観測にまつわる問題

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尖閣諸島沖漁船衝突事件発生後の両国関係の現況と軍事情勢に対する分析の報告

2011-04-29 09:57:10 | 注目情報
週刊文春(5月5日・12日ゴールデンウィーク特大号)「中国人民解放軍「尖閣上陸作戦」機密文書の全貌」(富坂聰氏と文春取材班)によると、「尖閣諸島沖漁船衝突事件発生後の両国関係の現況と軍事情勢に対する分析の報告」という中国人民解放軍の文書が確認されたらしい。筆者にはその真偽の程は確認できないが、尖閣諸島問題に関心を持つ物として、如何にもありそうだ(中国が言いそうだ)と思ったので、内容に関して考察しておきたい(引用部分のアンダーラインと※は筆者)。

>ここ数年、日本は東シナ海政策において、中国が海軍力を増強している事を口実に自国の海軍力を増強させることを続けてきた。日本の東シナ海における監視能力は広く、すでに台湾にまで及んでいる。日本の勢いは、尖閣諸島をはじめとした域内二十五の島嶼群島にも軍事管理を行なおうとしていることからうかがえる。こうした行動から明らかなのは、日本がすでにこの問題で中国と平和的な話し合いを通じて解決しようとの立場を放棄したということだ。

何を言っているか分らない。最近の軍事情勢は中国が海軍を増強したから、日本が東シナ海にシフトしはじめたということで間違いない。監視能力があったところで、日本単独では戦力は偏っているし、尖閣諸島の管理など政府がやるとは聞いたことも無い。軍事管理どころか、ヤギの駆除など環境保護でさえ行えない(環境の旗をガンガン振っていたはずの民主党政権であるにも関わらず)し、地元住民・政治家でさえ上陸許可が出ないのが等身大の日本の現状だ。何処をどう分析すれば、これで日本が平和的な話し合いを放棄したということになるのだろうか。こういう文書が本当にあるとすればだが、(この文書を作成したとされる)(対外情報を担う)人民解放軍総参謀部二部は、何も知らないかアホなのか嘘つきなのかということになる。

勿論、日本が尖閣諸島問題について話し合おうとしているというつもりもない。日本政府の主張は「解決すべき領有権の問題は存在しない」である(外務省ホームページ)(内実はともかく外形的には中国と大して変らない)。個人的には、日本の主張に理があるのだから、中国に聞く気があるならば、話し合った方が得策だと思っている。

要するに結局何が言いたいかと言えば、中国が挑戦的な行動を取るから(尖閣衝突事件が典型だ)、日本は防衛しているのであって、日本を悪役に仕立て上げようとしている中国の言い分など笑止千万である。尖閣は絶対中国のものだから話し合う気がないというのが中国公式の立場であり、自分のことを棚にあげて、日本が話し合いを放棄したなどとぬかす中国の厚顔さには驚嘆せざるを得ないということだ。

>アメリカを引き込めば、中国がひるむという、日本の“虎の威を借る狐”のようなやり方に対し、中国は余計に警戒心を高め、さらに絶対に妥協できないと反発を強めたのです(※記事本文、軍関係者への取材からの引用)

引き込むも何も日本が攻められればアメリカは日本と共同して防衛に当たる。ああいう日本と中国の紛争で、アメリカとの同盟を確認するのは当然のことだ。日本は残念ながら平時から単独で防衛する体制になっていない。特に中国のような大国に絡まれれば、酔っ払いじゃあるまいし、単独で飛び出すなど出来るはずもなかろう。ブン殴る側が、同盟国と連携するからますます怒っているゾと言ったところで、アホかというより他はない。

今度の漁船衝突事件は決して偶発的に起きたものではない。日本が仕掛けた策謀と断じることは出来ないにしても、この事件が日中間の東シナ海を巡る対立の激化を背景にしていることに変りは無い。そして、この事実は日本がすでに、東シナ海の問題で中国が示してきた「争いを先送りして共同開発しよう」との提案を完全に放棄してしまったことを意味している

我々が仕掛けたのだから偶然じゃないよという主張かと思ったら、そうではないらしい。事件を日本の策謀には出来ないから、対立の激化を強調しようという努力は涙ぐましいが、東シナ海ガス田の問題で共同開発合意を履行しようとしないのは中国である。これは事件が起こる前から、ゴチャゴチャ言い訳(全部自分のものと思ってるなら、約束するな)をして、一向に進めようとしなかったと聞いている。勝手に墓穴を掘ってろ。

