岸田総理は、今回の広島サミットに関し、
”G7として核兵器のない世界への決意を改めて確認するとともに、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序を守り抜く、こうしたG7の意志を強く世界に示したいと思っています”
と言ったのですが、私は、人を欺くことは、やめてほしいと思います。
人殺し(ウクライネ戦争)を止めようとせず、ウクライネ軍を支援しながら、核兵器のない世界が、どうしてつくれるのですか? と問わなければなりません。
また、法や道義・道徳を無視して、戦争を繰り返し、アフリカや中南米、中東やアジアの国々を相手に、巧みに搾取や収奪をくり返してきたのは、G7をはじめとする西側諸国でしょう、と言わなければなりません。
だから、その証拠ともいえる、日韓の歴史をふり返りたいと思います。
アジア・太平洋戦争は日本の無条件降伏によって終わりました。そして日本は、”日本國ノ主權ハ本州、北海道、九州及四國竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ”というカイロ宣言で定められていた国土に「局限」され、GHQの占領下に置かれることになりました。
そのGHQの占領に関しては、1945年7月のポツダム宣言によって、下記のように、占領の意図や期間が定められていました。
”六 吾等ハ無責任ナル軍國主義ガ世界ヨリ驅逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序ガ生ジ得ザルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本國國民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ擧ニ出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルベカラズ
七 右ノ如キ新秩序ガ建設セラレ且日本國ノ戰爭遂行能力ガ破砕セラレタルコトノ確證アルニ至ル迄ハ聯合國ノ指定スベキ日本國領域内ノ諸地點ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スル為占領セラルベシ”
十二 前記諸目的ガ達成セラレ且日本國國民ノ自由ニ表明セル意思ニ從ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合國ノ占領軍ハ直ニ日本國ヨリ撤収セラルベシ”
だから、基本的には、1951年9月に締結されたサンフランシスコ講和条約の
”(a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。”
に基づいて、米軍は完全に撤退すべきであったと思います。
でも、米軍は撤退しませんでした。そこに、アメリカの対外施策や外交政策における欺瞞があると思います。
ふり返れば、日本降伏直前のソ連軍の急速な南下にあわてたアメリカは、陸軍省、海軍省、国務省の三省調整委員会で、38度線による朝鮮の分断を決め、関係国に通告しました。
そして、その分断を、「一般命令第一号」に巧みに盛り込みました。おまけにそれは、アメリカ軍が起草したにもかかわらず、大日本帝国の大本営が、日本軍に対して発令するスタイルをとって現実のものとされたのです。だから、朝鮮分断という重大問題が、いつの間にか進行することになりました。分断が、何時、どこで、誰によって決められたのか、よくわからない状態で、現実的に進んでしまうことになったのです。
そして、その分断を固定化するために、アメリカは南朝鮮を軍政下に置き、李承晩を担ぎ出して、南朝鮮単独政府を樹立させました。大陸に対する足がかりとしての永続的な米軍韓国駐留は、そうやって実現していったのです。
それは、南北朝鮮の統一と独立を求める多くの朝鮮の人たちの声を無視したものであったため、多くの犠牲者を出すことになり、朝鮮戦争に発展する原因ともなったと思います。
日本に対するアメリカの政策も、同じように、ポツダム宣言やサンフランシスコ講和条約に反するものであったと思います。
GHQの日本占領目的は、基本的には、日本の非軍事化であり、民主化であったと思いますが、アメリカは、軍を日本に駐留させるために、司法介入によって伊達判決を覆しました。さらに、自衛隊に発展する警察予備隊も編制させました。また、レッドパージや公職追放解除は、ポツダム宣言に反するとともに、日本の民主化に逆行するものであったことは明らかだろうと思います。
だから、GHQの占領目的である日本の非軍事化や民主化は、結局、きちんと実現されず、韓国と同じように、アメリカの強い影響下に置かれ、属国のような国になってしまったと思います。
アメリカの対外政策や外交政策は、いつも表向きの理念や課題とは裏腹に、アメリカの反共主義や利己的な利害によって進められているといってもよい、と私は思います。
今回は、「日本の黒い霧」松本清張(文春文庫)から、「追放とレッド・パージ」の一部を抜萃しました。アメリカという国の対外政策や外交政策がどういうものであるか、その一端を知ることができると思います。
