「星座α」創刊号28ページから29ページまでより、僕の「選評」を紹介する。「です」「ます」調で書いた。僕に先立つ選者二人に続いての「選評」。作品は省略した。
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「佐太郎の心を継ぐ」という、この雑誌の趣旨に沿って、斎藤茂吉と佐藤佐太郎の歌論を参考にしました。
「印象鮮明であること」「言葉のつながりに無理がないこと」「声調・語感の重視」などです。
そして「写実」。写実とリアリズムは違うのですが、「ものを詠む」ことを基調にするのが共通点です。では選評を。
・(一首紹介・素材は「百合のつぼみ」)
下の句で百合のつぼみのふくらみがしっかり表現されています。「刻々と」というのは実際に見続けているのではなく、作者の感受でしょう。
・(一首紹介・素材は「蛍の光の点滅」)
微かな点滅の美しさをとらえられました。蛍を「ほうたる」と呼ぶのは俳句でよく使われますが、語感がやわらかく、リフレインも光の点滅を思わせます。
・(一首紹介・素材は「立葵の花」)
結句が立葵の花の形態や咲き方をあらわすだけでなく、昼の陽炎の印象と結びついています。
・(一首紹介・素材は「入江にひびく引き潮の波音」)
初句で静かに詠いおこし、下の句に驚き、発見があります。また立体感や奥行きも感じられます。
・(一首紹介・素材は「雨後の畑の草刈り」)
下の句の表現により、唇をかみしめるような作者像が浮かびあがってきます。
・(一首紹介・素材は「山道の傍らの湧き水」)
作者の位置と、湧水を手に受ける冷涼感が鮮明に表現されています。視覚でとらえたものを表現していますが、情感は触覚です。
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創刊号に集ったのは約100名。「星座」創刊時を上回った。 また注目点は三つ。
1・「佐太郎の歌論と実作に学ぶ」という方針が、太い柱のように貫かれていること。尾崎主宰による「純粋短歌論」の紹介、「佐太郎のことば①」が実作者の参考になるように配慮されながら書かれている。
2・約100名の出詠者の作品のほか17名が文章を書いている。全体の二割弱だ。ぼくは「アルタイル星」欄に名を連ねたが、ここは「大体選者級およびベテラン」という位置づけで、人数は15人。まさにおのおのが、役割分担をしているという感が強い。
3・最終的には全作品と文章に尾崎主宰が目を通す。
ここまで記事を読まれた方はすでにお気づきかと思う。この三つは地下700メートルに閉じ込められた33人の作業員を70日間まとめ続け、岡井隆が「未来」を立て直した手法。現在のベストセラー、ドラッカーの経営学のマネジメントの基本に合致している。
創刊号の出詠者は100名ほどだが、大いに可能性を秘めた雑誌だと僕は思う。
付記:< カテゴリー「茂吉と佐太郎の歌論」「写生論アラカルト」「斎藤茂吉の短歌を読む」「佐藤佐太郎の短歌を読む」「短歌の周辺」「短歌史の考察」 >をクリックして、関連記事を参照してください。
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248-0003
鎌倉市浄明寺3-8-31 浄妙寺ガーデンテラス内
「星座α」編集部(発行人・尾崎左永子)