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医療面接

2016-06-02 | 勉強会

 

1          医療面接

 

(病歴聴取を含む医師と患者さんとのコミュニケーション場面)

なぜ医療面接は大切か

臨床医の5大要件

臨床能力=情報収集能力+知識+技術+判断力+態度

 

情報収集能力(患者さんの抱えている問題を知ること)  

(1)医療面接(2)身体診察(3)諸検査

臨床の場では、診断の確定:(1)十(2)=8割位、(1)のみでは7割

(もちろん、的確な医療面接や診察ができていることが条件です)

 

医療面接の進め方

1)環境設定

2)医療面接の開始:あいさつ、患者さんの確認、自己紹介。

3)医療面接の中間

4)医療面接の終わり:言い残したことは?患者さんの解釈モデルは?

 

主訴chief complaint

今日はどういう理由で来られましたか?という質問に対する患者の最初の一言。

できるだけ患者さんの語った言葉で書き留めておく。

 

現病歴history of present Illness

医療面接で得られる情報の中で最も大切な部分。

経時的に、詳細かつ整然とまとめる。

 

#LQQTSFA:症状の特徴をとらえるための焦点をあてた質問の7項目。

L(1ocation):症状のあるからだの部分

Q(quality):症状の性状

Q(quantity):症状の程度

T(timing):発症時期、持続時間、頻度など

S(setting):どのような状況で

F(factor):症状を軽快または増悪させる因子

A(accompanying symptoms):随伴症状

 受療行動を明らかにする。他の医療機関の受診や検査内容は? 投薬の内容。

 

患者プロフィール patient profile

出生地、生育場所、職業、宗教、結婚歴、一日の典型的なすごしかた等。

 

既往歴past medical history(PMH)

★病気、外傷、手術について

★年代順に

★治療を受けた医療機関名

★病名、症状、検査、治療、経過など

 

家族歴family history

疾患の発生に関する遺伝的要因ないし環境的要因を明らかにする。

 

系統的レビュー review of systems(ROS)

ROSは各系統の重要な症状についての質問をチェックリスト形式で行い、患者さんの全身状態におけるもののなかで、現病歴や既往歴の中で見逃されているかもしれない徴候を各器官、系統別に整理したリストである。

 

医療面接の4要素

たずねる

聴く

観察する

こたえる

 

たずねる

1)neutral question:中立型の質問

「中立的質間」とは、患者さんの名前や生年月目・職業・住所などを尋ねる質問を言う。通常の診療の場では、カルテに名前や生年月目・住所はすでに記載されているため、名前を尋ねるのはカルテと患者さんを照合する意味合いが強い。名前を尋ね、年齢・性を記載して、さあ医療面接開始!

2)open-ended question:開放型の質問

「開かれた質問」とは、「どうされましたか」、「今日はどういうことでいらっしゃったのですか」、「どのようなことで来院されたのでしょう」など、患者さんが自由に症状や来院理由について話せるような質問をいう、特に、初診患者さんに対面して名前を確認した後、まず最初の質問は、この形式のものを用いるべきである。患者さんに対面したら、まず数分間黙って話しを聴くことである。

3)focused question : 焦点をあてた質問

「焦点をあてた質問」とは、特定のテーマに焦点を絞った質問であり、閉じられた質問よりは自由に、しかし開かれた質問よりは自由度の低い質問である。最も臨床で用いられる頻度が高い。例えば、「最近、頭痛がして困っているんです」に対して、「どのような頭痛か、もう少し説明してもらえますか?」などと聞く。

4)closed question : 閉鎖型の質問

「閉じられた質問」とは、患者が「はい」または「いいえ」で答えるような間を言う。パターナリスティクな関係に陥りやすいため、多用すると危険である。

5)multiple choice question : 多項型の質問

質問にたいする回答を、あらかじめ医師が限定して聞く質問方法である。

誘導的な質問方法であり、なるべく避けた方がよい。

また、以下の質問形式も避けた方がよい。

double question:一度に複数の質問をすること。

vague question:主観的なあいまいさの含む質問。

unequal question:社会的な価値判断にさわるような内容をふくむもの。

 

