真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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敵と味方に分け、分断を煽っているのは

2024年11月16日 | 国際・政治

 アメリカ大統領選の結果は、蓋を開ければトランプ氏の圧勝でした。

 だから、選挙前の世論調査に基づく主要メディアの報道は、ハリス氏を勝たせるために、意図的に「接戦」であることを装ったものだったのではないかと思いました。

 

 そう思った理由の一つは、ロバアート・ケネディ氏の動向無視です。

 民主党の指名獲得を目指していたロバート・ケネディ氏が、民主党からの立候補を諦め、無所属候補に転じた時、当初は「今世紀最強の無所属候補」などと言われたのです。

 当時、仮にロバアート・ケネディ氏が、民主党のバイデン氏および共和党のトランプ氏と争う三つどもえの選挙戦になった場合、誰に投票するかという調査の結果、ケネディ氏が21%の支持を獲得していたといいます。また、特定の支持政党を持たない無党派層では、ケネディ氏が最も多くの支持を集めていたともいわれていたのです。

 この件に関し、NHK国際ニュースナビには(https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/12/18/36677.html)、

当初は、ケネディ家のブランドもあって、民主党のバイデン氏から票を奪うとの見方がありましたが、ある世論調査では、民主・共和両党の支持層で、“今回はケネディ氏を支持する”とした人はほぼ同じ割合という結果も出ています。このため、ケネディ氏は、両党がともに、無視できない候補者になっているのです。”

 とありました。だから、ロバート・ケネディ氏が立候補自体をあきらめ、トランプ氏支持を表明した時点で、トランプ氏の勝利がほぼ確実になったのではないかと思うのです。それまでのケネディ支持者がすべてトランプ支持に変わるというわけではないでしょうが、21%のケネディ支持者の大半が、ケネディ氏の意図を理解し、トランプ氏を支持すると考えられるからです。

 でも、バイデン民主党政権(=DS)の影響下にあると思われる主要メディアは、そうした事実を受け止めることなく、相変わらず「接戦」を伝えました。

 私は、そういう報道に歪みを感じ、陰謀論と言われる「DS」の影響力が働いているのではないかと思ったのです。

 さらに、下記の動画で、「接戦」が伝えられていたミシガン州のアラブ系およびイスラム教徒コミュニティのメンバーが、”We as Muslims stand with President Trump(わたしたちムスリムは、トランプとともに立つ)と演説しています。こうした組織に所属する人が、個人的にトランプ支持を表明するのではなく、組織としてトランプ支持を表明している事実は重大だと思います。選挙を左右する影響力があるのではないかと思うのです。ミシガン州には、アラブ系住民が多く、イスラム教徒も20万人前後住んでいると推定されているのです。


 だから、こうした事実を客観的に捉えれば、トランプ氏の圧勝は、予想できたのではないかと思うのです。でも主要メディアは、結果が判明するまで「接戦」とくり返していました。それは、主要メディアが世論を客観的に報じる姿勢や機能を失っているということではないかと思ったのです。

 

 また、下記のような記事にも、同じような問題があると思います。

 先日(1114日)朝日新聞の「世界発」という欄に、「領土妥協、平和だとは思えない ウクライナ、4人の子を育てる女性は」と題する記事が掲載されました。

 イリーナ・シュマトコさんはウクライナ戦争で、夫を失っても、「いかなる領土的な妥協もすべきではない」という考えで、母も戦地で命を失っているのに、

また愛する誰かが亡くなってしまうかもしれないことを「怖い」と思わないのか。そう問うと、間を置かずに「思わない」と答えた。

 というのです。

 バイデン政権民主党政権(DS)の影響下にあると思われる主要メディアは、くり返しこうした人物の記事を掲載しています。

 自らが受けた深刻な被害に対する深い悲しみや怒りを語るだけで、なぜそういうことになったのかということには全く言及せず、戦う姿勢を示すのです。

 それは、ウクライナやイスラエルの政治家が、自らの国が攻撃を受けた時点からしか戦争を語らず、その経緯を無視する姿勢と同じだと思います。経緯を無視すれば、相手は突然攻撃を仕掛けてきたテロリストやテロ国家ということになるのです。

 

 それは、しばらく前、朝日新聞の「イスラエル・パレスチナ 市民の声 ガザ戦争1」の欄に掲載されたラヘル・シトルクさんの記事と共通するものだと思います。「実家は入植地 パレスチナ人の攻撃絶えない現実」「わたしたちの国 どこでも住めるはず」と題されていましたが、ユダヤ人のパレスチナ入植によって始まった「争い」の実態、土地や家を奪われたパレスチナ人の思いが語られることはないのです。

 だから、現在バイデン民主党政権と手を結んでいる国々の主要メディアの報道は偏っていると私は思います。客観的事実を報じていないと思うのです。

 

