ゆきみちゃんのこと(その4)
ゆきみちゃん。
ぼくも、ゆきみちゃんが言うとおり、あの日のゆきみちゃんにとっては、「しかたない」っていうしかなかったのが、本当のことだったんだと、ようやく思えるようになりました。
ぼくはずっと、ゆきみちゃんのあの言葉を読むたび、あの言葉を思い出すたび、
「仕方なくないんだよ」「そんなことないんだよ」と、つぶやいていました。
「絶対に、校長先生が間違っているんだよ」
何度も何度も、そうつぶやいてきました。
でも、今日、改めて、ゆきみちゃんの作文や、「つうしん」を読んで、ゆきみちゃんが、「あきらめ」や「憎しみ」とか「悔しさ」だけで、あの言葉をつぶやいたのではなかったのかな…と、思うようになりました。
だって、『ゆきみつうしん』には、ゆきみちゃんの、しあわせや楽しみ、生きる喜びや、友達と一緒にいる幸せ、うれしいこと、かなしいこと、さびしかったこと、たのしかったこと、そんな1年生の子どものしあわせがあふれていました。
あれから、もう、8年が過ぎたのに、『ゆきみつうしん』には、ゆきみちゃんのしあわせが、息づいています。
ぼくはいま、そこから、たくさんの勇気をもらっています。
憎しみや悔しさの感情で、憎い敵と闘うのではなく、ゆきみちゃんの人生にあふれていた幸せを、これから小学校に入る子どもたちにも、いっぱい分けてあげられるように。
そのために、ぼくは、いまここにいて、かいとくんたちに出会ったのでした。
そして、ゆきみちゃんが「しかたないんだ」と言うしかなかった「学校」を、「昔のこと」にするために、がんばるからね。
そうして、もう誰も、6歳や7歳の子どもが、誰も、ただ友達と一緒にいることを一時間でもあきらめなくてすむように。
一時間でも分けられなくてすむように。
そういう学校を、当たり前の学校にできたら、そうしたら、またゆきみちゃんに報告するね。
「ゆきみちゃん、もうだれも、仕方ないなんて、言わなくていい学校になったよ」ってね。
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