「あほリズム」
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恥ずかしながらブログに小説のようなものを認める者にとっては、少
なくとも芥川賞を受賞した作品には目を通すべきだと思って、過去には
西村賢太「苦役列車」や田中慎弥「共食い」を図書館のソファーに寝そ
べって「文芸春秋」をへたり読みしたこともあったが、と言うのも、彼
らはそれぞれ受賞会見でおもしろいコメントを残したからで、もしも私
の小説が奇跡的に受賞の栄誉に浴するようなことになれば、その時には
「風俗に行きたいので」「もらっといてやる」とコメントしようと決め
ていたのだが、それに釣られて興味が湧いてそれぞれの作品を読んでみ
たが会見のコメント以上に面白くなかった。それ以来受賞作を読む気に
もならなかったが、今回人気のお笑い芸人の作品が受賞したと聞いて、
さぞや受賞会見では機知に富んだジョークが語られると思いきや、世間
が注目しているそんな「おいしい」機会を与えられたお笑い芸人が、気
の利いたコメントも残さず、ただ恐縮しているだけの姿を見て、「こら
アカンは」と思ったのは多分私だけではないはずだ。笑いを取る絶好の
機会を見逃すお笑い芸人に、芸人の悲哀の機微を捉える観察眼が備わっ
ているとは到底思えない。
(おわり)