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追放とレッド・パージ
1
日本の政治、経済界の「追放」は、アメリカが日本を降伏させた当時からの方針であった。1945年8月29日に、アメリカ政府はマッカーサーに対して「降伏後における合衆国の初期対日政策」という文書を伝達し、さらに同年11月3日付で「日本の占領並びに管理のための連合国最高司令官に対する降伏後初期の基本的指令」と題する文書を発した。GHQは、この二つの文書に基づいて占領政策を実行に移すことになった。
この11月3日の米政府の指令は、追放についてGHQに広い権限を与えている。
「日本の侵略計画を作成し実行する上で、行政、財政、経済その他の重要な問題に積極的な役割を果たしたすべての人々、及び大政翼賛会、日本政治会とその機関、並びにこれを引き継いだ団体の重要人物はすべて拘置し、今後の措置を待つべきこと。また高い責任地位から誰を追放するかを決定する最終責任を与えられる。さらに1937年(昭和12年)以来、金融、商工業、農業部門で高い責任の地位に在った人々も軍国主義的ナショナリズムや侵略主義の主唱者と見なしてよろしい」
この指令はトップ・シークレット(極秘)であって、総司令部に接触していた当時の日本側首脳も容易に窺知(キチ)することができなかったのだった。
この方針に基いて、未曽有の追放が政界、官界、思想界に荒れ狂ったのである。
もっとも、この追放を実際上実行に移すに当っては、GHQ全体が一つの意見に必ずしも纏まったのではない。G2の意見とGSの意見とに喰違いが早くも見られたのである。
このことについてマーク・ゲインは書いている。
「総司令部の内部には劇的な分裂が発展し、全政策立案者を二つの対立陣営に分けてしまった、とこの批評家達は言う。一つの陣営(GS)は、日本の根本的改造の必要を確信する者で、他の陣営(G2)は、保守的な日本こそ来るべきロシアとの闘争における最上の味方という理由で基本的な改革に反対する。日本に必要なのは、ちょっとその顔を上向きにさせてやるだけだ、と言うのである。この案に反対の人たちは、次のような論点の数々を挙げた。
①徹底的な追放は、日本を混乱に陥し入れ、革命さえ招く惧れがある。 ②もし、追放を必要とするにしても、逐次に行うべきで、その間、息をつく暇を国民に与えなければならない。 ③追放は最高指導者に限られるべきである。命令への服従は規律の定めるところであって、部下は服従以外には途がなかったからである。
軍諜報部の代表を先鋒に、軍関係の四局は悉く結束して追放に反対した。国務省関係の或る者はこれに味方した。追放を支持したのは主として民政局で、総司令部の他の部局もばらばらながらこれを支持した(『ニッポン日記』)
マーク・ゲインがこれを書いたのは1945年(昭和20年)12月20日で、もとより、ソ連はまだアメリカの「戦友」だった時である。が、早くもこの見方はのちのGHQの占領政策転換を予見して興味深い。
追放は、マッカーサーにアメリカ統合参謀本部が与えた指令のように、「日本国民を欺瞞し、これをして世界征服の虚に出るという過誤を犯さしめた者の権力と勢力を永久に除去」することを目的としたもので、対象はこの限りに置かれていたのである。
ところが、米国防省(ペンタゴン)がマッカーサーに与えた巨大な武器は、後年になって、最初の目的とは裏腹な民主陣営にも振るわれたのである。これは世界情勢の変化、つまりはソ連との対立が激化して、アメリカ自身の安全のために、GHQの政策が大きな変化を遂げたからにすぎない。別な言い方をすれば、「弾圧を荒っぽい外科手術と信じている」ウィロビーが「棍棒の使用よりも小規模の改革のほうがより多くの味方を獲得しうると考えている」ホイットニーに勝ったのである。
占領は、昔のように強い力をもって対手国を制圧するのではなく、徐々に自国にどうかさせるという方策がアメリカの考え方であった。このため、「同化」に邪魔になりそうな旧勢力の駆逐が追放の一つの狙いであった。
追放の意義は、それが、「懲罰」か、或は「予防措置」か、考え方の分かれるところである。当初の追放は、確かにこの二つの意味が含まれていた。旧勢力の除去は、つまり軍部の擡頭と権力的な国家思想の復活を予防するために行われたが、また、「日本民衆を誤らせた」というよりも、アメリカに対して敵対行為に出た指導層を追放によって懲罰する意味も含まれていたのである。戦犯に絞首刑は懲罰の最極限の現れである。
しかし、追放の意義は、あとで触れるように、後になって大きく転換した。ここでは懲罰ではなく、ただ「予防措置」の意義だけが大きくなった。
つまり、今度は軍部の擡頭や国家思想の復活を対象としたのではなく、その逆の方面、ロシアや中共に「同調する分子」の勢力拡大を予防したのである。云いかえると、対ソ作戦に支障を来すような因子の除去に目的の重点を置き換えたのであった。
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