岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

腕組みて人皆前を睨みおり 寒さ沁み行く早暁のバス

2010年01月22日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
2000年(平成12年)。夢中になって「NHK歌壇」に投稿した1年だった。この年の6月第一週で「尾崎左永子選:第一席」になったのだが、それがテレビ放送された直後に5月第一週の「佳作」として「NHK歌壇」2000年7月号に掲載されたもの。

(この辺の時間差については、何度か投稿した経験のある方ならお解り頂けると思う。)

 この頃は、仕事場へ始発バスで通っていた。冬は当然日の出前でとてつもなく寒い。乗客もそんなに多くないので、車内もしびれるほど寒かった。乗客はみな席に着き、寒さしのぎに腕を組む。「何でこんなに寒いんだ。」と言わんばかりの顔をして。それがおかしいやら、つらいやら。僕もそのバスに乗るのだから、多分同じ顔をしていたのだろう。

 題詠「暁」。「暁のバス」という表現も考えたが、寒さを表現するには漢語のほうがふさわしいと思われた。

 「何でこんなに寒いんだ。何でそんなに睨むんだ。」

 こんなユーモアも入れたつもりだった。が、これが「星座」の尾崎主筆との出会いだったことを考えると、僕にとっては忘れられない作品となった。

 歌集「夜の林檎」では「簾外抄」に入れた。「簾外」とは「簾の外」と言う意味。主として「運河の会」「星座の会」に入会する前の作品を配列した。




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