《伊織くんと栞音さんとあーちゃんさきちゃんが教えてくれたこと》(その5)
昨日、伊織くんのRONINが決まった。
あーちゃんのRONINも。
満開の桜並木を歩きながら心は何も感じない。
就学相談会で毎年、毎年、聞いてきた30年分の親の思い。
小学校? 大丈夫かな?
自分だけみんなと違うって、自信をなくすんじゃないかな。
傷つくんじゃないかな。
ふつう学級?
先生はこの子をみてくれるかな。
子どもたちはこの子に話しかけてくれるかな。
この子のことばを聞いてくれるかな。
ひとりぼっちで…、この子がさびしい思いをするんじゃないかな。
それなら別に無理させなくても。
でも、この子は、みんなといっしょに一年生になるってしんじてる。だから。
今日はさきちゃんと栞音さんの最後の受検。
今日、さきちゃん、1年目の今年4度目の挑戦。
《明日は受検日、紗希は前向きに定時制に通う場合の昼間の過ごし方を考え、プールや手芸などの習い事をしたいと言ってます。中学校も明日の受検に向けて、本人の気持ちが切れないように、作文面接の練習を学校で取り組めるよう時間をつくり担任だけでなく他の先生方も一緒に、応援してくれています。》
今日、栞音さん、3年目の今年3度目の挑戦。
《栞音とたくさん、話しました。「やりきった」「くやしくない」と涙を流した栞音。「栞音はもう十分頑張った。もうがんばらないでいいんだよ。」と伝えました。また2次で受検したとしても、栞音を傷つけるかもしれないそれは、親としても辛い。と正直な気持ちをぶつけました。それでも、彼女が出した答えは、同じ高校の普通科を受ける。でした。》
《今送り出しました。またやりきったと、言えるように、想いを全部伝えておいで。と伝えました》
■
この子たちのもう一つの「桜」は、いつの春にも咲いている。
RONINが決まった康治に出会ったのは35年前。
35年前から私は、この「桜」を見ていたことに気づく。
だから就学相談会を続けてこれた。
詐欺師みたいに大丈夫、大丈夫と唱えてきた。
今年もたくさんの「桜」が咲き乱れる。
6歳のころの頼りなさもあやうさも今はない。
ふつうの子なら折れているだろうと思うこの状況に、折れない「希望」がこの子のなかに育ち、花開く。
こんなにも確かな、美しい、希望にあふれた子どもの思い。
この子が仲間と生きてきた義務教育の確かさと希望。
親が願い守り育ててきた「桜」は、確かにこの子が咲かせてくれている。
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