ゆいツールブログ:NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)

人と人、人と自然、人と環境などを「結う(ゆう)」ということに関して、団体の活動やスタッフの思いなどを紹介していきます!

ESDスタディツアー~違いに気づき、文化を知り、行動につなげる~(先生の言葉)

2019年04月18日 | 6. エコツアー参加者の声

大学の先生の文章を紹介します。

先生は、ロンボクを訪れるのは2回目。今年も、3月のエコツアーに学生を連れて参加され、記録係の方が作られた記録集に文章を寄せられました。

ゆいツールは許可を得た上で、その全文をこちらに転記させていただきました。

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ESDスタディツアー~違いに気づき、文化を知り、行動につなげる~

今回のツアー先に選んだのは前回同様、インドネシア共和国のロンボク島です。

多文化共生が求められる今日、異文化を背景にもつ他者とともにいるあり方が問われています。持続可能な開発を考える上でもそれは重要です。違いを前提に、ともにいられる暮らし方や働き方を考えていかなければなりません。けれども、そもそも私たちは違いを理解できているのでしょうか。

ともに暮らすことで見えてくる他者との違いを通して、私たち自身の当たり前に気づくこと、異文化をもつ他者がいることを知り、地球および地域環境の保全を考えること、ここに今回のツアーの目的がありました。持続可能な開発には、制度設計や技術革新が必要です。そうした環境整備によって人々の意識や行動の変化が見込めます。けれどもそれを待っているだけにならないように、教育があります。一人ひとりができることから始める、このfirst stepを踏むために、私たちはさまざまなことを学びます。何をすることがよいのかを考え、選択していきます。

ロンボク島でのさまざまな出会いは、私たちに自分自身を問い返すときを与えてくれました。私たちはときに自己矛盾を感じて、「持続可能な開発」から逃げたくなったり、自らの選択を正当化するために自己防衛になったりすることもあります。持続可能な開発のプロセスは、決してキレイで平坦な道ではありません。凸凹した道、開拓しなければならない場、一人では到底進むことができない道を通ることもあります。持続可能な開発は、一人ひとりの努力だけではなく、「ともにする」誰か、「ともにいる」誰かがいることで成しえることのように思います。

前回のスタディツアー同様、家族ではない異なる者たちが集い、ひとつの家族のように暮らした日々がこの冊子にまとめられました。インドネシア語で「相互扶助」や「協同」を意味する「ゴトン・ロヨン(gotong royong)」には、私たちが忘れていた「ともにする」ということがありました。本冊子はツアー参加者が、ロンボク島の人々の「ゴトン・ロヨン」を通して感じた記録が編まれています。孤独や孤立が引き起こすさまざまな問題を見聞きする現代社会において、本冊子の記録が「ともにする」「ともにいる」ことを改めて考えなおすきっかけとなれば幸いです。

結び

「大きなことをしてるわけじゃない、身近にある、小さなことをしているだけ」

シンプルな言葉に私たちはさまざまなことを思い巡らしました。「持続可能な開発」と聞くと、私たちはとても大きなことを成し遂げなければならないように思います。気候変動、人権侵害、経済格差など、国際社会で問題視される状況に、私たちはどう対応することが望まれるのか、解決策を探すなど途方もない道のりだと思ってしまいます。けれども、そうではないことに気づかされたスタディツアーでした。参加者と同世代の若者がそれぞれの土地でできることをしていました。賛同してくれる仲間を探し、ネットワークを広げていました。彼/彼女たちは、村をよくしたいという気持ちを原動力に活動していました。

持続可能な開発には、正解はありません。これだ!という解がないから、私たちはとても大変に、面倒に考えてしまいます。けれども村での生活を通して、私たちはすでに解をいくつも持っていることに気づかされます。ただそれらに気づいていないだけ、またそれらを複雑に覆い隠すさまざまなものに気を取られて、見つけ出せなくなっています。

「私たちは何をしますか?私たちには何ができますか?」この問いにシンプルに応えてみてください。一人ひとりが、それぞれの解を行動につなげます。村の若者たちがしたことは、こうしたシンプルなことの積み重ねです。私たちが日本に帰国した後も、村で出会った若者たちはこのシンプルなことを続けています。こうした「小さなこと」は問題解決には到底及ばないかもしれません。でも、「小さなこと」の繰り返しが私たちの日常の習慣になります。一人ひとりができる「小さなこと」を探し、持続可能な社会形成につながる習慣を身につけていくことが望まれています。

最後に、今回もツアーの企画から実施までのすべてにわたってご協力いただきましたNPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)の山本かおりさん、ロンボク島で私たちをケアしてくださったすべてのみなさまに謝意を表したいと思います。そして前回同様、ツアー中の記録および本冊子作成を担ってくださいました猪野純恵さんにも心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

2019年3月吉日

名古屋市立大学人文社会学部心理教育学科

曽我 幸代

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