 117日、毎日新聞は、”米大統領にトランプ氏 分断の深まりを憂慮する”と題する記事を掲載しました。”トランプ氏は、リベラルの分裂をあおり、共和党と民主党の対立を激化させ、敵と味方に分かつ構図を作り上げることで支持を集めた”というのです。

 でも、上記のようなことを踏まえれば、主要メディアも、”敵と味方に分かつ構図を作り上げ”ロシアやハマスを敵視する姿勢で、世界を分断する報道に終始してきたと言わざるを得ないと思います。

 

 トランプ氏の勝利が発表されて以降、主要メディアは、民主主義の危機であるとか、国際秩序の崩壊が始まるとか、世界の安定が損なわれるとか大騒ぎしているようですが、それは、バイデン民主党政権の権力喪失が、「DS」を支えてきた人たちの立場を危うくするということから来るものではないかと想像します。

 トランプ氏の方針で、ウクライナ戦争やイスラエル・ガザ戦争が停戦に至れば、バイデン民主党政権の武力主義に基づく世界支配が終わると思います。現状では、アメリカが軍事力に依存しなければ、多極世界になるのではないかと思います。多極世界の新たな国際秩序をどのように構築するかは難しい問題だと思いますが、いままでのような戦争が続く時代の終焉は、国際社会の進歩につながり得ると思います。

 だからメディアは、「民主主義の危機」であるとか、「国際秩序の崩壊」でるとか、「世界の安定が損なわれる」とかという心配を煽るのではなく、新たな時代の幕開けにつながるような報道に転じるべきだと思います。

 

 米紙ワシントン・ポストが10日に、トランプ氏がロシアのプーチン大統領と電話で協議したことを伝えました。確かに電話協議が行われても不思議ではない状況にあると思います。でも、この電話協議について、クレムリンのペスコフ報道官は、

完全な虚偽で、純粋なフィクションだ。要するに単なる誤報だ。会話はなかった

 と述べたといいます。

 にもかかわらず、朝日新聞は、くり返しこの米紙ワシントン・ポストの報道を掲載しました。事実はわかりませんが、ロシアが否定しているのに、自ら取材したのではない他国の情報を、事実確認もせずにそのまま掲載するということには問題があると思います。

 さらに、CNNが、「イラン政府系ハッカーが米選挙関連サイトを偵察、介入目的か マイクロソフトが報告書」と題する記事を掲載しました。

 でも、イランの国連代表部は声明で全く信頼性、正当性がなく、事実無根で許しがたいと、強い反発を示したといいます。

 また先日、主要メディアが、”アメリカ司法省はジャーナリストの殺害を企てたなどとして訴追した容疑者が、イランの軍事精鋭部隊の指示のもとで大統領選挙のさなかにトランプ氏の暗殺も計画していたことが明らかになった”と発表したことを伝えました。この報道についても、イラン側は「まったく根拠がない」と否定したといいます。

 

 アメリカは最先端の情報技術と世界最大の情報組織を持ち、世界中に情報関係者を配置しています。だから、他国が知り得ない情報を発信することができるのだと思います。

 でもそれをいいことに、時々、自らに都合のよい虚偽情報を流すことがあることを忘れてはならないと思います。したがって、ロシアやイランが否定している情報を信じることには問題があると思います。

 くり返しそういう虚偽情報をながすことによって、反ロ意識や反イラン意識を拡大深化させる意図があることを疑う必要があると思うのです。

 

 下記は、「ウクライナを知るための65章」服部倫卓・原田義也編著(明石書店)から抜萃しました。

ウクライナ戦争は、少なくとも2014年まで溯らないと正しく理解することはできないことがわかると思います。

 夫を失っても、「いかなる領土的な妥協もすべきではない」と主張する、4人の子を育てる女性、イリーナ・シュマトコさんには、多分、ドンバス地域に住む人たちの思いは伝わってはいないと思います。

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                        50

    ── ★「ドンバス紛争ドンバス人民の自衛」か「ロシアの侵略」か★ ──

 20142月の首都キエフにおけるヤヌコビッチ政権崩壊と前後し、ウクライナ各地は無政府状態に陥った。特にウクライナ東南部の諸州では、キエフの新政権で反対する勢力が武装化し州庁舎等の公共施設を占拠した。ヤヌコヴィチの地元ドンバスでも、地域党が支配していた州議会・行政府の権威が失墜し、権力の真空を衝く形でロシアの諜報員・煽動家が直に浸透、これと協働した現地の自治体関係者、治安機関、準軍事組織が中心となって州を単位とした「ドネツク人民共和国」「ルハンスク(ロシア語読みでルガンスク)人民共和国」創設が宣言された。その後、ウクライナ新政権との間で武力紛争が生じ、20152月にミンスクで停戦が合意された。以降、両人民共和国がドンバス2州の三分の一、約15km2を実効支配し続ける状態にある。人民共和国内の住民は、公式にはウクライナ国民であるため、ウクライナ・人民共和国間境界線(停戦ライン)に設定された数ヶ所の出入ポイントを通じて合法的に往来することが可能であり。往来数は数万人/日に達している。紛争激化時には多くの住民が域外に逃れ、停戦後、国内、国外避難民数は200万人に達したが、一部は故郷に戻り始めているよ。両人民共和国の統計を合計すると、住民数は計370万人(2018年初現在)となっている。

