以下、弁護人の質問とゼロの返答から。
☆てんかんの発作は、いつくらいから?
「4歳ってきいてます」
☆そうすると、小学校では、休んでいるのが多かった?
「休んでいるほうが多かったと思います」
☆じゃあ、学校の成績なんかは?
「あんまり、よくなかったです」
☆中学校にはいってから、特殊学級にはいったね。いつごろから?
「二年生ぐらいやったと思います」
☆いじめられていたのは、特殊学級にはいってから?
「いえ、そのまえからいじめられていました」
☆中学校でいじめられていたというのは、どんないじめられ方をしたの?
「教室のロッカーのなかに入れられたりとか、やっぱり殴られたりとか…」
☆掃除道具とかをしまうようなロッカーのことか?
「資料かなにか、本とか」
☆そういうロッカーのなかに、閉じこめられてどうなるの?
「ガンガン、ガンガンやられて、もう出してくれへんかったりとか」
☆授業中か、授業の前か?
「だいたい、いつも授業のまえと、始まるくらいのころです」
☆先生は来るわけやろう。どうなるの?
「しばらくは気づいてくれない……。
気づいても、『席に座れ!』って、怒られるだけで」
☆あなたが怒られるの?
「はい」
☆殴られたり蹴られたりとかしたこともあるわけやね。
「はい」
☆そのとき、先生はどうしてるの?
「通りすがっていくだけです」
☆あなたが殴られてるのを見てるわけ?
「はい」
☆そのとき、先生に助けてほしいとか、そういう気持ちは持たなかった?
「……ていうか、そういうもんかなって思いました」
☆そういうもんかな、っていうのは?
「だから、弱いもんはいじめられて当たりまえというか」
☆どういうこと? まわりの人に知らん顔されても仕方ないということ?
「はい」
≪第二回公判に引きつづき、弁護人はゼロが
小・中学校時代に受けていたいじめの状況を確認した。
いじめっ子に「蹴られたりとか、殴られたりとか、
ロッカーのなかに入れられて、そのままほっとかれたり」
「手錠をかけられたまま、屋上に、授業中ずっとほったからしにされた」。
先生が助けに来ることはなく、いじめられているのを見ても、
「“あんまり廊下であばれんなよ”って、そのまま行くぐらいでした」
と、ゼロは語った。
そして、肝心のそのときのゼロの《気持ち》について、
弁護人はあらためてたずねた。
☆とくに中学生のころ、いじめられて、
あなたとしてはどんな気持ちになりましたか?
「やっぱり、反抗できない自分が悔しかったっていうか、
自分がもうイヤやったです。
自分がもう……そんな人らに反抗できない自分が悪いんかなっていうような」
☆悔しくて、そのあと、自分が悪いと思うの?
「はい。ぼくも、だから、そんなことを他の人に相談したけど、
やっぱし、なんもやってくれへんかったっていうか、
やっぱし解決してくれへんかった……」
☆そういう相談をだれにしたことがあるの?
「親にもやし、先生とかも」
☆相談したけど、べつに自分のいじめられてる状態は変らんわけやね。
そのことからどう思っていくの?
「そのときは、今度その解決として、
特別学級に入れられたんやけど、それがよけいあかんかったりして……」
☆よけいいじめられたということか?
「もあります」
☆自分が悪いっていう気持ちになるっていうたけど、
それはどんな気持ちなの?
「だから、自分がこんな、力ないから……ていう感じで。
自分が、やっぱり弱いから悪いんかなって」
『「ホームレス」襲撃事件』 北村年子 太郎次郎社 1997
追記:
昨日の新聞に、次のような記事がありました。
【暴行逮捕:中学生ら8人…知的障害者狙い 東京・青梅】
知的障害者らに暴行や恐喝を繰り返したとして、
警視庁少年事件課は22日、
東京都青梅市の市立中学3年生6人(14~15歳)と
とび職(16)、無職(16)の少年2人の計8人を
強盗や恐喝などの疑いで逮捕したと発表した。
調べでは、9人は今年1月中旬、青梅市河辺町9の路上で、
自転車で通りかかった知的障害のある男性(20)に因縁をつけて
近くの公園で暴行し、現金約8万円を奪ったほか、
5月末には知的障害のある少年(15)を
仲間の自宅に連れ込み、ギターで殴るなど約6時間暴行し続けるなど
7件の暴行、恐喝などをした疑い。
青梅市内のゲームセンターで知り合った仲間で、
「自分より弱そうな人を狙った」などと供述しているという。
被害者6人のうち、
2人は知的障害者、
1人は中学校の特別支援学級に通学していた。
被害者を殴りながら、木の棒をマイクに見立て
「感想を聞かせて下さい」とふざけて質問したり、
わざと軽くほおを殴らせて「訴えるぞ」と口止め工作もしていた。
逮捕後も
「いじめて何が悪い」と話す少年もいるという。
毎日新聞 2008年8月22日
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