代の再末期。鎌倉をせめあぐんだ新田義貞は、切通を攻めずに海岸沿いから鎌倉に攻めいった。

 稲村ケ崎の浜辺に、日本刀を投入し、引き潮を祈った。潮が一瞬引いて、新田軍は鎌倉に突入。「太平記」の記述だが、歴史的事実の真偽より、これを素材にして作品化した作者には脱帽。「NHK歌壇」で紹介された時、鳥肌がたった。

古典の知識はなおのこと、地名が捨象され、新田軍の騎馬武者が音を立てて走りゆく音が耳に響く。

 尾崎左永子の代表作のひとつだ。





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