呼吸器疾患を疑うときのバイタルサイン
バイタルサインには、血圧、心拍、呼吸、体温、意識レベル、静脈圧、パルスオキシメーター経皮的毛細管酸素飽和度(SpO2)、尿量がある。
一般的にSpO2はSaO2の代用として利用できるため、室内気呼吸下でSpO2が90%のときはPaO2が60 mmHgを示唆する。
それゆえ、SpO2が90%未満のときは低酸素血症を意味する。
しかしながら、SpO2を測定したからといって、呼吸数のカウントを省略してはならない。
呼吸障害の早期サインは「呼吸数のわずかな変化のみ」のことがある。
また、SpO2の異常値は呼吸数と合わせて評価すべきである。
同じPaO2が 55 mmHgの呼吸不全でも、呼吸数毎分40回では、急性呼吸不全を意味し、呼吸数毎分18回では、慢性呼吸不全を示唆する。
CO2ナルコーシスでは、アステリキシス(陰性ミオクローヌス)の有無を評価する。
両手を背屈位で前方へ差し出してもらい、両手首の動きを観察し、振動数の小さいミオクローヌスがあるかをみる。
アステリキシスがあれば、PaCO2がベースラインより15 mmHg以上上昇していることを示唆する。
静脈圧の評価では、内頸静脈、外頸静脈、または手背静脈を用いる。
右心房を基準(ゼロ点)としてその高さ(静脈怒張の頂点)を測定する(中心静脈圧)。
胸骨角からの垂直距離で測定してもよい(頸静脈圧)。
胸骨角から右心房までの距離は体位の角度にかかわらず約5センチである(体格による差はある)。
正常値は、中心静脈圧で約5~10 cmH2O(頸静脈圧で約0~5cm)である。
心不全では上昇する。
呼吸器疾患では右心負荷(肺性心)に伴う三尖弁閉鎖不全を認めることがよくある。
その際には、頸静脈波形におけるv波の増高がある。
静脈圧上昇も伴えば、右耳たぶ拍動earlobe pulsationとして確認することもできる。
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