子どもたちのことを考えていると、
ふと、「親の覚悟の変化」を感じ取るセンサーが、
子どもには内蔵されているんじゃないかと、思うことがあります。
「行ける? だいじょうぶ?」
エリちゃんがそう聞いてきた瞬間を、
私は鮮明に覚えています。
それまで、両親と私の話を聞いている素振りなどまったくなく、
だまって絵を描いていた2年生のエリちゃん。
私は初めて会った両親の話を聞くのに集中していて、
エリちゃんがどんな子なのか知りませんでした。
相談の中身は、特学から普通学級に転校したい、
ということでした。
特学を選んだいきさつと、
どうして普通学級に移りたいと変わったのか、
その親の覚悟をきちんと聞かないと、
その後の話がうまく進みません。
だから、両親の話に気を取られていて、
エリちゃんの様子を感じる余裕はありませんでした。
「行ける?大丈夫?」
でも、その一言で、わたしには目の前で黙って絵を描いていた
子どもが、どんな子どもか、はっきりと分かりました。
両親が、子どもの思いに応えようと本気で覚悟していることも、
疑う余地なく感じられました。
この子の率直さ、賢さを、カンのよさを感じました。
この子なら、親が「迷う余地」なく、
子どもが表現してくれるのを感じました。
彼女のセンサーが感知していたのは、
私の言葉や説明よりは、それを聞いている「親の反応」でした。
両親の気配に、「希望」と「安堵」のきざしを、
エリちゃんのセンサーは正確にキャッチしていました。
両親の話を聞き、それまでの経緯と、会に来られた覚悟を聞き、
私自身がこのご両親の覚悟なら、学校も教育委員会も
正面突破でいけるかなと感じたその瞬間に、
エリちゃんが顔をあげつぶやいたのでした。
「行ける? だいじょうぶ?」
子どもには、「親の覚悟」を感じとるセンサーが
あるとしか思えない瞬間でした。
考えてみれば、親が自分を守るために、
ライオンや怪獣とでも闘ってくれるかどうか。
その覚悟を見極めること。
それは、子どもにとって生存本能とでもいえるものかもしれません。
親が自分を見放して逃げてしまったら、
子どもは自分で戦うしかありませんし、
親があきらめてしまったら、
子どもも一緒にあきらめるしかないのですから。
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