 両人民共和国はウクライナ政府及び国際社会から「侵略国ロシアの支援を受けたテロリストによる被占領地域」と見做されており、国際的な国家承認を受けていない。そのため、公式には一時的被占領地域、ATO(反テロ作戦)地域、ORDLO(ドネツクおよびルガンスク州特別地区)と呼称される。ロシア政府も、両人民共和国を国家承認していないものの、ドンバス紛争を「キエフのファシスト・クーデターに対するドンバス人民の自衛行為」と定義しており、域内にロシア系住民(ロシア語話者、ロシア民族籍保有者)が多いことと相俟って、ウクライナ政府がコントロールできないロシア・人民共和国間の境界線を通じて援助を行っている。ロシアは、人民共和国が軍事的に追い詰められた20148月に大規模な軍事援助実施し、人民共和国の予算払底後の2015年春以降に財政援助を本格化させ、被占領地域の住民に対する年金、公務員給与を負担している。さらにウクライナ側が被占領地域へのガス供給を停止すると、「人道的観点から」ガスプロム社に命じて供給を肩代わりする等、人民共和国の存続に大きく関与している。ロシア政府による非公式な軍事支援は、紛争の激化を招いており、国際社会による対ロ制裁の根拠ともなっている。

 情報統制やウクライナ民族主義活動家による違法な反ロ行動が黙認されているように、ドンバス紛争はウクライナ政治に暗い影を落としている。また、人民共和国側に住む数百万人のドンバス有権者が国政に参加しないことから、いわゆる「ウクライナ東西分裂」が解消され、北大西洋条約機構(NATO)・欧州連合(EU)加盟政策が確立される機会をウクライナ政府に与えている。一方、人民共和国では、ロシアの影響下でソ連を彷彿とされる政治・経済・社会体制が作り上げられており、欧州統治に向けた改革を進めるウクライナ側との間で乖離が進んでいる。

 紛争はウクライナ経済にも大きな損失を与えている。消費者心理は悪化し、国防予算は膨らみ、ドンバスのインフラは損壊し、ウクライナ法人の資産は人民共和国側に統制され、外資はウクライナ進出を躊躇している。ウクライナ被占領地域間の通商は、2017年初頭にウクライナが経済封鎖を断行したことにより完全に遮断されてしまった。これにより両者間の分業体制が崩れ、人民共和国のみならずウクライナ側でも工業生産の低下を見た。特に人民共和国内で生産される無煙炭が途絶したことによりウウライナ側の火力発電所は燃料不足に陥り、高コストの輸入炭への切り替えを強いられている。ウクライナ政府は、ドンバス復興費を150億ドルと見積もっているが、その一方で被占領地域の補助金漬け産業と年金生活者を切り離す機会ともなっており、財政負担が軽減するというメリットも発生している。

 紛争開始直後、正規軍、財務省部隊、国家親衛隊および志願兵部隊からなるウクライナ側は人民共和国側に対し軍事的優勢に立ち、武力による被占領地「解放」を目指していた。しかし、20158月以降、ロシアが軍事援助を本格化させると、ウクライナは、イロヴァイスク、デバーリツェヴェにおいて軍事的大敗を喫し、欧米と協力した平和的手段による主権回復を目指す政策への転換を余儀なくされた。20152月にウクライナ・独・仏・露四国の首脳会談で合意された「ミンスク合意(ミンスク2)」は、ドンバス和平策として、ウクライナの政治体制の変更、すなわちウクライナ憲法を改正した上で地方分権を行ない、大幅な自治権を与えられたORDLOを含むドンバス全域のウクライナ主権が回復されることを規定している。またこれら地域への財政支出の再会もウクライナ政権に課している。

 和平交渉を主導したプーチン・ロシア大統領の意図は、人民共和国の独立を認めずに「ウクライナ連邦」内に押込み、ウクライナの内外政、特にNATO加盟政策に影響力を及ぼそうとするものである。そのため、ウクライナだけでなく独立を果たせない人民共和国側も履行に消極的であり、欧米とロシアとが共同して紛争当事者へ影響力を行使できるかが紛争解決の鍵となっている。その意味では、欧米・ロシア間の関係改善がない限り、ドンバス紛争は解決されないことになる。

 ミンスク2以降、大きな軍事衝突は起きていないが、散発的な小規模の戦闘は続き、死傷者数が増え続いている。2018年初頭時点で、紛争による犠牲者は1万人を超えている。また、被占領地域の住民の困窮化や衛生状態の悪化、政治的抑圧、さらにはこの紛争が新兵器の試験や社会実験の場と化している等、人道的に看過できない状態が続いている。(藤森信吉)

 


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