元グアンタナモ収容所・刑務官、ヒックマンの「外の世界の人間はグアンタナモ収容所の実態を知らずにいるが、収容所で働く看守もたいてい同じだ」と言う主張は、極めて重要だと思います。CIAの秘密工作活動をはじめとするアメリカの裏の取り組みは、関係者でさえも、その全体を知っている者は少なく、ほんの一握りの人間に限られているということです。
だから、グアンタナモ収容所の拷問死事件を察知した人間がそれを暴いても、政府やメディアが沈黙すれば、大きな問題に発展することはない、ということだろうと思います。
また、必要に応じ、高官が大手メディアに働きかけたり、関係者が、下記のように不都合な情報を葬り去る仕事をすれば、拷問死事件という重大な犯罪行為の暴露が、つまらないフェイクニュースとして、忘れ去られることになってしまうのだろうと思います。
”予想どおり、ヒックマンの著書は、報道機関からおおかた無視された。一方、オンライン書店のアマゾンの読書書評欄では、米軍関係の情報歪曲屋たちがせっせと活動している様子が窺えた。『キャンプデルタ殺人事件』は辛辣な批判を浴びていたのだ。ジェームズ・クラブトリーと名乗るレビュアーもこの本をこき下ろした。──「同収容所に関して数々の本を読んできたが、この『キャンプデルタ殺人事件』の唯一の長所は、ギトモの拷問に関する現実離れした空想を、元収容者以外が書いたというもの珍しさだけだ」。レビュー上では明かさなかったが。実はクラブトリーはグアンタナモ収容所の元広報官である”
だから、アメリカの報道メディアも一体となってつくり出された、まるでジョージ・オーウェルの『1984年』の世界のような現実を、許容してはならないということだと思います。
ウクライナ戦争が続く現在、アメリカは、自らの犯罪行為・不法行為を隠蔽し、逆にそれらをあたかもロシアの犯罪行為・不法行為であるかのように描き出して報道させている部分があると思います。
ノルドストリーム2が完成し、ロシアとヨーロッパ諸国の関係が深くなって、その影響力が拡大しつつあるときに、軍をウクライナに侵略させ、それを台無しにするようなことをロシアがするだろうかと疑い、私は、いろいろ調べました。そうしたら、いろいろなことがわかってきました。
だから、今は、ってウクライナ戦争は、自らの覇権と利益が失われることを恐れたアメリカが、さまざまな工作によって挑発した結果なのだと思っています。
また、台湾有事に関しても、今まさに日々影響力を拡大しつつある中国が、台湾に武力侵攻する必要性など全くないと私は思います。台湾の多くの住民も現状維持を望んでいるというのですから、なおさらです。
だから、中国の影響力拡大で、アフリカや中東、アジアや中南米その他でアメリカ離れがどんどん進み、覇権や利益の維持が難しくなったアメリカが、台湾有事を画策しているのだろうと思います。
善悪を逆さまに見せるアメリカの主張に、やすやすと従ってはならない、と私は思います。
また、アメリカが、あらゆる地域の問題に、武力や経済制裁をもって対処してきた過去も忘れてはならないと思います。アメリカが、法に基づき、話し合いによる問題解決をしたことは、ほとんどないと思います。
報道によれば、自民党の麻生副総裁が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談するとのことですが、私は、アメリカの使い走りのような気がします。台湾海峡の平和と安定は、アメリカと手を結んでいる蔡英文総統のもとでは、難しい、と私は思っています。
また、西村経産相のアフリカ訪問も、アフリカ諸国のアメリカ離れを食い止めるという使い走りの側面があると思います。
私は、ウクライナ戦争に関しても、台湾有事に関しても、アメリカに盲従することなく、客観的な情勢分析をもとにし、日本国憲法に基づいて主権を行使しなければ、危ういと思っています。
下記は「驚くべきCIAの世論操作」ニコラス・スカウ:伊藤真訳(インターナショナル新書027)から、「第五章グアンタナモ収容所の隠蔽工作」の「秘密施設──グアンタナモのアウシュビッツ」、「暴かれたグアンタナモ収容所の拷問死事件」、「なぜ誰も責任を問われないのか」を抜萃しました。
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第五章グアンタナモ収容所の隠蔽工作
秘密施設──グアンタナモのアウシュビッツ
