ウウライナ戦争に加担して!
今日、下記のような報道がありました。
”アメリカ政府はウクライナ軍の反転攻勢を支援するため、殺傷力の高いクラスター弾を供与すると発表しました。アメリカ国防総省が7日に発表したウクライナへの新たな軍事支援の中にクラスター弾の供与が初めて盛り込まれました。バイデン政権は不発弾によって民間人に被害をもたらす恐れのあるクラスター弾の供与にこれまで慎重な姿勢をとってきましたが、苦戦が続くウクライナ軍の反転攻勢を支えるため、ロシア軍の塹壕(ざんごう)への攻撃に有効だと判断し、供与に踏み切りました。”
クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)は、2021年10月末現在、日本を含む123カ国が署名、110ヵ国が批准しているといいます。クラスター爆弾は一つの「親爆弾」が多数の「子爆弾」を含み、広範囲に飛散、一発で多数の兵士を死傷させるのみならず、不発の子爆弾が地雷のように残り、戦争が終わっても長く、子どもを含む民間人を死傷させる爆弾であるといわれています。だから、国際人道法で非人道兵器とされているのです。
先だっては、やはり非人道兵器とされている劣化ウラン弾のウクライナへの供与もなされました。
だから、アメリカが主導するウクライナ戦争に加担せず、停戦を求めなければいけない、と私は思います。
アメリカは、アメリカの戦力に対応する能力をほとんど失い、降伏が問題にされるようになっていた日本に、原爆を二発も投下し、反省も、謝罪もしていない国だと思います。
原爆投下は、アメリカが危機に瀕して、投下せざるを得なかったという、国際条約で定められた正当防衛にはあたりません。
私は、宋 文洲氏が取り上げている、”「日本に原爆」についてマンデラ”
https://twitter.com/sohbunshu/status/1660386441778827266、の「米国が言葉で言い表せない人類への犯罪を起こした。日本軍が全ての戦線から敗退している最中に広島と長崎に原爆を落とし数十万人を殺した。目的はライバルのソ連に力を見せつけるためだった」は、間違っていないと思っています。
ずいぶん前に取り上げた「原爆を投下するまで日本を降伏させるな」鳥居民(草思社文庫)などもそのことを論じていたと思います。原爆は、日本を降伏させるためではなく、ソ連を排除して、世界の国々をアメリカの影響下に置くために投下されたということです。
過去の戦争をふり返れば、アメリカは、アメリカの覇権や利益の維持・拡大のためには、国際法を無視し、何でもする国であったことがわかると思います。世界最大の軍事大国であり、世界最大の経済大国であるアメリカには、他国には適用される国際法が、適用されない状態が続いています。
だから、ウクライナ戦争についてもいろいろ気になっているのですが、今回は、ウクライナ戦争前のアメリカの対露政策をふり返り、問題点をまとめておきたいと思いました。
森 聡氏の「ウクライナと「ポスト・プライマシー」時代のアメリカによる現状防衛」によれば、オバマ政権のときから、アメリカは、すでにウクライナ戦争を準備するかのように、三つの取り組みを始めているのです。
その一つは、ロシアの弱体化を意図するような制裁の数々です。同書には下記のようにあります。
その名称は、どれももっともらしいのですが、中身は穏やかではなく、一種の戦争行為のような厳しいものだと思います。
”① 対ロシア制裁
バマ政権は当初、ロシアに対してまず金融制裁を科した。
2014年3月6日付の行政命令第13660号、同16日付第3661号、同20日付第13662号は、ウクライナの不安定化とクリミア侵略に関わった人物、プーチン側近を含むロシア政府関係者やロシア国営企業幹部などを対象にした個別制裁であった。
また、連邦議会もウクライナ関連で「ウクライナの主権、統一、民主主義、経済の安定性を支援する法」(SSIDES:Support for the Sovreignty Integnity,Democracy,Economic Stability of Ukraine Act of 2014)と「ウクライナ自由支援法」(UFSA:Ukraine Freedom Support Act)という二本の法案を可決し、オバマ大統領が署名して法律になった。前者はウクライナで人権侵害や情勢不安定化に関わった人物、重大な腐敗事案に関わったロシア人などを対象とし、後者はロシア政府が運営する武器輸出業者や、ウクライナやシリアなどに兵器を移転する人物や団体、ロシアで深海・北極海・シェールオイルの開発に投資している人物や団体、ロシアの兵器輸出や資源開発などを幇助している外国金融機関などを制裁対象とした。”
