先だって、欧州連合(EU)加盟候補国の旧ソ連構成国グルジア(ジョージア)で行われた議会選で、ロシア寄りの与党「グルジアの夢」が、約54%の票を獲得し勝利したとの報道がありました。2012年から続く与党の政権継続が確実になったということです。
でも、与党と異なる政策を進めようとするサロメ・ズラビシュヴィリ大統領や大統領を支える野党側は結果を認めず、激しい抗議行動を続いているということです。
そして、12月16日に退陣しなければならない親欧米派のスラビシュヴィリ大統領(フランス生まれのグルジア系移民で二重国籍)のもとに、激しい抗議行動には、ウクライナ危機に関与した傭兵が参加しているとの情報が多く寄せられているといいます(大統領は、うした情報に信憑性はないと主張している)。でも、与党側のコバヒゼ首相が、多極主義を掲げ、ロシアとの連携を支持しているということですので、グルジアの抗議行動が、欧米の支援を受けていることは間違いないと思います。
なぜなら、しばらく前に、プラウダが、下記のように、”グルジアにおける抵抗が、ウクライナのマイダン暴動にそっくりで、それは、グルジアの人たちの利益に反し、国家を不安定化させようとする試みである”と報道していたからです。それは、抵抗運動が暴力的であるとともに、欧米の支援を受けているということです。
ウクライナでマイダン革命のあった2014年に、グルジアの親欧米派は「グルジア軍団」を結成し、ウクライナのドンバス戦争やその後のウクライナ危機に関与し暗躍してきたといわれていますのですので、そうした組織が、欧米側の支援を受け動いているということだと思います。
だから私は、ウクライナと同じように、グルジアでも、アメリカが政権転覆を意図して動いているのでだろうと思いました。アメリカは、反米的な国の政権転覆をくり返してきたからです。
”Protests in Georgia look very much like Maidan riots in Ukraine
Those who are trying to destabilize the situation in the country do not care about the interests of the people of Georgia” (https://english.pravda.ru/world/161295-georgia-ukraine-maidan-riots/)
グルジア与党の勝利は、EUが事実上凍結した加盟交渉が再開する見通しは遠のき、ロシアの地域での影響力低下を狙ってグルジアを強力に支援してきた欧米には大きな打撃となるといわれています。
そして、そうした情報を裏づけるかのように、US Just Security が、バイデン政権に下記のような提言をしているのです。
(註:US Just Security というのは、非営利の政策研究機関があり、国際法、国家安全保障法、人権法といった分野で、法律が現代の国際的な課題にどのように応用されるのか研究している機関です)
そのUS Just Security が、
”グルジアは、暴力的な一党独裁政権に陥るリスクがある。バイデン政権は、その下落を止めるために今すぐ行動を起こさなければなりません。”(Georgia Risks Plunge Into a One-Party State. The Biden Administration Must Act Now )。
(https://www.justsecurity.org/105640/georgia-protests-us-sanctions/)
その提言には、下記のようにあります。
”小さいながらも重要な国であるジョージアは、バイデン政権が任期の残り数日間で世界的な危機を解決するために大きな変化をもたらすことができる場所の1つです。その国の何十万人もの人々、大半が若者が、ロシアではなく、欧米との民主的な未来を望んでいることを実証するため、自由と命を危険にさらしている。
しかし、アメリカ政権は、グルジア与党による平和的な抗議行動参加者に対するほぼ2週間にわたる毎晩の残虐行為に、力強く対応できていない。400人以上が逮捕されたと報じられており、ロイター通信は「多数のデモ参加者と数十人の警官が負傷した」と報じている。同国のオンブズマンは、すでに1週間前に、警察が市民の反対意見に対して「市民を罰するために暴力的な方法」を行使したと断定した。
グルジアに混乱を引き起こし、国を独裁的で親ロシア的な道に引きずり込んだ責任者の一人がいる:ロシアで財を成し、その後、2012年以来与党であるグルジアの夢党を結成したグルジアのオリガルヒ、ビジナ・イワニシビリだ。アメリカ政府は、彼と、11月28日、間違いなくイワニシビリの命令で、グルジアが欧州連合との交渉を中断すると発表したイラクリ・コバヒゼ首相に対して、即時かつ公的制裁を課すべきだ。グルジア国民の約80パーセントがEU加盟を望んでいることを考えると、コバヒゼの発表が大規模で持続的な抗議行動を引き起こしたことは驚くに値しない、特に10月26日の議会選挙後には、グルジア国内や国際監視団から深刻な問題だらけだと広く見られている。
これらの抗議行動に対する弾圧を受けて、アントニー・ブリンケン国務長官は12月4日、国務省がグルジアの「民主的プロセスを損なう者」に対する制裁を検討していることをほのめかした。彼は「グルジアの夢党による、グルジア国民、抗議者、マスコミ、野党関係者に対する残忍で不当な暴力」を引用した。 ・・・以下略(機械翻訳)
”The small but important country of Georgia is one place where the Biden administration can make a huge difference in resolving a global crisis during its few remaining days in office. Hundreds of thousands of people of that country, mostly young, are risking their freedom and lives to demonstrate that they want a democratic future with the West, not with Russia.
