Niiと「わたしのものがたり」(その5)
ガタンガタン、という音に驚いて振り向くと、
アパートの階段を落ちてくるNiiが見える。
あっと思うが、間に合わない…。
次の瞬間、前のめりに倒れこみながら、
Niiは手すりをつかんで、階段の真ん中あたりで止まった。
急いで抱きとめて、どこかケガがないか聞いた。
Niiはびっくりして、大泣きした。
しばらく抱っこしていると、少しずつ落ち着いた。
手のひらと手首のあたりに擦り傷があるが、血は出ていない。
特に痛いところはないようだった。
「よかったね。下までゴロゴロって落っこちなくて」
「うん、Nii、こうやってギュッってとまったの」
「すごいねー」
「うん…」
Niiはあらためて自分の手をひらいてつぶやいた。
「Nii、5本の手でよかった…。
グーの手だと、こうしてつかめないもん…。」
それから、しばらく、
Niiは自分の右手をじっとみつめていた。
「さっちゃんの魔法の手」を
思い出しているのだと分かった。
(11月11日)
階段を転がり落ちて、
一歩間違えば大けがをしそうな時に、
4歳の子どもが、そんなことを考えるのかと、
あの時、不思議な気がしたのを覚えています。
絵本のなかの「さっちゃん」に出会ったことで、
これから先、何かの場面で思いだしたり、
考えたりするんだろうな。
そうやって、親が考えもしない、
いろんな思いを積み重ねながら、
大人になっていくんだなと、
そんなことを思っていました。
最新の画像もっと見る
最近の「Niiといっしょ」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(457)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(28)
- 0点でも高校へ(395)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(161)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(133)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(85)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(352)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事