こうした制裁が、ウクライナ戦争前から実施されていたことは、見逃してはならないことだと思います。
二つ目は、NATO同盟国への「安心供与」という取り組みです。この取り組みは、裏を返せば、ロシアに対する「挑発の取り組み」といえるのではないかと思います。同書には、下記のようにあります。
”②同盟国への安心供与
第二のアプローチである同盟国への安心供与は、当初はイギリス、イタリア及びアメリカ本土の米軍部隊を、バルト三国とポーランドに緊急展開して、パトロール任務に参加させたり、合同軍事演習を実施するという形をとった。中心的な取り組みとなったのは、オバマ大統領が2014年6月にポーランドを訪問した際に発表した「欧州安心供与イニシアティヴ(ERI:European Reassurance Initiative)であった。ERIはトランプ政権期の2018年に「欧州抑止イニシアティヴ(EDI:European Dterrence Initiative)」に名称を変更されるが、①軍事プレゼンスの増強、②装備・軍需品等の事前集積、③インフラの増強、④パートナー国の能力強化、⑤演習と訓練という5つの事業で構成されている。2015会計年度(9.85億ドル)と2016会計年度予算は規模が限定されていたが、2017年会計年度から2019会計年度にかけて増額され、その後2021年まで減少傾向を辿っていくことになる。”
そして、三つ目の取り組みが「ウクライナ支援」です。ウクライナ戦争前から実施されていたということを見逃してはならないと思います。特に、殺傷兵器の提供に関し、オバマ大統領はあくまで提供反対という立場を貫いたが、”供与すべきだと主張した高官の中に、当時ウクライナ問題を任され、同国のポロシェンコ大統領と良好な関係を築いていた副大統領バイデンや国務副長官だったブリケンらもいた”という指摘は見逃すことができません。下記のようにあります。
”③ 対ウクライナ支援
第三の柱である対ウクライナ支援は、2014年にウクライナで誕生した新政権の要請を受けて、ロシアの支援を受けたウクライナ東部の武装勢力と戦うために必要な装備を提供し、演習や訓練を実施することから始まった。また、オバマ政権はアメリカ政府及び国際通貨基金による対ウクライナ経済援助パッケージも策定し、ウクライナ経済を支える取り組みを実施した。
まず訓練については、アメリカによるウクライナ軍の訓練は、1993年から「州パートナーシップ(State Partnership)」なるプログラムとして20年以上続いており、アメリカ州兵がウクライナ軍の訓練にあたってきたという実績があった。これはロシアを脅かさない形で、国防改革を目指す中東欧諸国との軍事交流を進めるという趣旨で設けられたプログラムであった。
しかし、2014年に事態が急変すると、2015年春から米陸軍第7訓練コマンドの責任の下で、統合多国籍訓練グループ・ウクライナ(JMTG-U-:Joint Multinational Training Genter Ukuraine)が、ウクライナ西部ヤボリウの軍事訓練用基地「国際平和維持・安全保障センター」を拠点に、ウクライナ軍の訓練を開始した。
イギリスなど他国もウクライナ軍への訓練を実施したが、アメリカのプログラムは、アメリカ各地の州兵が9ヶ月のローテーションでウクライナに赴いて同国軍部隊の訓練に当る形をとった。こうした多国籍の取り組みの一環で、2014年9月には、15カ国の軍隊から1300人が参加するラビット・トライデント演習をウクライナ領内で実施するなど、演習や訓練が強化された(なお、このヤボリウの訓練基地ないし演習場は、2022年3月13日にロシアが30発以上のミサイルで攻撃して破壊されることになる)。
