ハンク・アーロンさんの死

令和３年１月２４日（日）

スーパー・ヒーローの死

米大リーグ歴代二位の通算７５５本のホームランを

放った「ハンク・アーロン」さんが亡くなられた。

８６歳、　死因は明らかにされていない。

アフリカ系米国人で、人種差別を受け乍ら大リーグで

活躍された。

１９７４年には、野球の神様と言われたベーブ・ルース

の通算７１４本のホームラン記録を塗り替えた。

１９３４年、アメリカ南部アラバマ州モービルで生まれ、

黒人リーグを経て、１９５４年にアトランタ・ブレーブス

へ入団。１９５４年には本塁打、打点王のタイトル獲得し

最優秀選手となった。

選手生活生涯で、本塁打王を４度、打点王を４度、首位打

者を２度獲得。大リーグ通算（２３年間）　２２９７打点

（歴代１位）、３７７１安打（歴代３位）、通算本塁打は

２００７年にバリー・ボンズに抜かれる（７６２号）迄は

全米トップ（ボンズは薬物疑惑があった）である。

大リーグオールスター戦に２１年連続出場、ゴールドグラブ

賞を３度受賞した。

彼の生れたアラバマ州は特に人種差別が酷い土地であった。

ベーブルースの記録に後1本と迫り、シーズンを終えた１９

７３年から７４年にかけて、白人主義者等の脅迫にあい、

殺害の予告もあった１９７４年の開幕戦で、アーロンはあっ

さり７１５号を放った（４１歳の時）

１９７４年１１月に日米野球で来日し、巨人の王貞治選手と

ホームラン競争を行い話題となった。（以来、生涯の友、、）

１９７７年、王が７５６号の世界記録を放つと、米メデイア

は、米球場の大きさの違いを挙げ、その記録を認めようとしな

かった。然し、アーロンは「王を心から祝福する」と讃えた。

引退後、「ブレーブス」「ブリュワーズ」は背番号１４を永久

欠番とした。

１９９０年、アーロンは王と伴に「世界少年野球大会」を開催

その後の生涯を少年野球に貢献、日本の「旭日小綬賞」を受賞。

少年野球大会

 

バイデン米大統領はアーロン氏の死去に際し、「人種差別が色

濃く残る時代、黒人選手として活躍、正義のために恐れず誇り

を以って立ち上がる模範を示した。更に彼は記録を追いかける

だけでなく、我々が良い人間になる手助けをした。彼が白人

ファンの心を掴んだのは人格者だったからである。　国として

アーロン氏が示してくれたより良い姿を目指す」と述べた。

 

今朝（１月２４日）の中日新聞コラム「中日春秋」にアーロン

さんの記述があったので紹介する。

大空に飛行機を見つけた少年は父親にこう言った「大人になっ

たらパイロットになる」、父親は答えた「黒人はパイロットに

なれない」、「じゃあ野球選手になる」、「黒人は野球選手に

なれない」。父親の言葉にも少年は野球選手を目指し、やがて

少年は神様ベーブルースを超える選手となった。

通算７５５本、　ブレーブスの強打者ハンク・アーロンさんが

亡くなった。８６歳。　黒人リーグ時代は、バットを逆に握っ

ていたそうだ。右打者の握りは、右手が上にくるが、この人は

左が上。それでも打てるほど手首が強かった。

「ルースの記録を追いかける事は、最高の喜びとなる筈だった

が、最悪だった」と書いていた。白人のルースの記録を黒人が

塗り替えるのは許せない。そう考える人が居た。「引退しろ」

「キング牧師は早死にした」、届いた９０万通の手紙。大半が

脅迫や嫌がらせだった。その手紙を捨てなかった。

それを見て記録更新の励みとした。　自身の経験からだろう。

王貞治さんがアーロンさんの通算本塁打記録を抜いた時に、

一切ケチを付けず、称賛した。　アーロンが認めた。

当時の日本の少年には、どれほど嬉しかったことか。

練習の人だった。　差別や憎悪にも心を乱さず努力する。

なるほど、偉大な野球選手であると同時に人々の水先案内人

（パイロット）になっていた。

（中日新聞朝刊コラム：中日春秋より引用）

１９７４年に日米野球で来日し、本塁打競争をして以降、

アーロンと王は互いに認め合う仲となり、王が記録を塗り替

えた時にアーロンは王に「フラミンゴの剥製」を贈った。

（王の一本足打法がフラミンゴ打法と言われていたので）

アーロンさんの訃報に王は、「彼はジェントルマンだった。

一緒に世界に野球を広めようとした。子供達の野球の普及に

貢献してくれた」と、感謝を述べた。

また一人、偉大なアスリートが逝った。私達世代のスーパー

ヒーローだった。

 

 

今日の１句

佳き人に別れ難しと冬の雨　　　　ヤギ爺