ワニなつノート

いまの仕事 (その2)

いまの仕事 (その2)



…ホームでの日常の他愛もないやり取りのなかで、私はこんなことを感じている。

私が私の人生で大事にしているもの、たとえば子どものころに感じた温もりややさしさを、この子も同じように感じているとわかる瞬間。

「わたしがあたたかいものが、この子にとってもあたたかい」
「わたしが大切にしているものを、この子も大切にしている」
そう感じる一瞬に、自分がここにいる喜びを感じる瞬間でもある。

その「喜び」を通して、私は自分の大事にしたいものを誰に遠慮することなく、「私自身」を基準にしていいのだと思うことができる。

「私」という個人的なことは、個人で終わることではなく、どこかで人とつながっている。
だから堂々と「私の一番大事なもの」を大事に生きていていいんだ。

私は私、あなたはあなた、一人と一人、でもお互いに「大切に思うもの」を持っている者同士として、お互いを受けとめあい暮らしの場を共有している。


その出会いの積み重ねこそが、「壁にぶつかり倒れている私」に、まけるなと、だいじょうぶと自分に言える「私」を支えている。

あなたは独りじゃないと感じさせてくれる人がいるから、一人で立ち上がり、膝の砂を払い、一人で歩き出すことができる。

一人で立ち上がるしかないときはある。
一人で倒れているしかないときもある。
そのときには、誰もそばにいない、誰の声も届かない。
自分で自分を励ますしかない。負けるなと。泣いて終わるなと。

その自分を「励ます自分」は、側には誰もいなくても、どこからも声は届かなくても、
でも私は一人じゃないと言葉や声じゃなく、心の真ん中で感じている。
それを忘れているときには、自分を励ますことができず、倒れている私にはもう雨の冷たさや床の冷たさしかないと間違える。



私が出会ってきた子どもたちは、誰一人かわいそうな子や特別な子どもはいなかった。
障害を理由に子どもが分けられないように。
保育園でも小学校でも、高校でも、「みんな」がいる場所には、障害のある子も肌の色や目の色が違う子も、病気を抱えている子も、両親と暮らせない子どもも、誰もが安心して「子どもであるいまの姿」を生きられるのが当たり前のこと。

私が今までやってきたのは「子どものため」というより、「わたし」の大事なものを踏みにじるものと闘うため、といった方がしっくりくる。


私がこの仕事をしてるのは、子どもに出会うチャンスと、「共にいる」を得られるから。

子どもたちと笑いあえるその瞬間の度に、私の中で繰り返し、過去に笑いあった人たちとのぬくもりを感じる。

私を大切におもってくれた人たちの思いに包まれて生き延びている幸せを感じている。

生まれたばかりのころの、記憶にはないぬくもりや笑顔、父母や祖父母、近所の人たちや、保育園から高校までの同級生たち、毎日のように遊んだ友だちや、大好きだった女の子の笑顔。


ただ「いること」の積み重ね、ありふれたつきあいをやりとりできる生活。
その安心と喜びを共有していく時間を積み重ねることが、「仕事」でもあるという幸せ。

私が、私の心から大事にしてきたものを大事にして、「生きる」ことをすればいい。

私がこの世に生まれてから出会ってきた人たちにもらったぬくもりを、共に暮らす日常で伝えることが、これから生まれてくる子どもたちにつながっていくことを信じて。

コメント一覧

ishizaki
最新会報の感想です

だんながとっても歩さんの原稿を気に入ってました(*^_^*)
いつもは、会報をちらっと読んで終わりなのが「歩お姉さんって死んでるの?だって」って、読み返してました。
子どもの想像力はスゴイ!と思ったそうです
あと、「働くって何してるの?」と聞くので「居るだけかなー」と答えたけど、居ることが仕事になるって人として素晴らしい価値があるってことだなーっと改めて感じました。

yoさんが体調がよく名古屋まで駆け付けてくれたおかげで、私達も素敵な話しを知ることができました
またよろしく(^-^)/です
yo
no-miさん、こんにちは。
ちょっと遅くなりましたが、コメントありがとうございます(^^)v

なんだか病気の治療も仕事も会のことも、どれも中途半端で行き詰っていたところに、ほっとするコメントをいただいて助かりました。

竹原ピストルさんは、ダウンタウンの松ちゃんがベタ誉めの人ですよね。
松ちゃんの番組で一度だけ聴いたことがあります。


一昨日は、市の補導委員連絡協議会の研修会で話をしてきました。
ホームの子が補導されたり、パトカーで帰宅ということもあるし、援助ホームのことを地域の人に知ってもらえる機会なので、場違いかなと思いながら行ってきました。

いつもの就学相談会とは勝手が違うので、かなり緊張して話してきました。
でも、終わってみると、私は就学相談会のときとおんなじ話をしてることに気づきました。

深夜に補導される子たちに焦点をあてて話してはいても、子どもたちが望んでいることが何か、子どもたちが大事にしたいものが何か、それは、就学相談会で普通学級に行きたいと願っている子どものことを話しているのとまったくおんなじだなーと思いました。

そうですね、いなくなる前に、話したいことはまだまだいっぱいありますね(>_<)


no-mi
こんにちは。
久しぶりにおじゃまします。

yoさんがいなくなっちゃう前に(笑)、もっと接触を試みなければ!(笑)

と思いながら時は過ぎました。

最近、私は、竹原ピストル というケッタイな名前のアーティストにハマッています。ご存知ですか?
千葉県出身ですよ。中島みゆきのファイト!もカバーしてます。

♪そうだ、えーと、あの電信柱まで~
 手をつないで歩こ~
 そうだ、えーと、あの電信柱まで~
 手をつないで歩こ~
 そして、あの電信柱から先は、
 それぞれの道を歩き出そう
 ………省略
 だから泣かないで
 諸々大丈夫だよ!
 
という歌がありまして、ブログの話を聞いているといつもこの歌を思い出します。

というどうでもいい話でした。

今後ともよろしくお願いします☆
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