また、アメリカ国防省は、2016年度国防授権法第1250条で定められたウクライナ安全保障イニシアティヴ(USAI:Ukraine Security Assintance Iitiative) を通じて、各種装備の提供も開始したが、兵器類は非殺傷兵器に限定された(USAIは、ERIのパートナー国能力強化支援の枠組みの中に位置付けられている)。2015年には、アメリカがウクライナに殺傷兵器を提供すべきか否かが問われ、この問題をめぐってオバマ大統領と政府高官らとの間で意見が対立した。政府高官の大半が殺傷兵器を提供して、軍事バランスを変えられないまでも、ロシアの武力侵攻の敷居を少しでも上げるべきだと主張したのに対し、オバマ大統領はあくまで殺傷兵器の提供反対という立場を貫いた。このとき殺傷兵器を供与すべきだと主張した高官の中に、当時ウクライナ問題を任され、同国のポロシェンコ大統領と良好な関係を築いていた副大統領バイデンや国務副長官だったブリケンらもいた。
当時国際安全保障担当の国防次官補だったショレによれば、オバマ大統領が殺傷兵器の供与に反対した理由はいくつかあった。第一に、殺傷兵器をウクライナに提供しても軍事バランスを大きく変えられないにもかかわらず、紛争を激化させて、プーチンにウクライナ全土を侵攻する口実を与えかねない。第二に、ウクライナ支援を強化する条件として、ウクライナが改革を進めるかどうかが重要であるにもかかわらず、ポロシェンコ大統領との信頼関係が十分構築できていない(特にポロシェンコが2014年9月に訪米した際に、殺傷兵器を提供しようとしないオバマ政権を批判する演説を連邦議会で行ったことは、悪影響をもたらしたとされる)。第三に、ロシアがウクライナ東部の武装勢力にミサイルを提供して、マレーシア航空機17便の撃墜という惨劇を招いたように、アメリカも完全に制御できない相手に殺傷兵器を提供すると、予期せぬ事態が生じかねない。
ショレは、ホワイトハウス高官らは、ロシアを意図せずして挑発することを過剰に恐れていたと指摘している。また、当時のオバマ政権関係者によれば、2015年2月にホワイトハウスでオバマと首脳会談を持ったメルケル独首相は、アメリカはジャベリン対戦車ミサイルをウクライナに提供して事態をエスカレートすべきではなく、外交的解決を探ることは可能だとオバマを説き、このメルケルの説得がオバマの考え方に強く作用したという。
他方、当時CIA長官だったブレナンは、米情報当局も米軍も当初、ウクライナに特にジャベリン対戦車ミサイルを提供することについては反対だったと、2019年11月のインタビューで述べている。ブレナンによれば、親ロシア政権下のウクライナ軍部、治安当局、情報当局の内部には、ロシアの工作員が深く入り込んでおり、殺傷兵器をウクライナに提供すれば、機微技術がロシア側に漏洩するという懸念があったからだった。ブレナンは、ユーロマイダンから約8週間後にキーウを訪問したが、それはロシアの工作員をウクライナ当局から排除する手伝いをするためであったと語っている。
④オバマの判断
殺傷兵器供与問題に関してオバマ本人はインタビューで、アメリカにとってのウクライナよりも、ロシアにとってのウクライナの方が重要なので、ロシアはエスカレーション上の優位に立っているという考え方を示唆し、「NATO非加盟国のウクライナが、ロシアの軍事的な支配に対して脆弱であるという事実は、何をしようと変わるものではありません」と述べたうえで、次のように説いた。
人間は自分にとって何が必要不可欠かという判断に基づいて反応するものです。ある何かが、相手にとって本当に重要で、我々にとってそこまで重要ではないとすれば、その事実を相手はわかっているし、我々もわかっているのです。抑止する手段は様々ありますが、それが有効であるためには、あらかじめ何をめぐって戦争する用意があるのかをはっきりさせなければなりません。もしクリミアやウクライナ東部をめぐって我々がロシアと戦争すべきだという人がこの街に(ワシントン)にいるのであれば、その人は声を上げてそれをはっきりいうべきです。単に強硬な言葉を使ったり、問題となっている地域のすぐ隣で何らかの軍事的な行動をとれば、ロシアあるいは中国の意思決定に影響を及ぼせるんどという考えは、過去50年間に見られた様々な事実に反するのです。
他方NATO諸国の防衛にかんするオバマのコミットメントは強固だったようである。2014年にNATO諸国の防衛態勢を強化する取り組みについて検討した際に、オバマは側近らに向って、「バルト三国やNATOの前線国家に何らかのトリップワイヤーが張られていない状態のまま、政権を次の大統領に引き継ぎたくない」としたうえで、「我々はウクライナで戦争することはないが、NATOであれば戦争するということをプーチンにわからせる必要がある」と述べた。
