現代の世界には「閉塞感」が満ちている。
先ず、国外の経済状態。ギリシャに始まったヨーロッパ金融危機。ギリシャを支援するかしないか。また当のギリシャが支援を受けられる条件の国家財政の緊縮に応ずるか否かでもめている。「危機回避へ」「いっそうの資金援助の用意を決定」とまるで日めくりカレンダーのように変る。アメリカではウォール街の占拠が起き、中国では労働争議、チベットのデモ。経済の状態が不安定だ。アジアの金融も資金増強などというニュースが新聞の見出しに踊る。
その不安定さによりユーロ安、ドル安が進む。相対的に円高となる。本来の通貨高は、その国の経済力のある国の通貨が高くなるものだが、市場はそう動かない。より強い方へ動く。今の日本の経済は決して安定してはいないのに。金利を下げても景気はよくならない。1980年までの経済政策の「定石」が通じない。菅内閣の経済産業大臣のK氏は、衆議院初出馬の時のテレビインタビューに応えて、「不景気対策は利下げと減税」と言ったが、その両方が通じない。
中東も不安定だ。アメリカがイラク、アフガニスタンからの撤退や兵力縮小を言ったが、問題が二つ。一つは派兵した国の後始末が出来ていないこと。派兵先の国内の混乱はおさまっていない。それはアメリカが海外に軍を展開するだけの財政力がないための撤退、縮小だからだ。もう一つは中東から東アジア(対中国)に軍の展開の方向を変えるということ。何のことはない。中国との軍事バランスの問題だったのだ。中国の「戦略海域」(東シナ海)境に沖縄があり、太平洋の西半分におよぶ「戦略海域」の境にグアムがある。海兵隊の沖縄からグアムへの移転は、対中国の布陣だ。安定しているから引き上げるのとは訳が違う。
その中東は、「アラブの春」「ジャスミン革命」などと言われ、次々と独裁政権が倒れたが、それ以降安定するかどうかは、わからない。
と従来考えられなかったことが次々起こっているのだが、従来考えられなかったことだけに、これと言った処方箋がない。何が起こるか実は誰もわからないのではないか。G7とかG20といった国際会議が毎月のようにある。だがいい案はなかなかないのだろう。だから毎月開く。TPPやFTAといった貿易の問題もある。
これだけは言える。耕作可能な農地は何としても守る。今年、比較可能な統計をとり始めて、20年振りか何かで貿易赤字となった。つまり、外貨を稼いで安い農産物をいつまでも輸入できるとはかぎらない。まして地球上の人口は70億を超え、いずれ100億まで増加するという。食糧問題は待ったなし。その時に耕作面積の減少は防がねばならない。
岡井隆の言うように「国家や国民のありかたが変る」日が、そう遠くないということだろう。どのようにかわるか、それもまた五里霧中である。このような時代の目撃者になれるということは、或る意味幸運、といっていいかもしらない。目を見開いてしっかり見ておこうと思う。