「野球なんか一人で出来るんや」
近頃はアスリートがインタビューでファンに対してやたらと「応援
よろしくお願いします」と応援を乞うが、ファンは何も選手たちを応
援するために金を払ってゲームを観に行くわけではない、日常では体
験できない感動を求めて観戦するのだ。選手たちはその期待に応える
ことによってファンから応援される。少なくとも勝敗を競うアスリー
トがまずファンに応援を求めるのは何か違和感がある。
かつてプロ野球の試合で阪神タイガースのエースだった江夏豊投手
は、ノ―ヒットノーラン(ヒットを打たれないこと)のまま延長戦に入
って、自分のバットでサヨナラホームランを打って記録を達成させた
ことがあった。試合後の記者とのインタビューで彼は「野球なんか一
人で出来るんや」と吐いた。決して「応援よろしく」とは言わなかっ
た。それでも阪神ファンは彼の偉業に魅せられて応援せずにはいられ
なかった。つまり、彼は自らのプレーで阪神ファンに感動を与え、「
彼がファンを応援した」のだ。
(それにしても観客が少ない)
阪神タイガース 江夏豊、延長11回ノーヒット・ノーラン達成 自らサヨナラホームラン
[参考:ウィキペディア《江夏豊>ノーヒットノーラン》より]
1973年8月30日の中日ドラゴンズ戦では、史上59回目となるノーヒ
ットノーランを達成。この試合で江夏は松本幸行と延長まで投げ合
い、11回裏に松本からの初球をライト側ラッキーゾーンに運び「自
らサヨナラホームランを放つ」(同年2号)という劇的な形で、日本
プロ野球史上初の延長戦ノーヒットノーランを達成した。2015年現
在、日本プロ野球で延長戦ノーヒットノーランを達成しているのは
江夏だけである。
この試合の後、江夏のコメントが「野球は一人でもできる」と歪
曲されて報道され物議を醸したが、自身はこれについて一切の否定
をせず、それが非難に拍車をかけるかたちになった。