
見比べるとこちらが基本で、
緑組がこれに足したり引いたりしているかんじ。
乱暴に例えると赤組が雪組初演エリザで緑組が星組エリザ。
1回しか見られない人はとりあえず赤組をオススメ。
ただし、草刈さんの歌に耐えて。芝居は悪くないと思うけど。
赤組の方が全般的に皆さんの芝居が濃く、エモーショナル。
相互作用で盛り上がる。
伊礼くんの過剰すぎる演技が草刈さん歌をかなりカバーしている。
恋に浮かれているからあんな音程にもなるさ、と騙されかける気がする。
伊礼くんはプレイボーイぶりが自然すぎるので、侵入の言い訳も納得。
草刈さんの歌は酷いけど(ちぎちゃんとタニちゃんの間ぐらい)、
踊れなくなったダンサー、という説得力はある。
赤組でも思ったけど、スンラさんと草刈さんが芝居しているのがアメージングで慄く。
ミツオさんとスンラさんが絡めばダブル元ユダでさらにアメージングだったんだけどな。
なんかミツオさんはまた大きくなった気がする。
特に横幅が。
一つの嘘から破滅への爆走が、哀しくもありウハウハでもあり。
土居さんは小柄女子の似合わない男装が
己を出さない部分に合っていたと思う。
じゅりぴょんだと、その気になればヤンさんぐらい軽く守れそうなんだよね。
格下ゆえの従順さはあるけど。
真野さんは昆ちゃんより大人っぽいので
社会の底辺の女性が野心を持って、
でも持ちきれなくて、のメリハリがすごく良かった。
這い上がりたいよね、わかるよね。
わたる君の死は、男爵を選ぶ(←最初のルーレットで指差し)、
しかし、死と同時に愛も与えた。
生ける屍のような彼の人生に、
死の代償として、生きる意義を与えた。
死神に選ばれたからこそ得られたものがあった。
そんなかんじ。
20年代の設定はチャールストンに世界恐慌の裏付けぐらい。
緑組にあった冒頭とラストのヒトラーの演説は無かった。
緑組の社長と男爵は薄いけど、
こうして見比べると緑組に過剰さは不要なので、
ヤンさんのバサバサさを含め、
緑組はあの組み合わせがいいんだろうな。
ヤンさんに赤組は似合わない。
赤組は生と死が絡みあっている。
緑組はホテルの回転扉のように交互に出てくる?
生があり死があり生があり、みたいな?
赤組は「生」がテーマで、緑組のテーマが「死」かな。
緑組の「死」には、人だけでなく、
価値観も常識も階級も国家も世界も神も、死ぬのだ、も、
テーマに入っていると思います。
うん、ほんと。
役者間の化学反応が作品の豊かさを増幅する赤組に、
演出家の意図を出すために演技を過剰にする隙を与えない緑組と、
見比べると面白いね。
ただ、緑組を見たのはゲネプロなんで
本公演では熱くなっている可能性はあるかも。
そういった意味で、私の比較は違っているかもだけど、
とりあえず。
時間とお財布に余裕がある方は是非両パターン見てね!!
フォーラム版グルシンスカヤの美波里さんは還暦前ぐらいだったけど、
芝居のためではなく、日常のトレーニングでポアントレッスンをされていたそうで、
当時40歳前のリカちゃんは「そんなキツイこと自分にはもう無理」みたいなことを言っていました。
バレエを長く習っていて、宝塚時代はダンサーだったリカちゃんから
そういう言葉が出るほど、キツイんだと思ったものです。
だから草刈さんが、バーレッスンの場面ではさすがのプロの動きを見せつつも、
引退公演中なのも納得でした。