【映画・きっといい日が待っている】
「きっといい日が待っている」という映画を観た。
1960年代、デンマークの養護施設での強制労働、暴力、性被害、薬物投与等の調査が21世紀になって行われ、その報告書を基に作られた映画。
10歳のエルマーは宇宙飛行士に憧れる少年だった。
母親が癌になり、エルマーと兄は施設に預けられる。
そこで、「将来何になりたいか」と聞かれる場面がある。
エルマーは「宇宙飛行士」と答える。
そして校長に殴られる。
養護施設出身者が宇宙飛行士などなれるものか。「身の程を考えろ」と言う言葉もなく、ただ殴られる。
おねしょをすれば殴られ、辱められ、薬漬けにされる。
この映画をみて、「当然だ」「仕方ない」と感じる人は、今の時代には少ないだろう。
◇
でも、ふと思う。
今の時代に、15歳の少年が、「高校生になりたい」というときには?
高校の校長は、その願いを無視する。
定員が空いているのに、入学を拒否する。
一言の「理由」も「説明」もない。
「身の程を考えろ」と言う言葉もなく、ただ殴られる10歳のエルマーと、いまの時代に、教室の席がいくつも空いているのに入学を拒否される15歳の子どもが重なる。
◇
1967年。
「宇宙飛行士になりたい」と願った10歳の子どもが、校長に殴られる。
「身の程を知れ、親に捨てられたお前が、宇宙飛行士になどなれるはずがない。宇宙飛行士になりたいなんて希望を持つな。現実を見ろ。」
2017年。
「高校生になりたい」と願った15歳の子どもが、校長に無視される。
「身の程を知れ、お前が高校生になどなれるはずがない。高校生になりたいなんて希望など持つな。現実を見ろ。」
「校長」がやっていることは、同じこと。
1967年の事件は、21世紀になって調査され、それがいかに間違っていたかが明らかにされた。
その報告書を基に、映画が作られ、デンマークのアカデミー賞といわれるRobert Awards2017で作品賞を含め6部門を受賞した。
当時の施設のやり方が、子どもに対して、いかに非人間的な態度だったか。
今の時代の人間にはあまりに明らかなことだ。
日本の高校の「定員内入学拒否」が、子どもに対していかに非人間的な態度であるか。
50年後の人たちには、明らかなことに見えるだろうか。
そのころには、私の同世代と上の世代はみんなこの世にはいない。
少しはましな社会になっているだろうか。
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