日常

「中国 王朝の至宝」東京国立博物館

2012-11-30 02:38:52 | 芸術
「中国 王朝の至宝」東京国立博物館を見に行ってきました。

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NHKでは日中国交正常化40周年 特別展「中国 王朝の至宝」を開催します。
中国で最古の王朝といわれる夏から宋の時代にわたる中国歴代の王朝の都・中心地域に焦点をあて、それぞれの地域の特質が凝縮された代表的な文物を対比しながら展示するという新たな手法によって、多元的でダイナミックに展開してきた中国文化の核心に迫ります。

会期 2012年10月10日(水)~12月24日(月・休)
毎週月曜日休館 ※12月24日(月・休)は開館
会場 東京国立博物館 平成館
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自分は東京国立博物館の年間パスポートを持っているので、必ず特別展には立ち寄り、時間があるときは常設展も見に行き、土偶や埴輪を見て癒されてくるわけですが、やはり東京国立博物館はすごい。ここは本当にすごい。


特別展「出雲 聖地の至宝」が11/25までだったので、それも合わせて急いで見に行ったのですが、インパクトは「中国 王朝の至宝」の方がすごかった。

特に感じたのは、古代の人は「カミ(中国では「天」が近い?)」というものをありありと身近に感じていたということ。
そういう「カミ」としか言いようのない宇宙原理のようなものと常に交渉しながら生きていたように思えます。
もちろん、そういう神々にアクセスする祭祀のための特別なものだけが現代に残っているので、そういう風に感じてしまうだけ、と言われるとそうなのかもしれません。そうでないのかもしれません。


ただ、公式HPの「みどころ」でざっと展示品を観てもらうだけで、そんな古代人の心性(神性)は感じれると思います。

日本と中国もなんだかんだヤーヤーありますが、やはり老子や孔子、仙人や気功を生み出した場所だけあって、すごいものはすごいです。展示の現物からは霊気が漂うのを感じました。やれやれ。







漢字研究などの伝説的な大学者である白川静さんは、「サイ」の発見に特徴づけられると言われます。



ちなみに、この文字を「サイ」と読みます。


白川静先生は、この「サイ」を、「神への祈りの言葉を書いた紙を入れるための器」とおっしゃりました。
「サイ」は器で、神への祈りのシンボル。
 
「サイ」に祝詞(のりと)を入れた形が「曰」となり、僕らは「曰(いわ)く」何かをしゃべる。言葉を発することは、元々はとても呪術的でものすごい重みをもっていたわけです。


白川静さんは、<呪的な儀礼を文字として形にしたものが漢字>と著作でおっしゃってます。「呪」も「祝」は同じ意味だったらしいですし。

有名なもので、「道」という字の説明。「道」のツクリは、実は生首を表していて、異国の地に出かける時には、そこには異族の神がいる。自分たちの祀る霊と違う霊がいる。生首を持って歩いて、霊を祓いながら進まなければいけない、そのことが「道」となった。とおっしゃっています。


「告」という字は、「サイ」の上に小枝を挿している形。日本でいえば榊。「告」は神への祈り方を表す文字。「いのる」に似ています。

「史」という字は、「サイ」を枝につけてそれを手に持つ形。神に捧げて祭ること。


ちなみに、自分のブログのタイトル「吾」。
「吾」は、今では「わたし」を表す漢字ですが、「わたし」という音と「吾」が同じ音だったので、借りてきたものだとのこと。元々は少し違う。
「サイ」」の中にある神への祈りを厳重に守るために堅くフタをする必要がある。「五」は木を組み合わせてできたフタを意味します。
「吾」の元の意味は「神への祈りを厳重に守る」ものらしいです。


最初ブログに「吾」とつけたのは、「すべての問題は「わたし」という問いをどういう風に探求していくかが根本にあるのではないか?」と直感し、「我」だとあまりにエゴが強い印象があったので、少しひねって「吾(ワレ)」にしたのです。その後、白川先生の著作を読み、「吾」の深い意味に驚きました。
ほんとは、その知識が先にあってタイトルをつけてたらインテリでお洒落でかっこいいのですが、そういうわけではないのが残念です。

ちなみに、「古」という字は、「(さい)」の上に「干(たて)」を置き、祈りを守ったもの。「吾」に似てますね。永久に祈りの効き目を続けることから、「ふるい」の意味になったらしいです。



白川静先生は「風邪も、ふうじゃという神さまです」とおっしゃっていましたし、この宇宙や森羅万象の中に神々や霊(Spirit)に満ちているのを文字を媒介として感じられていました。


<参考文献>
白川静 「漢字百話」中公新書
白川静「漢字―生い立ちとその背景」岩波新書
白川静「文字逍遥」平凡社ライブラリー
小山鉄郎「白川静さんに学ぶ漢字は楽しい」
白川静,梅原猛「呪の思想―神と人との間」
山本 史也(著), 白川 静 (監修)「神さまがくれた漢字たち」よりみちパン!セ
山本史也「古代の音―続・神さまがくれた漢字たち」よりみちパン!セ
などなど。おもしろすぎるー。




東京国立博物館での「中国 王朝の至宝」を見て、そんな白川先生のことをふと思ってしまいました。なかなか実物をお目にかかることのできないものを見れて、とてもいい展覧会でした。
全国巡回するみたいですね。
・神戸市立博物館 2013年2月2日(土)~4月7日(日)
・名古屋市博物館 2013年4月24日(水)~6月23日(日)
・九州国立博物館 2013年7月9日(火)~9月16日(月・祝)



やっぱり東京国立博物館はいつもすごい!東京にいるのに行かないのは勿体なさすぎる!(世界共通語:Mottainai!!)

ちなみに、東京国立博物館の2013年一発目は円空ですよ!!!すでにHPもできてる・・・。

東京国立博物館140周年 特別展
「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」 
2013年1月12日(土)~4月7日(日)


はー。(ため息しか出ない)
展示を企画してくれる方々、本当に有難うございます。


P.S.
さらにちなみに、自分の職場の机には、目だたないようにこんなカレンダー置いてます。
来年度もあるようです(2013年版は大判の壁掛けタイプとのこと)。平凡社でもアマゾンでも買えます。おすすめー。
















カレンダーにもありますが。
「聖」は、祝詞を入れる器(「サイ」)の下に「王」がある。「王」は「つま先で立つ人を横から見た姿」。「神」に祈り、つま先立ちで「耳」を澄ませて、神のお告げを聴く人の姿が「聖」。

「聖」に呪飾のある「耳」と「口」を加えると、「聴」(旧字「聽」)になる。


人の話を「聴く」ことは、神のお告げを「聖」なる思いで耳をすまして理解できる聡明な人間の「徳」を表す文字。
そういう風に思いながら人の話を「聴く」と、日々の何気ない行為はより崇高なものに昇華されますね。ミヒャエル・エンデの「モモ」にも通じます。