ワニなつノート

定員内不合格とエレベーター設置


定員内不合格とエレベーター設置



公立高校の募集人数とは、
この高校で、県が県民の税金を使い、
責任を持ってこれだけの人数の子どもたちの
教育を保障しますという「公約」です。

県教委の担当者は、言います。
定員内不合格を出すことについて、
県は校長にどう伝えているのか。

「11月には、定員確保の通知を出している」
「定員を確保しないことは、県民の信頼を裏切ること」


それでも、今年も多くの高校で定員内不合格を出しました。
ManaちゃんとNaoさんも定員内不合格でした。

Naoさんは、中学3年生の受験一色の学校生活のなかで、
2学期からは不登校になりました。
その理由は本人しかわかりません。
でも、お母さんの話を聞き、Naoさんを見てきて、
私には、高校に行けるかどうかの不安、
その不安を感じさせるだけの中3という生活が
一番大きな理由だっただろうと感じます。

だから、放課後は学校に行き、図書館で課題の
プリントに取り組んできたのでした。
学校が嫌いなわけでも、学校に行きたくない訳でも、
友だちに会いたくないのでもありませんでした。
それ以上に、中3という生活の不安、
たぶん自分一人の不安だけでなく、クラスみんなの不安、
学年みんなの不安、さらには先生たちの不安、
すべての親の不安、そうしたものを感じていたように思います。

同じころ、Manaちゃんが「高校には行かない」と言いだしたのも、
同じものを感じていたからだろうと思います。
学校は違っても、中3の生活の重圧は、どこも同じです。

だから、今回も定員内不合格にされたあと、
県教委で二人のお母さんは同じことを口にしました。

この子に障害があり、勉強ができないことは分かっている。
高校に行ってもやっていけるのか、
誰よりも不安なのは親である自分。
だから、人に相談したり、情報を集めたりしていても、
「本当にこの子は高校生になりたいのだろうか?
もしかしたら、親である自分が
行かせたいだけなんじゃないだろうか?
何度も何度も自分に問いかけてきた。
何度も何度も受験はやめようかと思ってきた。
でも、この子が、この子が、自分から行きたいのだと。
何度も何度も、この子の気持ちを確かめながら、
その時々に、本当に高校生になりたいんだという
この子の気持ちを感じたからこそ、ここまできたのです。
中学校の担任も、特色化選抜のときも、
今回の学力選抜のときも、受験の介助に入ってくれて、
本当によくがんばったと驚いている。
中学校の担任の先生も、予想以上のがんばりをみせた。
そして、定員は割れている。
点数で比べる必要もない。
ただ、この子の中学校生活を知り、
受験の日のがんばりを見てくれれば、
空いている席に、この子を座らせない理由など、
この世のどこを探してもない。

Manaちゃんのお母さんは言いました。
「この子はマイナスの人間じゃないと思うんです…
この子はマイナスの子どもじゃないと思うんです…」

入試の介助をしてくれたNaoちゃんの中学の担任は言いました。
「二日間、あんなにがんばったのに」
Naoちゃんは2学期から不登校で、
朝から学校にいくことをしていません。
しかも、1月にN高校の校長から、
「この学校は椅子を蹴飛ばしてでもやらせる」などと脅され、
その高校への受験をあきらめ、他の高校を受験し不合格。
その時には、前の夜からふとんの中で泣いていたそうです。
発表の日の朝も、不安でふとんから出てこれず
号泣していたそうです。
お母さんだけで見にいった結果は不合格。
それでも、すぐに次の受験のために前を向いてきたのです。

2月25日、受験の日に、お母さんが朝5時に起きると、
Naoちゃんは先に起きて準備していたそうです。
2学期から学校に行けず、不登校をしていた子どもが、
訪問した高校で校長に脅され一度は受験はあきらめ、
次の高校も不合格にされ、
それでももう一回チャンスがあるからと、
朝5時前に自分から起きて準備をする子が、
どうして、どうして、席が空いているのに、「不合格」なのか。

受験に行く途中、Naoさんは同級生に会い、
「どこにいくの?」と聞かれました。
「じゅけん」と答えると、同級生たちは、
「自分たちと《おなじ》受験?」というニュアンスで
聞きなおしました。
「おなじじゅけん」と答えるNaoちゃんの顔は
自信にあふれていたそうです。

