《旭川報告》⑩
《花の声を聞くように子どもの声を聞く》
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木々もかじられる「痛み」を感じ、自分を守るために防衛反応する。
人間の神経なら1000分の1秒で全身をめぐるが、木の電気信号は1分で1センチしか進まない。
さらに防衛物質を葉に蓄えるのに1時間かかる。
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それでも木々は、「1分で2センチになるように教育してあげよう」とは言わない。
目に見えない地中深く根を広げ、周りの木と接し重なり、つながる。
幼いころから仲間と手をつなぐことが、一番の守りにつながる。
成長と学習のための、子どもの基本的な生理学的要件は、「つながりの声」が聞こえる場所に居ること。
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『支援員さんも、ずっとついていると、小中学生のうちらも気をつかうんですよ』
『支援員さんがびっちりつくよりかは、つかないでいる時間が大切なのかな』
『知ろうとする機会につながるから』
どう感じるかは、どう知っているか、どんなふうに出会ったかとつながっているね。
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木と虫のやり取りは、痛みや危険だけじゃない。
花の香りも声。果実のなる木は、花の声でミツバチを誘い、蜜と引き換えに受粉を手伝ってもらう。
花の色も形も香りも、「つながりの安全領域」を伝える声だ。
でも、人間が栽培する植物は無口になる。空気や地中で会話する声を失ってしまうから。
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『私のいた学校にも、障害のある子がいたけど、その子は「なんで、ここにいるの?」という扱いを受けていて。私も「なんで?」と思う側だったので。そのころは。』
どう感じるかは、どう知っているか、どんな声を聞いてきたかとつながっている。
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木々の根のつながり。木と虫のやり取り。
花の声。つながりの声。
言葉のない子どもも、多動と言われる子も、一歩も動けない呼吸器ユーザーの子も、子どもの森のなかにいる子どもたちは、みんなにぎやかなつながりの中にいる。
「つながりに咲く花」が、ふつう学級でしか見えない訳を、森が教えてくれる。
一度も見たことがないのに、本当に見たかった花を、子どもたちが教えてくれる。