真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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クリントン大統領に対するサパティスタ民族解放軍の訴え

2022年09月20日 | 国際・政治

 アメリカが、メキシコにおける莫大な権益を保持し、その権益を守り抜くために、民族主義的なマデロ政権の転覆に手を貸し、ウエルタ独裁政権を誕生させたことは、すでに「メキシコ革命物語」渡辺建夫(朝日選書285:朝日新聞社)で確認しました。
 今回は、そのアメリカのメキシコ政策被害者とも言えるチアパス州先住民の組織、サパティスタ民族解放軍の総司令部が、アメリカ大統領、ビル・クリントンに宛てた文書を「もう、たくさんだ! メキシコ先住民族蜂起の記録」サパティスタ民族解放軍:太田昌国・小林致広編訳(現代企画社)から、抜萃しました。

 その内容は、アメリカという国の対外政策や外交政策が、いかなるものであるかを示していると同時に、アメリカが自らの政策を正当化するために語る言葉が、国際社会を欺瞞するプロパガンダであることも示しているように思います。

 だから、ウクライナ戦争や台湾問題に関するアメリカの主張(プロパガンダ)の背後にある実際の目的を見逃してはならないと思います。
 先日、 バイデン米大統領が、CBSの番組のインタビューで、中国が台湾に侵攻した場合、米軍は台湾を防衛すると言明したことが伝えられました。
 でも、この発言は矛盾に満ちています。だから、ホワイトハウスの報道官は、バイデン大統領の発言に対するコメントを求められ、”台湾に関する米国の政策に変更はない”などとと言わなければならないのだと思います。もし、本当に”台湾に関する米国の政策に変更はない”のであれば、バイデン大統領の発言に問題があることになり、矛盾しているのです。
「世界には一つの中国しかなく、台湾は中国の一部であり、中華人民共和国政府は中国の唯一の合法的な政府だ」という台湾に関する米中共同声明(上海コミュニケ)の内容に変更がなければ、台湾にに対する大量の武器の売却や、要人の台湾訪問は、どう考えても中国に対する内政の干渉であり、挑発であるといってもいいと思います。

 したがって、こうした苦しい言い訳をしながら、台湾にかかわるアメリカには、急成長し、国際社会で影響力を拡大しつつある中国を、台湾問題で孤立させ、弱体化させようという実際の目的が隠されているように思います。
 アメリカが、他国の紛争を話し合いで解決に導いた例があるでしょうか。アメリカが、他国の紛争をアメリカ自身の覇権や利益の維持・拡大のために利用し、クーデターによる独裁政権誕生に関わったり、独裁に抵抗する人民を武力的に抑圧する政権を支援したり、時には直接武力介入したりしてきたことは否定できないと思います。私は、そうした過去の事実から、アメリカは、台湾を第二のウクライナにしようとしていように思わざるを得ないのです。
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資料10 1994.1.13

                     ビル・クリントン大統領へ

1994年1月13日
アメリカ合衆国大統領ビル・クリントン氏宛
アメリカ合衆国議会宛
北アメリカ合衆国人民宛
                   ★ 
 われわれが本状を認(シタタ)めるのは、メヒコ(メキシコ)連邦政府が北アメリカ合衆国人民および政府から受け取った経済的・軍事的な援助を、チアパス州の先住民を虐殺するために使っていることを告発するためです。
 北アメリカ合衆国議会ならびに人民は、この軍事的・経済的援助を、麻薬商人と戦うために提供したのか、それともメヒコ南東部で先住民を虐殺するために提供したのか、われわれは問うものです。軍隊、航空機、ヘリコプター、レーダー、通信機器、武器、その他の軍事物資は、現在、麻薬商人や麻薬マフィアを追跡するためにではなく、わが国の南東部で、メヒコ人民とチアパス先住民の正義の戦いを弾圧するために、また、罪も無い男、女、子どもたちを殺害するために使われているのです。
 われわれは、外国の政府、個人、組織などからはいっさいの援助を受けていません。麻薬商人との関係もないし、内外のテロリズムともなんの関係もありません。われわれが組織できているのは、われわれが無一物であり、多くの問題を抱えているからです。長年に及ぶペテンと死はもうたくさんなのです。尊厳ある生のために戦うことは、われわれの権利です。われわれは常に民間人を尊重し、戦争に関する国際法に基づいて行動しています。
 北アメリカ人民および政府は、メヒコ連邦政府に対して援助を供与することによって、自らの手を先住民の血で汚しているのです。われわれが求めているのは、世界中の全ての人民が求めているものと同じく、真の自由と民主主義です。この希望のためなら、われわれは自らの生命を賭する用意さえできています。あなたがたがメヒコ政府の共犯者となって、その手をわれわれの血で汚すことのないよう希望するものです。
                                                       メヒコ南東部の山中より
                                                       先住民革命地下委員会=
                                                   サパティスタ民族解放軍総司令部
                                                                メヒコ、1994年1月
            出典──A  Bill Clinton,La Jornada, 18 de enero de1994         
                                                                  【太田泉生=訳】

 
 

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