But the U.S. administration is failing to forcefully respond to almost two weeks of nightly brutality against peaceful protesters by the Georgian ruling party. More than 400 people reportedly have been arrested and Reuters reports that “scores of demonstrators and dozens of police officers have been injured.” The country’s ombudsman determined already a week ago that police had wielded “violent methods against citizens in order to punish them” for their dissent.
There is one man responsible for creating chaos in Georgia and taking the country down an authoritarian and pro-Russian path: Bidzina Ivanishvili, the Georgian oligarch who made his fortune in Russia and then formed the Georgian Dream party, which has been the ruling party since 2012. The U.S. government should impose immediate and public sanctions on him and on Prime Minister Irakli Kobakhidze, who announced Nov. 28, undoubtedly at Ivanishvili’s bidding, that Georgia would suspend its negotiations with the European Union. Given that some 80 percent of Georgians want to join the EU, it should be no surprise that Kobakhidze’s announcement triggered massive, sustained protests, especially coming after the Oct. 26 parliamentary election that has been widely seen within the country and by international monitors as riddled with serious problems.
In response to the crackdown on those protests, Secretary of State Antony Blinken hinted on Dec. 4 that the department was considering sanctions “against those who undermine democratic processes” in Georgia. He cited “the Georgian Dream party’s brutal and unjustified violence against Georgian citizens, protesters, members of the media, and opposition figures.”・・・以下略
そして、アメリカはこういう提言に基づくように、グルジアに制裁を科すのです。だから、制裁を避けたい人たちが抵抗運動に参加するようになり、抵抗運動を煽る役割を担う人たちや組織の活動によって、マイダン暴動のように暴力的になるのだと思います。プラウダやタス通信は、そういう状況を伝えているのです。
タス通信には、下記のような記事もありました。
”現米政権は2021年1月の連邦議会議事堂襲撃の参加者を投獄したが、グルジア国会議事堂への攻撃には対応しなかったとパプアシビリ氏は強調した。「どうやら、神々は人々がやらないことをするかもしれない」と彼は結論付けた。”
”The current US administration jailed the participants of the Capitol storming in January 2021, but did not respond to the attack on the Georgian parliament building, Papuashvili emphasized. "Apparently, the gods may do what the people may not," he concluded.”
まったく同じように、US Just Security は国際法、国家安全保障法、人権法といった分野で、法律が現代の国際的な課題にどのように応用されるのか研究しているというのに、イスラエルのガザにおける戦争犯罪や国際法違反、イスラエルのシリア侵略や一方的な爆撃に対する、提言はしないのです。
しばらく前、グルジアと 同じような状況にあった選挙前の旧ソ連構成国「モルドバ」を、EUのフォンデアライエン委員長やアメリカのブリンケン国務長官らが相次いで訪れ、連帯を表明するとともに、EUは18億ユーロ、日本円にしておよそ3000億円という大規模な支援を発表し、リンケン米国務長官は、1億3500万ドル(約210億円)の支援を打ち出したと報道されたばかりでした。
モルドバは、人口およそ250万で面積が日本の九州よりやや小さい国だというのに、選挙前にこのような莫大な支援を約束することは、一種の買収行為であり、内政干渉ではないか、と私は思いました。
そして、Wikipediaに、アメリカ合衆国の対外情報機関、中央情報局(Central Intelligence Agency, 略称:CIA)の活動内容として、”アメリカ合衆国に友好的な政権樹立の援助”、と、”アメリカ合衆国に敵対する政権打倒の援助”、があることを思い出すのです。
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