日本テレビ系(NNN) 10月24日(月)
名古屋市名東区で、少年が母親の交際相手の男に暴行を受け、死亡した事件で、少年が、男が出入りする母親の家を離れるよう親戚から勧められたにもかかわらず、「母親を守りたい」として同居していたことがわかった。
この事件は、名古屋市名東区の市営住宅で22日午前、中学2年・服部昌己さん(14)が、母親(37)の交際相手の会社員・酒井・・容疑者(37)に暴行を受け、死亡したもの。
親族らによると、服部さんは今年9月まで名古屋市瑞穂区で母親と小学6年の弟の3人で住み、この家に酒井容疑者が度々出入りしていた。
今月1日に名古屋市名東区に引っ越す際、
服部さんは、弟と同様、母親と離れ、
祖母の家に住むよう親戚から勧められていたが、
母親が酒井容疑者から暴行を受ける可能性があるため、
「母親を守りたいからついていく」と話していたという。
◇ ◇ ◇
(yo)
少年は、母親を、「守れた」のかな。
少年が、死んで、相手が逮捕されたことで、母親は暴行を受けなくてすむようになった…。
そう考えれば、少年は母親を守れた、んだろうな。
でも、「母親」でいることを「守る」には、子どもは生きてなきゃいけないのに。
そうしないと、「母親」でいることを、「守れない」じゃないか…。
でも、もし少年が生きて、相手を殺して、母親を守ろうとしても、この社会は、少年を「犯罪者」と呼ぶだろう。私は小学生のころ、そのことを考えていました。
少年は命がけで、母親を守ろうとしたのに、この社会は、少年を守らない。
少年は14歳。
彼は、どうしたら、生きられたのだろう。
・・・・・・・・・・
◇
昨日、ここに、五女が来てくれました。
五女は、15歳。
自分を守るために。
自分の人生を守るために。
自分の大切な人を守れるように。
一人で生きていくと、思い定めるしかなかった子が、ここにはもう5人もいます。
「一人」では生きていけない子どもとたくさん出会ってくるなかで私は、「自立」は「一人で生きていく」ことではない、と思い続けてきました。
呼吸することにさえ人の手が必要な子どもにとって、安心して頼れることこそが、自立への道だと思ってきました。
先日の名古屋の学習会で、折田涼さんが、学校の先生が「吸引」の研修に参加したときのことを、「そのとき、ようやく自分も一人の生徒として認められたような気持ちがした」と話していました。ずっとその言葉が残っています。
子どもにとって、学校は、勉強するところであり、友だちと生活するところであり、そして「子ども」として、先生に「守られる安心のある場所」であるのだと、感じました。
先生から「自分のクラスの子どもの命を守りたい」と願われないのは、子どもにとってあまりにさびしすぎることです。先生が研修を始めるまでの5年の間、涼さんはその寂しさを抱えて学校にいたのでしょう。
先生たちはふだん考えるまでもなく、子どもたちの安全を第一に考えています。子どもの命が危険にさらされることは、交通事故であれ、病気であれ、けがであれ、極力防ぎたいと願っています。でも、それが、「呼吸器」をつけているだけで、この子の安全を守るのは自分の仕事じゃない、と思われてしまうことになるのです。
子どもにとって、それは命がけの寂しさなのだと、涼さんの言葉を聞いて思いました。
24時間、人工呼吸器をつけて自立生活をしている涼さんや歩さんを知っているおかげで、私は「自立」が「一人で生きていくことではない」と知っています。
◇
でも、15や16で、「世帯主」になり、「国保」の支払いをし、「学校費」や「交通費」を稼ぎ、一人で生活しなければならない子どもに、「自立は一人で生きていくことじゃない」という「言葉」を、使えない自分がいます。
ふつうなら、家族と暮らし、親に守られ、高校くらい「誰でも行ける」と、社会が思い込んでいるなかで、「一人で生きる」と覚悟しなければ、こんな不自由な暮らし、やっていけるわけないじゃないか、と15の私なら思います。
◇
14歳の少年が命がけで、母親を守ろうとしたのに、この社会はその少年を守らない。
もし、彼が生き延びて、15歳になって、ここに来たら、私は彼と何を話そうか。
どうしたら母親を守れるのかと聞かれたら、私はなんと答えるのだろう。
どうしたら弟を守れるのかと聞かれたら、私は何が言えるのだろう。
「自分は一人で生きていけるだろうか」
そう聞かれたら、私は彼と何を話し、どんなふうに暮らしていけるだろうか。
◇
歩き始めたばかりの子どもが、公園でお母さんのそばを離れるとき、一歩歩いては振り向き、また振り向き、何度も確かめます。
いつもそこにお母さんがいることを確かめます。
自分が見ていないときにも、振り向けばそこにいることを確かめます。
一人になっても、一人じゃないことを確かめながら、一人で歩きます。
「一人で」暮らしを営むためにこそ、「一人じゃない」思いが必要になります。
それは、涼さんやhideたちが「一人で」暮らしを自分の暮らしを営むためにこそ、「一人じゃない」思いと「手をかりる人」が必要なのと同じです。
hideといえば、今週の土曜日が学習会です。
『障害のある人への人権侵害をなくすために』
2011年10月29日(土)1時半~4時半
場所:千葉市文化センター9階会議室
そういえば、ちょっと前に、四女と自立生活にかかる費用の話をしていたとき、次女がつぶやきました。
「自立って、お金だけなのかな~」
「そうだよな~。いいこと言うな」とは思うのですが、現実には仕事をしないと携帯代も払えないし…。
◇
昨日、三女がアルバイトの面接に行き、その場で採用が決まりました。人生で初めてのアルバイトです。(ブログを読んでくださっている方たちが一番心配してくれている子です。一安心してください。学校にも休まず通っています(゜o゜)
その後、四女も、近くのレストランで採用が決まりました。
話があちこちとんでますが、このままにします。
一人の子どもを守りたいと願うなら、どの子も安心できる学校や、家や社会の仕組みを考えなければならないのだと思います。
医療的ケアのことも、障害者への虐待の問題も、普通学級入学のことも、ここの子どもたちのことも、私の中ではどれもすぐ隣同士のことです。
これから、五女と買い物に行ってきます。
昨日は、タオルやシーツや毛布、自転車を買ってきました。
今日は鏡やゴミ箱も買わなくちゃ。
寒くなるから上着も。
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松川美里
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