今回のお題は、「麦屋町昼下がり」である。藤沢周平全集 第五巻 に掲載されている短編の一つである。この第五巻は結構読み応えのある小生の好きな短編が多かったのであるが、中でも一番気に入ったのが、この「麦屋町昼下がり」であった。
主人公は、美男でも良家の子弟でもない、貧しい下士の息子に過ぎないが、それなりに剣の腕はトップではないにしろ秀でている方である。この物語は、藩一番のダントツトップの剣士の父をよんどころない理由で斬殺した事から始まり、そのダントツトップの剣士と斬り合う場面までを描いている。
到底勝ち目のないと悟っている主人公が、藁にもすがる思いで怪しげな流儀を学ぶハメになる。すなわち、周平氏得意の秘剣が登場するのだが、それは怪しげな師匠によるとても怪しげな秘剣であることに面白さがある。
最後にちらっと主人公の嫁さん候補が登場するのだが、それは周平氏らしく人情をくすぐる登場の仕方でとても気に入ったのだった。
願わくば、どこかのTV局でドラマを一本つくってくれないものかと思うのだが、いかがであろうか。面白い作品になりそうな気がする・・・。