外の世界の人間はグアンタナモ収容所の実態を知らずにいるが、収容所で働く看守もたいてい同じだとヒックマンは言う。しかしヒックマンにとって、それがある日の午後に一変した。同僚の看守と一緒にキャンプ・アメリカと呼ばれる地区の周辺をパトロールしているときのことだった。キャンプ・アメリカの広大な敷地の中には、極めて小規模なキャンプ・デルタという監禁施設がある。パトロール中、その近くの丘の斜面に秘密の建物群が横たわっていることにヒックマンは気づいた。建物はいずれも新築のようで、アルミニウムの外壁が貼られていた。「腹の底から本当に嫌な予感がしました。基地の地図を見てもこんな施設は載っていませんでした。存在しないことになっているものとでも言いましょうか」とヒックマンは語った。
一緒にいた看守も怪しいと感じたらしい。「俺たち、何を発見しちまったかわかるか? これは俺たちのアウシュビッツだぜ」と同僚は言った。ヒックマンと同僚の看守はこの施設を「キャンプ・ノー」と呼ぶことにした。「そんなものはない」という意味の「ノー」だ。それから間もない。2006年6月9日、ヒックマンは衛兵専任下士官としてキャンプ・デルタで見張りのシフトに就いていた。高さ10m余りの監視塔に立っていると、ひとりの収容者が監禁施設から連れ出され、白いバンに乗せられてキャンプ・ノーの方向へ向かうのが見えた。バンは20分後に戻ってきて、2人目の収容者、続いて3人目の収容者を同じように連れ去った。深夜零時少し前、バンが戻ってきて、医務棟にバックして駐車した。するとキャンプ中の照明がつき、サイレンが鳴り響いた。ヒックマンの知人の海軍衛兵に聞いたところ、3人の収容者が死亡したばかりで喉に布を詰め込まれていたとのことだった。国防総省はプレスリリースを発表し、非対称戦争(権力に大きな開きがある当事者間の戦争で、劣勢側の戦闘員らがゲリラ戦や自爆テロなど通常の戦闘行為によらない種々の手段を使うこと)の一行為として、3人の就業者が同時に首吊自殺したと発表した。しかし、ヒックマンはおそらく意図的ではなかったのだろうが、3人はキャンプ・ノーで尋問中に殺害されたのだと確信している。
ジョセフ・ピックマンは退役後、シートン・ホール大学法学部の研究者らの協力を得て、グアンタナモでの謎の死亡事件の真相を追い続けた。するとヒックマンとその調査チームは、死亡した収容者たちが異常に多量のメフロキンを投与されていた証拠を発見した。強力な抗マラリア薬の一種だが、キューバではマラリアに感染するリスクはない。そしてヒックマンは、自分も同僚だった看守たちも誰も、マラリアの予防薬などを服用したことはないと断言した。メフロキンは多量に摂取すると自殺願望を含めた精神障害を起こすことがある薬物だが、ヒックマンはアメリカの治安当局がそのメフロキンを尋問対象者に対して使用することがあるとの証拠見つけた。
2010年、ヒックマンはこの件をジャーナリストのスコット・ホートンに明かした。ホートンは翌年、収容者たちの死に関する長大な取材記事を『ハーパーズ・マガジン』誌に発表。この記事は、2011年のナショナル・マガジン・アワードの取材記事賞を受賞した。ホートンは記事の中で、3人の収容者らは米軍が発表したように毛布で首吊り自殺をしたのではなく、偶発的にか意図的にか拷問されている間に死亡したと結論づけた。
権威のあるナショナル・マガジン・アワードを受賞したにもかかわらず、「ギトモ」の事件を暴露したホートンの記事は大手新聞各紙や全米ネットのテレビ局から厳しい反発を食らった。一方、ヒックマンはすでに名誉除隊して一般民間人に戻っていた。州兵時代の非の打ち所のない経歴のために、国防総省がそう簡単に自分を信用ならない人物として中傷することはできまいと、ピックマンは確信していた。「私は下士官として最高クラスの人事評価を受けていました」とヒックマンは言う。「(3人の収容者が死亡した)2006年6月に任務に就いていたころは、その四半期、つまり4月、5月、6月はグアンタナモの下士官のなかで、トップの成績でした。それにキューバに行く前だってメリーランド州にいた一年間はまるまる年間最優秀兵士の座に就いていたのです」。
こうした成績のおかげで、ヒックマンは組織的な中傷の犠牲にならずに済んだが、報道メディアは、彼が暴いたネタを無視することにした。ABCニュース調査報道部トップのベテラン記者であるブライアン・ロスや、NBCの国防総省担当チーフのジム・ミクラスゼウスキらは、ヒックマンとシートンホール大学法学部の研究者たちにインタビューを行った。だが、国防総省の当局者たちの話を聞いた後、何の説明もせずに突然このネタをボツにしてしまったのだ。
『ハーパーズ・マガジン』誌の巻頭を飾った受賞記事を除けば、報道各社はピックマンの暴露的な調査結果に対していわば自主的な報道規制を敷いていた。唯一の例外は、オンライン・ニュースサイトの『トゥールスアウト』に掲載されたジェイソン・レオポルドとジェフリー・ケイの2010年12月の記事だった。レオポルドは「ギトモ」の収容者たちの謎の死亡事件を独自に調査する中で、ヒックマンのことを知った。囚人の弁護士への取材を通じ、この収容所で拷問が行われているとの疑惑が以前からあることをレオポルドは知っていた。だから3人の収容者が「非対称戦争」の一戦闘行為として同時に自殺したとの公式発表を聞いたとき、全く信じるつもりはなかった。「あの事件はグアンタナモ収容所史上の大きな転機でした」とレオポルドは言う。
