「定員内入学拒否」という詐欺
私たちは、見えない子どもに、「見ろ」とは言わない。
聞こえない子どもに、「聞け」とは言わない。
車椅子に座る子どもに降りて歩けとは言わないし、呼吸器をつけている子に外して息をしろとも言わない。
でも、私たちは、コミュニケーションの障害がある子に、「がんばってコミュニケーションができれば、高校で学ばせてあげる」という。
知的障害のある子に、「がんばって点数を取れば、高校で学ばせてあげる」という。
そのための「合理的配慮」はなんでもする、と親切にいう。
面接で障害のある生徒には、介助者が付き添い、面接官の質問を繰り返し、説明することもできる。
それでも、本人が自分でしゃべらなければ、不合格。
■
私障害のある子に点数をとることやしゃべることを要求するくせに、知的能力に恵まれた私たち自身はじっと息を殺してみて見ぬふりを続け、変えられる「制度」を変えようとはしない。
私たちは知っている。知的能力や政治に参加できる私たちは、制度を変えることができる。実際、入試制度は定期的に変えられている。
でも、子どもにはそれを変えることはできない。それに合わせるしか、できない。
私たちはそれも分かっていて、制度を変えようとはしない。
そうして制度を自分たちで握っておいて、「高校は義務教育じゃないから希望者全入は無理」だという。
どんなに合理的配慮をしても、どんなに「定員」が余っていても、どんなに「教室」が空っぽで余っていても、「あなたは高校生になれない」という。
一方で、別の学校なら希望者全入できるとも、言う。
どんなに教室が足りなくても、校舎が足りなくても、その時には高校の中に「分校」を建ててでも、希望者全入の願いをかなえてあげる。
定員の余っている高校には入れないけど、教室も足りないくらい困っている学校でなら、あなたのために新しい校舎を作ってあげる。
■
私たちは、社会全体で「知的障害」の子をだましている自覚が足りない。
私たちが作った制度に、合わせられない子どもを「存在しない」ことにし続ける。
私たちは、すべての子どもに、振り込め詐欺と同じことをしている。
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