特別支援教育巡り、改善求め議論
愛知の学校関係者ら
2013年6月2日 朝日
児童・生徒の増加で「パンク状態」の養護学校や、教員の「専門性不足」などが問題化している愛知県内の特別支援教育をめぐり、解決策を話し合う「県特別支援教育推進計画検討会議」が発足した。
来年3月までに対策をつくる予定。
学者や学校関係者ら委員24人で構成。
5月末の初会合で、座長に愛知教育大の都築繁幸副学長を選んだ。
深刻なのは特別支援学校の過密化だ。
県内の特別支援学校(盲、聾〈ろう〉、養護学校)は34校あり、約7千人が在籍。
このうち、知的障害の養護学校の児童・生徒が4773人と7割近くを占め、この10年で1・5倍に増えた。
在籍者が400人超の知的障害の養護学校は全国に11校あるが、うち6校が県内。
委員は「適正規模は1校250人程度で、早急な対策が必要」「財政面で、県は自治体に支援を」などと訴えた。
◇
この記事を読むと、この社会で、「特別支援教育」がどういう位置づけにあるかが、よく分かります。
私は、現行の特別支援教育の制度に反対の立場ですが、これではあまりに、生徒も先生もかわいそうな気がしてきます。
記事には、「深刻なのは特別支援学校の過密化だ」と書かれています。
記者が本気でそう思っているのか、ただ聞いた言葉を記事にしているのかはわかりませんが、本当に深刻なのは「過密化」ではありません。
「過密化」を生じた過程での、嘘と子どもの分離こそが、深刻なことです。
「過密化」を生じたのは、「知的障害の養護学校の児童・生徒を、この10年で1・5倍」に「増えた」からではなく、「増やした」からです。
「知的障害」児の割合が変わった訳ではありません。
「知的障害」児が急激に増えた訳でもありません。
増やしたのは「発達障害」児であったはずですが、「発達障害」は、「知的障害」とは違うはずです。
だから、以前は「知的障害・養護学校」でなく、「普通学級」に措置されていたのです。
それを、なんの対策もなく、「知的障害」対象の養護学校に、1.5倍も詰め込んだことこそが、「深刻」な問題なのです。
そもそも特別支援教育は、それまで「きちんと対応できていなかった」発達障害の子どもにも、「きちんと・専門的に・個々のニーズにあった教育」をするという「看板」をあげて勧めてきたはずです。
それを、今になって、『「パンク状態」の養護学校や、教員の「専門性不足」などが問題化している』というのは、子どもたちへの「詐欺」そのものです。
この記事に書かれていることは、特別支援教育が、一人一人の子どものことを考えて勧められてきたのではなく、ただ「普通学級」から「分けられて」、とりあえず「知的障害・養護学校」に詰め込まれてきただけの実態を表わしています。
それは、たとえば1961年文部省発行の「わが国の特殊教育」に書かれている、特殊教育の使命を、「特別支援教育の使命」と置き換えただけのことです。
【 第1章 特殊教育の使命】
「…この、五十人の普通の学級の中に、強度の弱視や難聴や、さらに精神薄弱や肢体不自由の児童・生徒が交わり合って編入されているとしたら、はたして一人の教師によるじゅうぶんな指導が行われ得るものでしょうか。
特殊な児童・生徒に対してはもちろん、学級内で大多数を占める心身に異常のない児童・生徒の教育そのものが、大きな障害を受けずにはいられません。
五十人の普通学級の学級運営を、できるだけ完全に行うためにもその中から、例外的な心身の故障者は除いて、これらとは別に、それぞれの故障に応じた適切な教育を行う場所を用意する必要があるのです。】
こうして、分けられる子どもの気持ちを考えず、「学校」で分けられた子どもが「社会」で分けられないための仕組みも考えないまま、「過密化」という現象だけを問題にすることこそが、特別支援教育の不幸です。
過密化になることは分かっていて、子どもを集めて詰め込んで、「これじゃ子どもがかわいそう」だと訴えて、予算を取り新しい学校を作る。
そして、新しい学校ができれば、そこでまた「分けられる子ども」が増えていきます。
特別支援教育を進める人たちは、いったいどれだけの割合の子どもを、分け続ける気なのでしょうか。
人間を分ける教育は、人間を分ける社会につながります。
その先にあるのは、普通の町と特別支援町、普通社会と特別支援社会に分けられた世界です。
なぜ、みんなのなかでの「支援」や「配慮」を考えないのだろう。
この国はいま、少子化といわれ、子どもの数は減る一方なのです。
その少なくなった子どものなかでさえ、配慮が必要な子どもを分けて、「過密化」の場に詰め込んで、『深刻だ、深刻だ」と騒ぐ。
なぜ、みんなのなかでの「支援」や「配慮」を考えないのだろう。
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