ワニなつノート

ワニペディア (6)【エンパワメント】

ワニペディア

【エンパワメント】




どの子も地域のふつう学級へ。

必要なら、そこで子ども一人ひとりに手をかすこと。
一人ひとりの声を聞くこと。
ひとりの子どもの表情を聴き、
ひとりの子どもの声を読み、
子ども同士の身ぶりや気配を見ること。

そこにいる誰もが、お互いに応答し合う仲間だと、感じ合える日常。

そこにいられない子どもはいない、という根源を伝えること
そこに戻れない子どもはいない、という常識を伝えること。


命は
いることがすべての基本だと


それは、すべての子どもをエンパワメントすること。

すべての子どもに自尊感情の意味を伝えるため。
ありのままの自分に大切な存在を感じること。


        ◇


できの悪い子は分けられて当然だという価値観に染まらないように。

その価値観は、自分自身を生きにくくさせる。
私自身、それを学びほぐすのに、何十年もかかった。


うまくやらなきゃ。
いい子じゃなきゃ。
目をつけられないように。

うまく切り抜けていかないと、ここに、いられなくなる。
悪い子だったら、ここに「いること」も許されない。

病気になったら、ここに、いられなくなる。
事故にあったら、ここに、いられなくなる。

障害の子たちは、みんな「ここ」からいなくなった。

そして、ここから「消えた」みんなが、どこに行ったのか。
どこで、どうしているのか、多くの子どもたちは知らない。

その多くの子どもたちは、ありのままの自分に大切な存在を感じることができるだろうか。

「ありのままの自分を大切な存在と感じるためには、条件がある」と学んでしまうのではないか。

「条件はない」・・・か?

子どもが必要な支援・援助を提供するために、「分ける」ことが必要か?

日常性、帰属意識と引き換えにしか、提供できない「支援・援助」とは、誰のためのものか?



          ◇



すべての人は
ただそこにいるだけで
もう十分尊い存在です。

すべての人は
自分の尊さを実感し、
他者から尊重されるべき存在です。

すべての人には
輝いて生きようとするパワーが
備わっています。


しかし、暴力を受ける、貶められるといった被害体験は、
自分のパワーへの信頼を打ち砕いてしまいます。

つねに加害者の感情によって
コントロールされてきた彼女は、
自分の生活の在り方を選び、決めていくのは自分以外にないことを
感じることができないでいることが多くあります。


援助者の最終目標は被害者の内にある
自分への信頼のパワーにアクセスし、
活性化することを手伝うことです。


そのような関わりをエンパワメントと呼びます。


エンパワメントとは
相手を励ますことではありません。

被害者が一人ふんばって強くなることでもありません。

一人で力をつけて自立することでもありません。

ドメスティック・バイオレンスのような
解決の困難な状況にある人にとっては、
エンパワメントの第一歩は、
人の力を借りることだといっても言い過ぎではないでしょう。


人に援助を求めながら
自分のパワーを回復する。


エンパワメントとは
自分の内なるパワーの存在に気づき、
そのパワーを豊かに育てることに他なりません。


被害者をエンパワーする過程は
援助者自身がエンパワーされることでもあります。

自分音力を打ち砕かれた人が、
再びその力を取り戻そうとする苦闘に寄り添うことで、
援助者自身も自分の生きる力のみなもとに触れる経験をする、
それがエンパワメントの関係性です。


《森田ゆり 『ドメスティック・バイオレンス』 小学館文庫 》


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