なのに、どうして、席が空いているのに、「不合格」なのか。

「不合格」なのは、NaoさんとManちゃんを
「定員内不合格」にした校長です。
子どもの生きる姿をみることのできない
校長が「不合格」なのです。
「点数」で子どもを切るだけなら、
校長などいりません。
パソコンを校長室に座らせておけばいいのです。


    □     □    □

2月26日。
NaoさんとManちゃんが堂々と精一杯受験している時。
県議会では、次のようなやりとりがありました。


千葉県議会・平成22年2月定例会
平成22年2月26日・本会議・代表質問にて

○県立学校の施設・設備整備について

質問(吉野秀夫議員)

さらに、県立高校へのエレベーター設置でございます。
現在平成21年5月現在で、県立高校に通う、
しかも車いす利用の生徒は9名在籍していると聞いております。
先ほど申し上げましたとおり、
学校の居住性の質的向上という見地と、
いわゆる我が県が障害者条例を有する県の教育委員会として、
車いすの利用を余儀なくされる高校生への対応を含め、
エレベーターの設置が、現在喫緊の課題の一つであると考えます。

そこでお伺いいたします。
県立高校のエレベーター設置によるバリアフリー化を
どう進めていくのか、お答をいただきたい。


答弁(鬼澤教育長)

県立高校のエレベーター設置によるバリアフリー化を
どう進めていくのかとの質問でございますが、
県立高校のエレベーターは、これまで校舎の新築改築等に併せて
2校に設置してきたところであり、
さらに現在、4月に開校する印旛明誠高校に設置しています。

エレベーターにつきましては、障害のある生徒等も
安心して学校生活を送ることができる環境作りを推進するため、
既設の学校についてもできる限り整備することが望ましいと
考えております。
このため、今回の2月補正予算案では、
車いす利用の生徒のいる学校の中から
2校の整備を進めることとしております。

今後とも、厳しい財政状況ではございますが、
障害のある生徒の状況等を勘案しながら、
可能な限りエレベーター設置による
バリアフリー化を進めてまいります。



   □     □    □


NaoさんとManちゃんが、不合格になる理由は一つもないのです。
国は4月から高校を無償化しようとしています。
それは、高校がほぼ義務教育といっていいほどに、
子どもにとって必要不可欠なものだからです。
県議会でも、こうした話し合いを行なっている一方で、
エレベーターのように新たな予算が必要なわけでもなく、
すでに予算のついた設備・教員のもとで、席が空いているのに、
意欲と希望をもって受験した子どもを不合格にする。

定員内不合格は、大人の子どもへの犯罪です。
定員内不合格は、学校の子ども虐待です。
定員内不合格は、子ども差別です。

少し前まで、セクハラやDVも「犯罪」とは認められませんでした。
やられた方が悪い、弱い者が悪い、という社会でした。
定員内不合格も、同じです。
近いうちに、定員内不合格を出した校長たちが生きているうちに、
自分のしたことがどれほど子どもたちを傷つける虐待だったか、
気づかせてあげようと思います。

コメント一覧

yo
どうして不合格なんでしょうね。

どうして、高校の先生たちは、高校で学びたいという子どもを、平気で、何の痛みも感じないで不合格にするんでしょうね。
今でも、高校は「適格者主義」のままなんでしょうね。
高校は、高校にふさわしい「適格者」だけが入れるところだと、武士みたいな時代遅れな考えをいつまで持ち続けているのか。
しかも、その子どもが「適格者」かどうか、自分たちが「判断できる」「判断していい」と勘違いしたまま。

98~99%の子どもが行く場所。
養護学校では、希望する子どもは100%進学できる。
しかも、国が、すべての子どもが高校教育を受けられるように、授業料を無償化にまでしたのに。

教育委員会や、高校の先生たちに、子どもが高校で学ぶことを、妨害する権利など絶対にないのに。

通信制でがんばっている子どもさんを応援してあげてください。
不合格にされた子どもが悪いのではありません。
不合格にした先生たちが、先生失格なのですから。

子どもと出会えなければ、先生としてできることなど一つもないのに。




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