聴く

聴き方のコツ:患者の訴えをそのまま受け取る。

患者に正直な話をさせるように工夫する(態度、言葉)

患者さんの話しの腰を折らない。

 

こたえる

(1)支持的

促し : facilitation

「促し」とは、滑らかに言葉が続かない患者に話を続けるよう、促す言葉や表情を言う。短い返答や表情で促すことで、患者は安心して話しを続けることができる。「そして?」「それから?」

繰り返し : repeat

「繰り返し」とは、患者さんが話した内容を医師が繰り返し確認することを言う。タイミングよく便えば、有用なテクニック。

(2)共感的

共感 : sympathy or empathy

「共感」とは、痛みや不安に苦しんでいる患者さんの感情を医師の側で察知し、患者さんが話す前に、そのような感情を理解している旨を言葉で伝えることをいう。相手の感情について理解していることを直接伝えることは、相手の心をなぐさめるうえで絶大な力をもつ。

妥当化 : legitimization

「妥当化」とは、患者自身、妥当かどうか自信が持てないような気持ちや行動について、医師が当然であると認め、受け入れる旨を言葉で伝えること。医師が保証することで、患者の無用な不安感を予防できる。

(3)解釈的

患者さんの側で多言を要する事実や症状の説明を、簡単な言葉やシンブルな医学的な用語に置き換えることは、患者さんにとっても医師にとっても有用なことが多い。しかし、解釈のしすぎはときに診断のあやまりの原因となる。例えば、患者さんが「おなかがチクチクした」というのをすぐさま腹痛と置き換えたり、「ふらふらした」と言えばめまい、「便が黒っぽかった」と言えばタール便など、最初から決め込んでしまうことで、診断プロセスの入り口のところで大きなあやまりをおかしてしまうことがある。医学用語に置き換えることは、医師にとってはその後の鑑別診断を考えるうえでは重要な手順ということになるが、患者さんにとっては必ずしも訴えようとしている症状や兆候が正確には反映されない結果になってしまうことがある。つまり、解釈をあまりに急ぐことで、重要な情報を切り落としてしまう可能性があり注意を要する。        

(4)要約recapitulation

患者さんの話がまわりくどかったり、まとまりを欠く時に、それまでの話の内容を理解しまとめて、患者さんの確認をとる方法を「要約」と冒う。医師と患者さん双方の理解のずれを防ぐ。

(5)直面化 confrontation

「直面化」とは、患者自身がはっきりとは気づいていない感情、またはあえて口に出さなかった心の動きを、医師の側から鋭く言い当てるように指摘することをいう。患者さんのこころを傷つける可能性があるため、熟慮のうえのみ用いる。「あなたはほんとうはその仕事にいきたくないのではないですか」など。

(6)沈黙 si1ence

患者さんと対面していると、慣れない間は数秒の沈黙でさえも長く感じられるものである。しかしときとして、沈黙の時間を共有することが重要な情報を引き出すきっかけとなりうることがある。

 

観察する

1)身体徴候の観察。

2)非言語的コミュニケーションの観察:心理状態

  body language : ため息、うつむき、怒り、抑うつ、依存的等。

解釈モデル:患者さんが自分の今の病状をどのように解釈し、理解し、そして

本人なりに、どういう見通しを思い描いているのかということ。

医師と患者の間にはこの点においてしばしば乖離がある。

 

 解釈モデルを引き出すための質問

★あなたはどういうことを一番心配していますか?

★自分では何か原因のようなものに思いあたりますか?

★なにかしてほしい検査や治療のことを考えて来られましたか。

★こういう状態になって、生活のどういうことが一番変わりましたか?

★こういう状態になって何が一番困りましたか?

 

参考文献

1)メデイカル医療面接マニュアル。インターメデイカ。

2)外来でのコミュニケーション技法。飯島克巳著。日本医事新報社。

3) The Medical Interview. The three function approach. Steven A. Cohen-Cole. Mosby Year Book. 1991.

4) The Medical Interview. C Knight Aldrich.The Parthenon publishing Group.1993.

5) Sapira's Art and Science of Bedside Diagnosis. 2nd ed. Jane M.Orient. Lippincott Williams & Wilkins.

 

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