また、オバマはウクライナをめぐって公式にロシアと交渉に入るのは避けるという判断を下していた。”
トランプ政権になっても、オバマ政権の対ロ政策三本柱は、基本的に踏襲されたといいます。すなわち、①対露制裁、②NATO諸国への安心供与、③対ウクライナ支援は継続されたのです。ただ、トランプ政権のときに、対露制裁に関わって、2017年8月 ロシアのみならず、北朝鮮やイランも制裁対象に含む対敵制裁法(CAATSA:Countering America’s Adversaries Through Sanctions Act of 2017)を制定したことは見逃せません。この法律の第二篇が「2017年欧州・ユーラシアにおけるの影響力への対抗法(CRIEEA:Countering Russian Influence in Europe and Eurasia)」というロシア制裁法にあたるということですが、これは既存のアメリカ人によるロシアとの取引禁止の範囲を大幅に拡大するとともに、第三国の外国人によるロシアとの取引も禁止し、それに違反する外国人に二次制裁を科すものであるというのです。
さらに、対ウクライナ支援で、トランプ政権は2017年12月13日民間企業によるウクライナへの殺傷兵器の売却を承認したといいます。この時点ではジャベリン対戦車ミサイルは含まれずていなかったというのですが、4150万ドル相当のM107AIスナイパーシステムと弾薬、関連備品を売却することを決定しているのです。
また、この決定に至る前から、アメリカ政府はウクライナ軍内部におけるロシアの影響力という米軍部の懸念がある程度取除かれていたと受け止めていたようです。オバマ政権末期の2016年9月に、アビザイド元米中央軍司令官がウクライナ国防大臣顧問に任命され、ウクライナ軍の文民統制強化や腐敗撲滅、NATOとの相互運用性の強化などに取り組んでおり、トランプ政権もウクライナ軍改革を進めていたからだといいます。
そして、ジャベリン・ミサイルを含む殺傷兵器供与決定に至るのですが、トランプ政権が2017年12月に発出した「国家安全保障戦略」は、中国とロシアを相手にした「大国間競争」の再来を謳っており、安全保障官庁の中で対露強硬論が高まっていたことも、殺傷兵器供与決定を後押ししたと考えられているようです。
そして、国防省がジャベリン・ミサイル210基と関連機材37台(合計4700万ドル相当)をFMSでウクライナに売却する決定を下し、国防安全保障協力局(DSCA)がこの決定を連邦議会に通告したのは、2018年3月1日だということです。
アメリカが、ウクライナ戦争前から、ウクライナ政府やウクライナ軍の内部に入り込んで、ロシアを睨んだ政策を進めていたことは明らかであり、突然、ロシア軍がウクライナの領土に侵攻して、ウクライナ戦争を始めたのではないと言えるように思います。
ウクライナの政権転覆で重要な役割を果たした、クリチコ・キエフ(キーウ)市長は、ウクライナ戦争は、プーチンの野望で始まったというのですが、そういう主張をする人たちは、実態を隠したいのだろう、と私は思います。
ロシア側は、ウクライナ領土に入ったことを「特別軍事作戦」と称しています。ウクライナがロシアに対して軍事的な脅威を与えているので、自国の安全保障を確保するために行動したと主張しているのです。話合いをする必要があるということだと思います。
でも、クリチコ市長に限らず、著名な作家や学者の中にも ”プーチン大統領はいまだに旧ソビエト時代の意識から脱却できていない。ウクライナ戦争はプーチンの野望で始まった”というようなことを主張する人がいます。自らの立場を守りたいのだろう、と私は思います。
親露派のヤヌコーヴィチ政権を倒すためのマイダン革命において、アメリカ(バイデンやヌーランドなど)が背後で動いていたということは、2015年1月、当時のオバマ大統領が、CNNの取材で認めたと言われています。そして、それを立証する具体的な動きに関する会話(当時のヌーランド国務次官補と駐ウクライナのアメリカ大使との会話)が録音され、リークされてもいるのです。
だから、国際法に基き、一日も早く「停戦」すべきだと思います。
ウクライナ戦争に加担してはいけないと思います。
>ウクライナの望む形の停戦は有りだと思います。
とのことですが、具体的にはどういう停戦を想定されているのでしょうか?
私は、条件をつけず、”停戦”を最優先してほしいと思っています。