「受験、がんばりました。番号がありませんでした。
次もがんばります。高校生になりたいです。
よろしくお願いします。」
先日の県教委で、不合格にされた子どもたちの言葉を聞きながら、
私は不思議な気持ちになる。
「この子たちは、何をがんばっているんだろう?」
「この子たちは、ここで、何をしているんだろう?」
「障害」があると、ふつうはそのハンディを
「支援」されるはずなのに、
普通の小学校中学校でがんばってきたこの子たちは、
こんなところで、何をしているんだろう?
「この子たちは高校受験をがんばっているんだよ」
「高校生になりたいんだよ」
「だから、ここにきて、県の教育委員会で
入試を担当している先生たちに、お願いしているんだよ。」
…そうかな。本当にそうなのかなあ。
本当にこの子たちががんばっているのは、受験なんだろうか?
もちろん、「受験」はわかってる。
でも、その受験で、この子たちは、
何を、がんばっているんだろう?
「受験なんだから、勉強に決まってるよ。
少しでも点数をとらなきゃ合格できないんだから」
そうかな。
やっぱり点数なのかな。
この子たちは、点数をとるためにがんばっているのかな?
教科学習、筆記試験というのは、
「知的障害」のある子どもたちにとって、
もっとも「苦手な障害」そのものではなかったのか?
そのことが、障害のない人のようには上手にできないことが
生まれた時から、または小学校に入る前から、
間違えようもなく明らかだから、この子たちを「障害児」と、
誰よりも教育委員会や専門家が言い出したのではなかったのか。
だから、普通学級の勉強についていくのは無理だからと、
教科書のない学校や教室でこの子たちのニーズにあった教育を
するというのが、「専門家」たちの言い分だったではないか。
でも、この子たちは、普通学級で
「みんなと一緒に子ども時代を過ごし、みんなと一緒に成長する」
という、この子たちのニーズを、
小学校、中学校の9年間で十分に全うし、かなえてきた。
普通学級でも、特学でも、この子たちが
「教科学習」「筆記試験」が、苦手であることに変わりはない。
目の見えない子どもは、盲学校でも普通学級でも、
その「障害」である「見えない」ことを、見えるようにしろと、
「がんばらされること」はない。
見えるようにがんばれという先生がいたら、
その人は「視覚障害」のことを何も分かっていない
非常識な先生と言われるだろう。
それでも、「がんばれ」「がんばって、少しでも見えるように」
「目の見える子と競争して、がんばって、見えることで勝たなきゃ、
キミの居場所はなくなるんだ」という人がこの世にいるだろうか?
そんな非常識で、差別的で、鈍感で、
子どもに「不可能」なことを強制し、がんばらせ、
そして「できない」ことを分かっていながら、がんばってと、
そして見えなかったら、残念だったね、
また次もがんばってねという人がいるだろうか。
競争する相手は、視力が1・5の子どもや、
めがねをかければ1・2の視力がある子どもたちだ。
その子たちに「負けないように」、
見えない子が「がんばる」っているのは、どういうことだろう?
そこでがんばるとしたら、こんなふうに言うしかない。
「だって、少しでもがんばって、
大きく目を見開いて、光をみなくちゃ。
だって、そうしないと、友だちや仲間と同じ
15歳の子どもたちがそこで生きる場所に、参加できないんだから。
だから、がんばらなきゃ。
がんばっているのは、ぼくがぼくであるために。
ぼくの生きる場所をあきらめるわけにはいかないから。
だから、どんなに無理な要求でも、
それが「公正」な競争だというなら、
ぼくはそのレースにでなければならない。
負けたら?
負けても、ぼくは、いく。
負けても、ぼくは、生きているんだから。
いま生きているこの人生から、降りることはできないから。」
この社会は、高校教育は、
本当に平等、公正な教育の場なんだろうか?
今年の受験も、定員オーバーのところばかりで、
会の子どもたちの春はまだ、見えない。
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