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英文ケースレポートの書き方 文献リスト(References)をつくる

2016-05-30 | 勉強会

 

英文ケースレポートの書き方

 

徳田安春

 

 第10回 文献リスト(References) をつくる

 

~引用論文はできるだけ一次文献としよう~

 

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今回の「覚えておくとトクダネ」ルール

 

Referencesの3つのポイント

ルール①:引用論文はできるだけ一次文献とする

ルール②:文献の列挙方式はほとんどバンクーバー方式

ルール③: Referencesでの各文献リストのフォーマットは投稿規定に従う。

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☑ どういうものを引用するか

 

では、今回はReferencesを書いてみよう。ポイントは「引用論文はできるだけ一次文献としよう」ということ。

 

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覚えておくと「覚えておくとトクダネ」ルール

ルール①:引用論文はできるだけ一次文献とする

UpToDateも、Harrisonも、Cecilも、引用しない。

できるだけ一次情報原(原著論文)をつきとめること。

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そう。教科書やネットの記事は原則引用禁。UpToDateも、Harrisonも、Cecilも、である。もともと教科書は何かから引用してまとめたものだから引用元になるのはおかしいというわけ。そういう意味では、Review Article(総説論文)も原則、引用対象にはならないのだ。

 

もちろん、教科書から孫引きして、一次文献(原著論文original article)をつきとめて、それを引用するのはよい。序章でも述べたが、過去の症例報告もきちんとした原著論文なので、一次文献として引用してよい。

 

Referencesでは、引用される箇所との本文中の場所が重要。本文中の引用箇所は、原則としてintroductionとDiscussionとする。つまり、Case Descriptionは文献を引用して書くものではないからだ。

 

☑ どういうふうに引用するか

 

Referencesでの文献の列挙方式には主として、バンクーバー方式とハーバード方式がある。バンクーバー方式では引用順の番号を付け、最後の文献リストには引用順に列挙する。 ハーバード方式では、文献と本文を主に著者名で紐付け、参考文献の列挙を著者名順(ABC順)に行う。一般に、自然科学領域のジャーナルではバンクーバー方式が多く、社会科学領域のジャーナルではハーバード方式が多い。

 

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覚えておくと「覚えておくとトクダネ」ルール

ルール②:文献の列挙方式はほとんどバンクーバー方式

引用順の番号を付け、最後の文献リストには引用順に列挙する。

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本文中での引用順の番号を付けるのにはジャーナルによって決まりがある。文の最後のピリオド(.)の前に()で挿入する場合や、後に挿入する場合がある。カッコは、さきに挙げた()以外に、[]や<>の場合もあるので決まりごとに従う。また、上付きフォントで小さく示す場合もある。これも文の最後のピリオド(.)の前に()で挿入する場合や、後に挿入する場合がある。これらの本文の例を下記に示す。

 

Exports of raw or chilled salmons from Japan・・・have remarkably increased in conjunction with great advances in international transport systems (10).

 

Exports of raw or chilled salmons from Japan・・・systems. (10)

 

Exports of raw or chilled salmons from Japan・・・systems10.

 

Exports of raw or chilled salmons from Japan・・・systems. 10

 

文が長く、コンマで分かれるときには、引用した文節の最後のコンマの前後に挿入する。

 

Japanand European countries have increased the prevalence of D nihonkaiense (7, 9, 12), that reflects global increases in salmon consumption and changes in fish-eating habits.

 

Japan and European countries have increased the prevalence of D nihonkaiense, (7, 9, 12) that ・・・.

 

Japan and European countries have increased the prevalence of D nihonkaiense7, 9, 12, that ・・・.

 

Japan and European countries have increased the prevalence of D nihonkaiense,7, 9, 12 that ・・・.

