棄恩入無為
そむかずはいづれの世にかめぐりあひて思ひけりとも人に知られん
半紙
【題出典】『諸経要集』四
【題意】 恩を棄てて無為に入る
恩を捨てて無為の世界に入る(これが真実の報恩である。)
【歌の通釈】
出家しなければ、いったいどの世でめぐり会って、父母を思っていたということも、父母に知られることができるだろうか。
【考】
俗世を捨て仏道に入ることは、恩愛を断ち恩を捨て父母と別れることであるが、出家して三界の輪廻から脱することこそ、本当に恩に報いることであり、またその思いを父母に伝えることができると言った歌。
【注】いづれの世にかめぐりあひて=三界中の輪廻を念頭に置いた表現。出家しなければいつまでも輪廻転生し、後の世で会うことができないということ。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)