なぜ誰も責任を問われないのか
2008年、スコット・ガーウェアという人物がロサンゼルスでバイク事故に遭って死亡したという事実をレオポルドは知った。この人物はCIAのためにグアンタナモ収容所で働いていることを明かしていた男で、どうやら知り得たことを伝えるために、マスコミと接触し始めていたところだったらしい。「彼がCIAのために働いていたことを私は知ったんだ。彼は尋問室にカメラを設置して、尋問中の『虚偽発言の検知』と呼ばれる監視任務などを担当していた」とレオポルドは言う。「この件の取材中、ガーウェアについて情報を持っていそうな人物と言えば、ジョセフ・ヒックマンだ、ということがわかった。そこで彼に連絡したというわけさ」。ピックマンはレオポルドの取材に応じ、メフロキンについて調べてみろと言ったという。「そこでこ薬品について調べることにした。すると、信じがたい、奇妙な話が見えてきたんだが、いまだに真相は藪の中だ」とレオポルドは言う。真相が解明されないのは米軍による検閲と、歪曲した情報を流すメディアのおかげだ、と付け加えておくべきだろう。それに国防総省に対して説明責任を果たすようにと迫る度胸のない同省御用達の国家安全保障問題を担当する報道陣のおかげだと。
2015年、ピックマンはみずから目にしたことを『キャンプデルタ殺人事件』(原題:Murder at Camp Delta)という好著にまとめた(大手メディアが事件に関する彼の証言を報じなかった経緯も記されている)。予想どおり、ヒックマンの著書は、報道機関からおおかた無視された。一方、オンライン書店のアマゾンの読書書評欄では、米軍関係の情報歪曲屋たちがせっせと活動している様子が窺えた。『キャンプデルタ殺人事件』は辛辣な批判を浴びていたのだ。ジェームズ・クラブトリーと名乗るレビュアーもこの本をこき下ろした。──「同収容所に関して数々の本を読んできたが、この『キャンプデルタ殺人事件』の唯一の長所は、ギトモの拷問に関する現実離れした空想を、元収容者以外が書いたというもの珍しさだけだ」。レビュー上では明かさなかったが。実はクラブトリーはグアンタナモ収容所の元広報官である。
テロに対する戦争が始まって15年……。9・11以降、グアンタナモやほかの各地の収容所において、アメリカ政府当局者、米軍将校、CIA尋問官は誰一人として収容者の拷問、または死をめぐり有罪ととなっていない。世界各地にあるアメリカの強制収容所に関連した事件で起訴され、処罰された唯一の事例は、イラクの悪名高いアブー・グレイブ監獄で任務に就いていた11人の下級の兵士たちだけだ。指揮命令系統の高位にある者たちがぬくぬくと法的責任を逃れていられるのは、そうした当局者たちの責任を問う社会的なプレッシャーがアメリカにはないからだ。こうした犯罪行為に対する世間の驚くべき無関心はどこに根ざしているかと言えば、それは9・11以降、実質的に無期限の非常事態を宣告している国家安全保障政策関連の諸機関の主張を、大手報道機関がほぼ全面的に受け入れてきたことにある。通常のルールや法的規制はもはや当てはまならない、とアメリカ政府は9・11を受けて世界に言い放った。そしてメディアはこの専制国家的な状況を概して不問に付しているのだ。
実際、CIAの拷問行為に何らかの意味でわずかでも関連のある人物として唯一法的責任を問われたのは、元CIA職員のジョン・キリアコウこうなる者だ。記者に機密情報を漏らした罪でペンシルベニアの連邦刑務所に二年間収監されたのだ。「私はそれほど問題になるようなこと言ったつもりはなかったのですが、どうやら私は、われわれが収容者らを拷問にかけているという事実を初めて公的に認めたCIA職員だったらしいのです」と、釈放後ほどなくしてキリアコウは私に話してくれた。キリアコウの罪は収容者に水責めの拷問をしたことではなく、それを明かにしたことだったのである。これこそがアメリカの大手報道機関もどっぷり浸かることになってしまった本末転倒の世界なのだ。報道メディアが公安国家アメリカのまるでジョージ・オーウェルズの『1984年』の世界のような精神構造に──それは「戦争こそ平和だ」「自由とは隷従することだ」、そして、「(国民の)無知こそが力だ」と説くのだ──疑問を突きつけずにきたことが原因なのである。
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