 

☑ どういうふうに引用リストを作成するか

 

Referencesでの各文献における、著者名の記載限度、発行日付記載順番などは、ジャーナルによってフォーマットが違う。これはもう投稿規定を確認するしかない。

 

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覚えておくと「覚えておくとトクダネ」ルール

ルール③:Referencesでの各文献リストのフォーマットは投稿規定に従う。

これは決まりごと。いやでも従うしかないのだ。

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例えばBMJ Case Reportsでは下記のようになっている。

 

Shimizu H, Kawakatsu H, Shimizu T, et al. Diphyllobothriasis nihonkaiense: possibly acquired inSwitzerlandfrom imported Pacific salmon. Intern Med 2008;47:1359–62

 

これをみると、

著者名は3名まで記載。そのあとは、et al.として「その他」とされている。

Intern Medのように、雑誌名も略語で記載。正式名はInternal Medicineという雑誌名となっている。

2008;47:1359–62のように、年;巻:頁(初―終)、と記載される。

となっている。こういうのはジャーナルがそれぞれ決めたフォーマットなので、素直に従うようにする。論文によっては数十人も著者がいるものもあるので、著者名記載人数に制限があるのはやむをえまい。また、ジャーナル名も長いのがけっこうある。誌名の略称は、米国国立医学図書館(NLM)の方式がよく使われているJAMAのようにコンパクトに頭文字で表されるものもあるが、そうでなければIntern Medというように、単語の途中で切られるのもあるのだ。

 

もし、プリント版がまだ未出版で、電子版のみの文献を引用する際には、[Epub ahead of print]という表現を最後に挿入すればよい。例として1つ。

 

Sakihama T, Honda H, Saint S, et al. Hand Hygiene Adherence Among Health Care

Workers at Japanese Hospitals: A Multicenter Observational Study inJapan. J Patient Safety. 2014 Apr 8. [Epub ahead of print]

 

和文の論文を引用するときには、(in Japanese)という表現を最後に付ける。

 

では、論文をあるジャーナルに投稿したがリジェクトされたとき、別のジャーナルに投稿しなければならない。その際に、文献リストの表示フォーマットが異なっていると、フォーマットの作成作業を再度おこなう必要が出てくる。このときに、便利なのが文献データベースソフト(Endnoteなど)である。これはたいへん便利なソフトであり、有償であるが購入しておく価値は十分あると考える。もしあなたがScientific Communityの仲間に入りたいのであればのことだが。

 

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コラム

症例報告(case report)の価値

全ての病気はまず初めての報告という過程を経る。川崎病しかり、高安病しかり・・・。偉大な医学者が名前を永遠に残すのは、総説論文ではなく、原著論文でもない。そう、症例報告なのだ。

最近は、院内外で症例検討会が盛んにおこなわれている。それはそれで参加した当事者には勉強になるし、臨場感を味わった発表者に満足感は得られる。だがしかし、である。その貴重な症例を広く世界の医学者・臨床家に広くシェアできるように症例報告(case report)を書いて発表するというのは、地味な作業のようであるが、学問的にはたいへん貴重な貢献である。

オスラー博士も述べたように、臨床家の観察能力が臨床医学の発展の原点である。これを言い換えると、症例報告が臨床医学の原点である、となる。さあ、読者のみなさんも症例報告が書きたくなってうずうずしていると思う。そんなモチベーションを引き出すことができたならば、このシリーズを担当した者としてこれ以上の喜びはない。

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以上、今回でケースレポートの書き方は終了した。連載を応援してくれた皆様に感謝いたします!

 

文献:

Sakihama T, Honda H, Saint S, Fowler KE,ShimizuT, Kamiya T, Sato Y, Arakawa

S, Lee JJ, Iwata K, Mihashi M, Tokuda Y. Hand Hygiene Adherence Among Health Care

Workers at Japanese Hospitals: A Multicenter Observational Study inJapan. J

Patient Saf. 2014 Apr 8. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 24717527.

 

 

症候別“見逃してはならない疾患
徳田安春
医学書院

 

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