そして、尖閣に関して棚上げするという話があるとは聞いたが、棚上げは無論共同開発ではない(少なくとも今は妥協できないから話をしないということ)し、その話自体も日本政府は今否定している。仮に棚上げをしたと仮定しても、十分時間は経っている。いずれにせよ、中国が力の伸長を背景にこれまでの既存のルール・約束を塗り替えたがっているのであって、何か「中国が仲良くしようとしているのに、日本が蹴っている。酷い!」なんてお話が通るわけも無い。そんな事実は無いからだ。(勿論日本がボケッと嘘の垂れ流しを許せば、その限りではない)

日本側は、中国漁船に衝突しただけでなく、逆に中国の漁船が衝突してきたと主張するほど悪辣である。

この文書は事件発生直後とのことである。恐らく、事実を何も知らなかったのだろう。作成した連中に「目は覚めた?」と聞いてみたい。自分から衝突してきて相手が衝突してきたと主張するのが悪辣ならば(確かにそうだ)、悪辣と思っていた日本が被害者で、被害者と思っていた中国自身が悪辣となるのだが、今なら認めるのかね?

>中国の漁民は自ら主権の及ぶ領海内で操業していたに過ぎない。

残念がなら、中国の国内法でも、尖閣諸島は台湾領とされるので、大陸の漁民に漁業権は無く、違法となるのではないか。

>ここ数年、「防衛白書」では中国を敵視する内容がずっと綴られてきた。

中国がここ数年(あるいはもっと前から)西太平洋を制覇しようとしているからではないだろうか。大体、(概ね)中国も認めるように日本の実効支配下にある尖閣を自国領と主張しているのだから、警戒されて当然だろう。個人的には国際司法裁判所にでも提訴して平和的解決を目指してはどうだろう?と提案しておく。それで問題は解決するかもしれないし、日本と妙な連帯感が生まれる(竹島で日本はシカトされている)かもしれない。少なくとも自分は、中国の訴えが無視されれば同情するし、韓国のように訴えるから許せん!などと無茶なキレ方をしたりはしない。

>すぐにも東シナ海での共同開発の話し合いは放棄すべき(※ガス田の話)

東シナ海での共同開発の話し合いはもう終わりで全然構わない。合意を履行してくれということである。中国は今こそ行動の時である。

>中国にある日系企業や日本籍社員、または旅行者などに対し、軍事管理区域内での撮影などの罪名で身柄を拘束して報復する

自分の思い通りにならないと、因縁をつけて「報復する」ことを堂々主張している。

>必要があれば、駐華日本国大使館の武官、もしくは外交官を捕らえる。

必要って何だ?中国の思い通りにならないと、どんな無茶苦茶でもするつもりなのだろうか。やはりならずもの国家なのだろう。

>チャンスを見計らい、海軍陸船体と特殊部隊を魚釣島(※尖閣諸島のこと)に上陸させる。尖閣諸島(※原文ママ)に我が国の主権が及んでいいることを実力によって世界に向け宣言することの意義は、極めて大きい。

軍隊の作戦で上陸するつもりなら、実効支配は及んでいないのである。本当にこういうことを主張しているのだろうか。ちょっとおかしいとしか思えない。ところで、少し遡る(166P3段)が・・・

>やはり中国が尖閣諸島を実効支配していない現実が、国際社会のおける“主権”の認識で決定的に不利になっている。

同じ文書とは思えない。こういうのを支離滅裂と言う。

>“日本との一戦も辞さず”という覚悟を示す必要がある。

こっちのセリフだろう。無茶な因縁をつけられてスゴスゴ引き下がっていたら(菅政権のことだ)、守れるものも守れない。中国がブツけてきた(あまつさえ、全ては日本のせいなどとのたまった)のだから、全世界に公開し非を鳴らせば良かったろう。あからさまな失政である。ブツけてきておいて、メンツもへったくれもあるものか。

中国のお偉いさんの息子は人を轢いておいて「俺の親父は李剛だ。文句あるか。」(日経BP2010年11月19日)と開き直ったと言う。これにはさしもの中国人民も怒ったらしい。自分達の祖国がまさか李剛の息子のような言動をとっていることに気付いていないのだろう。