*ウサギのお部屋*

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モンゴメリ「炉辺荘のアン」(1939)

2022年11月21日 | 
 
松本侑子さんの全文訳と詳し過ぎる注釈のシリーズ。6作目。
これも、4作目の「風柳荘のアン」(1936)と一緒で、後から書かれた作品。モンゴメリは1942年に亡くなっているので晩年の作品でもある。最後に出た本だったみたい。
アンが34歳から40歳までのお話。

今回も、スコットランドやケルトにちなんだ地名や人名が多々出てくる。
シェイクスピアや、いろんな詩人の作品からの引用も多々出てくる。
これらを全て調べたのは本当にすごいこと。ありがたいことです。

後から書かれた作品だから、この2作にだけ出てくる名前があるんだよね。レベッカ・デューとか、小さなエリザベスとか。
アンの家のお手伝いさんのスーザンとレベッカ・デューとの交流は微笑ましい。

やはり、全文訳、多分読んだことない箇所があるなあと思う。
単に記憶にないのか、ほんとに訳されてない箇所なのかは不明だけど、ダイアナの第3子の話なんかは初めて聞いたかもなーと思ってる。夫と同じ名の長男、コーデリアと呼んでほしいと言ったアンにちなんだ名の長女しか記憶にございませんよ。

大体、2作目以降は、グリーンゲイブルズへ里帰りしてるところから始まってたね?
また確認してみなきゃだけどね。
グリーンゲイブルズのアン(「赤毛のアン」の原題)に戻ったところを描いて、そして、現在の場所へ戻っていくみたいな、タイトルの場所へ旅立っていくみたいな、そんな構成。

アンが主人公の最後の作品(残りの2作品は原題のタイトルに「アン」が入らず、大きくなった子供たちが主人公)とされているけど、それでも、ここにも子供たちのエピソードが満載で、やっぱりモンゴメリは子供を書かせたら一流と思う。あ、大人を書かせても一流ですけどね。
そして、やっぱり、毎回思うが、こんな物分かりのいい母親だなんて、理想的過ぎてあり得ないわって思っちゃう(笑)子供たちもまっすぐに育ってねえ。
きっと、著者自身の理想でもあったのかもね。

子供たちの名前もそれぞれ、思いがこもっていていいね。
よく、夫の名を息子につけたり、友人の名をつけたりするけど、どうなんだろう?
双子に、アンとダイアナってつけたのは、素敵だけど、自分の名が自分の子の名になったり、自分の名が友達の夫の苗字と組み合わさるのって、微妙な感じがしないのかしら?

女子たちの、口のうまい子にほだされて、簡単に友情を捧げては裏切られる話がよく出てきたけど、ここは、母アンとダイアナの完璧ともいえる友情との対比なのかな。
ほんとにあの2人は素敵だなあって思う。単に引き取られた家の隣に住んでた同い年の子と、一生仲良しでいられるなんて、本当にすごいことですよね。これも理想。

幸せいっぱいの炉辺荘の子供たちが、母に、いつもおなかがすいているってどんな感じが知ってる? って尋ねたときに、グリーンゲイブルズに引き取られる前の記憶で、経験があると答える場面、ここも対比が見事。
そして、読者も一緒にその記憶をたどるという。

解説にもたくさん出てきたけど、スイーツはいちいちおいしそうだったなあ。
こんなに甘いものをたっぷり毎日食べていたのね。
あとは、チキンがごちそうなのは、なるほどでした。鶏を飼ってて、卵を使ったり、絞めて料理したりする。豚や牛は遠くから来るから古くなっちゃう。

ほかの作品ほど宗教的なことはなかったんだけど。
やっぱり感覚として分からないのは、同じキリスト教でも、同じプロテスタントでも、同じ宗派じゃないと付き合えないとか結婚相手にはできないとかそういう感覚。
結婚式は教会でやって、葬式は寺でやって、正月に神社に行くような我々には感覚が分からない(笑)
村みたいな感覚だったのかなあ?

ハロウィーンは、ケルトのお祭りという解説があった。
11月1日が新年であり、大晦日がハロウィーン。
死んだ人の魂が戻ってくる系の話は、お盆のようでもある。
(元々の元々は、悪魔崇拝なんだろうけど・・・)

クリスティーン・スチュアート問題!
最後のエピソードがいいね。子供たち1人1人にスポットを当てておいて、あれれ、アンが主人公じゃなかったの? って思わせておいての、このエピを最後に置くのが秀逸。
大学時代に、ギルと婚約してたと噂のあるクリスティーン。
アンも、ロイを棚に上げて嫉妬するのがおもしろかったねー。
ちょっと自分のことも思い出してしまった。あはは。自分のことも棚に上げてねー。
やはり、年をとっても太らないってのは、ポイントである(笑)

あまりこの作品ということじゃないけど。
欧米では、女性が結婚して夫の苗字になるのは同じだけど、
夫のフルネーム+夫人
って呼ばれるのが、何かなーと思う。女性の名前が一個もないじゃん。みたいな。

ギルバートのモデルとされる男性については、訳者の解説で初めて知った。かな?
彼が若くして亡くなってなかったら、もしかして、、みたいなのがあったのかもね。
結婚する前から、結婚してる間もずーっと彼がしてた指輪をしてたってのはすごいな。きっと誰もその秘密を知らなかったのだろう。

これは余談か?
アンも、黙食はいけないって言ってるよ!
ギルのおばさんが何か月も泊まっている間、食卓で何かを言おうものなら、すぐにおばさんの口撃が始まるので、何も言えなくなってしまった。つまらない食卓になってしまったというエピソードより。


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