2010年8月8日の『私のわたし』がありました。
自分ではすっかり忘れていましたが、これ、もっともっとちゃんと書きたいと思っていた文でした。
きっかけは、言うまでもなく、師匠の「あーちゃん」が教えてくれたことでした。
もし、あーちゃんがこれを読んでも、「ぜんぜんあたしとちがう」って言われそうな気もするけど。
でも、やっぱり、どこかで、こうした子どもたちの思いを形にしないと、「手のかかる子」には付き添いや介助がいることが幸せって、勝手に思われすぎてるから。
でも、すぐに書き直すこともできないので、忘れないように再掲載してみます。
※ 師匠のあーちゃんの生の様子を知りたい方は、リンクにある、「ありんこ」さんのブログ、あーちゃんの2年生の3学期から3年生のあたりをどうぞ(^^)v
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私のわたし
入学したときから、ずっとそばにいたお母さんがいなくなったのをきっかけに、「親とセットのわたし」が、ほどけた。
学校に入学してからも、家にいるときと同じように、お母さんがそばにいてくれた。
学校に行くときも一緒。授業中も、休み時間も、給食も一緒。
いつも近くにお母さんがいてくれて、トイレに行きたくなれば、いつのまにか背中から声が聞こえ、私が何か困って泣きそうになると、となりで声が聞こえた。
先生が何か話しかけているみたいだけど、よく聞こえない、なにを言ってるんだろうなあと思っていると、「次は体育だから着替えなきゃね」と声が聞こえ、ああ、たいくかあと思う。
お友だちに何か聞かれて、なんて言えばいいのかなーと、考えていると、「それはね」と私の気持ちを、お母さんがちゃんと代わりに答えてくれる。
私は「うん、まあ、そんなもん」と思う。
「お母さんがいつもここにいる」は、私にとって空気とおんなじ。
だって、生まれる前から一緒にいたんだから。
朝の通学途中の風景も、教室も、先生も、お友だちも、机も、階段も、トイレも、着替えも給食も、みーんなお母さんと二人で「わたし」だった。
わたしの体験は、二人一緒の体験だった。
入学式も。教室も。遠足も。プールも。運動会も。
お友だちも。
ある日、生れる前からいつも一緒にいたお母さんがいなくなって、
「親とセットの私」が、ほどけた。
お母さんがいなくなって、私一人のわたしになった。
私がお母さんのおなかの中にまだいる感じのつづき、から、この教室に、私が一人で生まれたみたいな感じ。
わたしが、わたしの身体と、わたしの心と、私の目、私の声で、そして私のわたし一人で
この世界のすべてと向かい合う日々が始まった。
なにもかも、初めての体験。
見ること、聞くこと、触ること、わたしが2年1組のわたしであること。
すべてが、初めての体験。
なんてステキなんだろ。
こうして、一人のわたしになって初めて、わたしはわたしの等身大のわたしに出会う。
わたしは、いま、ここで、なにをしよう。
そうだ、お姉ちゃんの教室が、この学校のどこかにあるはず…。
さがしてみよ。
ピアノの音が聞こえた部屋はどこだっけ。
探さなくちゃ。
トイレにいきたくなったら、一人でどうしようかしら。
のどがかわいたときは、…そうだ、あそこに水道があった。
ブランコは校庭にある。
渡り廊下の先には、
静かで気持ちいい場所がある。
そうだ、私の好きな絵本も、どこかで見かけた。
そのうち、先生がわたしを探しにくるのに出会う。
お友だちがわたしを迎えにくるのに出会う。
そうか、先生は、お母さんじゃなくて、わたしを探すことがあるのか。
先生は、私がわたし一人でも、ちゃんと見えるんだね。
私と同じだね。
お母さんがいなくなって、やっとわたしに会えたんだね。
ここにいるわたし。
がっこうにいるわたし。
だって、ここはがっこうだもんね。
お友だち…。
お友だちは、ずっと前からわたしを呼んでたな~。
わたしが振り向くと、お友だちはお母さんと話してた。
でも、もうお母さんはいないから、
わたしがお友だちと話さなくちゃ。
お友だち…。
いつも、朝いちばんに、呼んでくれるのはマキちゃん。
いちばんやさしい男の子は、たろくん。
お母さんとセットの「お友だち」も、
マキちゃんやたろくんにかわった。
わたしが私一人のわたしになると、
「お友だち」も、わたしのわたしだけのお友だちになるのかな。
わたしのじんせいも。
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