(a) 【普通学級は、「障害のあるふつうの子ども」の、
「ふつう」を育てる所】
(b) 【普通学級は、「障害のあるふつうの子ども」の、
「ふつうの親」を育てる所】
子どもが生まれてすぐに「小学生の親」や
「中学生の親」になるわけではありません。
親は誰でも、子どもが小学生になって初めて
「ふつうの小学生の子どもの親」になり、
子どもが中学生になって初めて
「ふつうの中学生の子どもの親」になります……。
……前々回、こんなふうに書きながら、
数年前に、相談会にきた人を思い出しました。
その人は、子どもが小学校に入る9年前にも、
会の相談会に参加されたそうです。
普通学級に入れることはよく分かったし、
そうしたい気持ちもあったけれど、
子どもの状態を考えて、いろんな教室を見学して、
その時は「特殊学級」という環境を「選んだ」ということでした。
そのときの選択は、それはそれで良かったと思うと。
で、その日の相談は、子どもが中学3年になり、
本人が「高校に行きたい」と言っているのだが、
特殊学級在籍から普通高校に行けるだろうか…という話でした。
特殊学級から高校に進学した子どもは、今までにもいました。
その中に、偶然その子と同じ中学の特殊学級から
進学した子もいたので、そのことも話しました。
そして、今はまだ簡単に高校に入れる状況ではないし、
ほとんどは「定員内」の高校へすべりこむのがやっと、
という現状も話しました。
そして、一番の問題は「高校受験」そのものというよりは、
まず特殊学級の先生に理解してもらうことと、
中学の校長に理解してもらうことであり、
そこで親がゆらがずに話していくことさえできれば、
受験はできるし、高校生になることもできる
ということを話しました。
なにより「お兄ちゃんと同じように、高校に行きたい」という
子どもの希望に、ちゃんと応えてあげることは
大切なことだと思いますと。
そのお母さんは、すでに特殊学級から受験することの
プレッシャーを十分に感じているようでした。
それは、合格するかどうか以前に、
同じクラスのなかに受験する子どもがいないこと、
高校受験という話すらできないこと、
特殊学級の先生には受験への理解が皆無であること、
そうしたことをすでに感じているようでした。
その後、その人が会に来ることはありませんでした。
彼が「お兄ちゃんと同じ高校に行きたい」という希望は、
そこに挑戦するずっとずっと手前で消えてしまったのでしょう。
それは、受験の壁ではありませんでした。
入試制度の壁でもありませんでした。
もちろん本人の「障害」という壁でもありません。
9年間子どものために過ごしたなじみの場所から、
ふつうの社会に戻る壁の前で、
親が立ち止まってしまったからでした。
立ち止まったのは子どもではありません。
子どもは、お兄ちゃんと同じふつうの社会に
進もうとしたのですから。
私は、そう思います。
その人を責めるといった気持ちはありません。
その時、2時間あまり話したでしょうか。
その間、その子はずっとお母さんの隣に座って
話を聞いていました。
そのお母さんの、子どもを思う気持ちは痛いほど
伝わってきました。
できることなら、高校に行きたいという
子どもの願いをかなえてあげたい、
そのお母さんの気持ちは、私がこの24年のあいだに
出会ったお母さんたちと同じでした。
ただ、その気持ちを保ちづけるためには、
子を思う「ひとり親の思い」だけでは足りないのだと思います。
そのためには9年分の支えが必要なのだと思いました。
小学校1年のときから一緒に過ごした子どもたち一人一人の顔と、
その同級生たちの中に当たり前にいた、9年間の子どもの笑顔が
必要なのだと思いました。
そうでなければ、今の受験制度に向って、
「0点でも入りたい」と、がんばることはできません。
まして、15歳の子どもに、一年間の浪人生活をさせてまで、
子どもの思いに、寄り添い通すことはできません。
今週の木曜日は、県立高校の合格発表の日です。
この1年間、浪人してがんばったMちゃんの
とびきっりの笑顔が見れますように!!
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