【助けづらい話】(5)
《「たすけにいく」と「たすけにくい」》Ⅱ
「0才の歩ちゃんの命は助ける」のに、3歳の歩ちゃんが「家に帰りたい」は「助けづらい」ことになっている。
それは、どうしてなんだろう。
保育園に行きたい、小学校に行きたい、はさらに「行政は助けない」ことになっていた。
それは、どうしてなんだろう。
医療は子どもの命を助けるのに、福祉と教育は子どもの生活を助けない。
◇
「助けづらい話」を考えていると、5年前に載せた「子どものことば」が何度も浮かんでくる。
【ちーちゃんの一個上の3年生のさくらちゃんのことば。
「ひまわり学級の子が困っていたら助けにくいけど、ちーちゃんだったらすぐ助けに行く!」】
「たすけにくい」と「たすけにいく」。
「く」と「い」が入れ替わるだけで、ぜんぜん違う世界が現れる。
◇
「ひまわりさんは、助けにくい…」
その言葉は、何を表しているだろうか?
その子の「障害児」への「偏見・差別」だろうか。
そんなことはない、ちーちゃんもちゃんと?「障害」はある。
なのに、「すぐ、たすけにいく!」と言えるのだ。
同じクラスでもなく、学年も違う、ただ一緒に通学している子どもの言葉。
その同じ子が、「ひまわりさんは、助けにくい…」という。
「ひまわり学級」への「偏見・差別」だろうか。
そんなことはない。「助けない」というのでなく、「助けにくい」と感じているのだ。
どうやって、「助けたらいいのか、分からない」「助けていいのかも、分からない」。
なぜなら、「知らない」子だから。
「つながり」のない子だから。
大人が誰も「助け方」を教えてくれないから。
「分けて、専門家が面倒をみる」という、「助け方」をしているから。
子どもは、「しろうと」の自分が助けていいのか、分からない。
「ひまわり」さんの子が、「みんなと同じふつうの子」だと、その子はまだ知らない。
日常を分けられて過ごしているから。
ふつう学級にいるちーちゃんは、それだけで、「わたしたちと同じふつうの子」だと、分かっている。
だから、「すぐに、たすけにいく」ことができる。
何ができて、何ができないのか、毎日の生活のつきあいの中で、自然と分かってくる。
「理解はこの子がつくるもの」
「理解は後からついてくる」
一緒に生活するという「対話」能力が、子どもたちにはある。
言葉だけでなく、身体感覚での対話をすることが、子どもにはできる。
その「新しい能力」による、「新しい助け方」を、私たちはまだよく知らない。
◇
保育園で働く歩さんに、「お姉さん、死んでるの?」と聞ける子どもの素敵さ。
「生きているよ」と答える歩さんの素敵さ。
そういう子どもとの対話を、もっと大事にできる自分になりたい。
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