「自然に回帰しよう!」
(3)
妻の実家は広島県の東部、岡山県境と接する神石高原町というと所で
、中国山地の山間にあり、人口よりも獣の方が多いに違いないと思えるほど
の自然豊かなところであった。私は妻と
一緒に車で何度か訪ねたが、冬のある日に大雪に見舞われてノーマルタイヤ
では帰れなくなって、仕方なく泊まらざるを得なかったことがあった。そ
の時以来、絶対冬には行かないぞと決めていた。つまり、それは娘の健康回
復のためには最適の地に違いなかった。ただ、私は東京で仕事があるので今
すぐに移住するわけにはいかなかった。妻と娘を妻の実家に送ったあと、神
石高原町の役場へ向かって、かねてより相談に乗ってくれた役場の人を訪ね
た。すでに住居は、妻の母が独りで暮らす実家に、それぞれが自分の部屋を
独占しても余るほどの昔風の大きな家屋だった。ただ問題は娘が自然以外は
何もないそんな山奥のくらしを気に入ってくれるかだが、妻が言うには娘は
野山を駆け巡って遊ぶことを決して嫌がらないと思うと言った。ただ、東京
育ちの自分にはいったい何が面白いのかさっぱりわからなかった。妻は、
「だって那美(なみ)はわたしの子だから」
確かに那美の性格は妻の男勝りの性格とよく似ていた。ただ、それじゃあ俺
の性格はいったいどこへいったのかとちょっとイジケタ
(つづく)
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