2022年12月26日に、西ロンボクのマングローブ植林地「バゲッ・クンバール」で、インタープリテーション講座を実施しました。
今回の対象者は、ゆいツールボランティア(サマラスメンバー)で5人が参加しました。
Pelatihan guide secara interaksi di Bagek kembar kepada anggota SAMALAS, Lombok Barat, NTB.
(インタープリテーション講座。地名の紹介をしているところ)
私が今回やりたかったのは、マングローブ林をどのように案内したらよいか、ボランティアたちにお手本を示すことでした。
バゲッ・クンバールで、私たちが訪問者に伝えたいことは何なのか。
なぜ、ここでは植林が行われているのか。それから、伝統的な塩づくりの紹介も。
研修に先立って、ボランティアのコマンさんとマデくんと1週間前に準備を行いました。
バゲッ・クンバールのPOKDARWIS(観光チーム)のフスニさんも協力してくれました。
(左から、コマン、フスニさん、マデ)
下見中に、バゲッ・クンバールがあるチャンディ・マニック村の村長さん(ムリアディさん)と顔を合わせることができました。
Bersama Pak Kades, Desa Cendi Manik, Kecamatan Sekotong, Lombok Barat, NTB.
さて、研修はまず日本から持っていった「マングローブ生態系体験図鑑」(馬場繁幸先生監修)の紹介から始めました。(写真下)
この本は、ただの解説本ではなく、西表島を訪れた少年とガイドの会話で展開していきます。
このように、双方向型で情報を伝達し、相手の興味を引き出すやり方をインタープリテーションと言います。
(参考:日本インタープリテーション協会のページ)
さて、実際にインタープリテーションを体験します。(バゲッ・クンバールのゲートからスタート!冒頭の写真)
ガイド役は、サマラス代表のコマンさん。事前に準備した案内文に添って、説明していきます。
ゲートで、集落の名前や、バゲッ・クンバールの名前の意味を紹介した後、インフォメーションセンターに移動します。
残念ながら、インフォメーションセンターとは名ばかりで、今は何もないためゆいツールが作った「ロンボクに生息するマングローブリスト」を見せながら、このエリアでリストにあるほとんどの種類の木々を見ることができることや、インドネシアやロンボクを含むバリ・ヌサンタラ地域のマングローブ林の面積を伝えたり、バゲッ・クンバールがインドネシア国内に12ヶ所ある海洋・漁業省直轄のマングローブ植林地として選ばれていることなどを伝えたりしました。
(インフォメーションセンターの前で)
歩いていると、地面に大きな穴がいくつも空いていました。早速クイズです。
「この穴に住んでいるのはどんな生きもの?A:ヘビ、B:ねずみ、C:カニ」
答えは、Cのカニです。
では、AとBどちらのカニかな?
答えは、B。ロンボクでは、Kongok(コンゴッ)と呼ばれているようですが、違う種類のカニのこともKongokと呼んでいるため、正しい名前がまだわかりません。
さて、いくつか看板が立っているところにやってきました。
観光局のもの、海洋・漁業省のもの、自然資源保護センター(BKSDA)のもの、スコトン第一高校のもの。
ガイドはそれぞれの看板に書かれていることを紹介します。
これらの看板は、ここのマングローブ林が多くの関係者に注目されていることを意味します。
そして、バゲッ・クンバールのマングローブ林のスローガン「3E」についても説明します。
Ekologi(環境)、Edukasi(教育)、Ekonomi(経済)とは?
マングローブ林を守ることで教育に役立て、観光に利用することで村の経済発展に繋がる。という感じです。
これは、バゲッ・クンバールのPOKDARWIS(観光チーム)がほとんど唯一よどみなく説明できる言葉です。
それは、2017年頃に政府がここに植林地を設置したときに住民の教育を行い、POKDARWISが結成されて自分たちで主体的に考えた言葉だからだろう、と推測します。
さて、マングローブの植林地を見ながら次のクイズです。
「ここのマングローブは、植えてから何年くらいたつでしょうか?」
これらは、2017年に植林されたものなので、現在6歳になります。
引き続きクイズです。
「ここには、シルボフィッシャリーがあります。シルボフィッシャリーとは何でしょうか?
A:神聖な水浴び場、B:治癒力のある水浴び場、C:マングローブを植えて魚を育てる場所」
答えは、C。ガイドは、シルボフィッシャリーとは何か説明します。
★シルボフィッシャリー・・・漁業とマングローブの植林を組み合わせた伝統的な技術の養殖システムのこと。
その後、マングローブ林の中の畝を歩きながら、マングローブの樹種について紹介していきます。
(見つけたマングローブの花を手がかりに、樹種を特定)
あれ?(写真下)地面から何か、細いものがたくさん突き出していますね。すかさずクイズです。
「これはなに?A:呼吸するための根、B:マングローブの幹、C:マングローブの赤ちゃん」
答えは、A。気根といって、一部のマングローブは根からも酸素を吸収しています。
そんな感じで、マングローブ林を案内して、最後にバゲッ・クンバールの伝統的な塩づくりの小屋を見学して、ツアー体験は終了しました。
(塩づくりについてはとても興味深いので、また改めて紹介したいと思います。⇒塩づくりについて)
その後、インタープリテーションという手法について簡単に講義をしました。
講義の内容の一部。インタープリテーションの特徴とは?
●双方向のコミュニケーション(情報を一方的に提供するだけではない)
●クイズやイラストなどを使って、わかりやすく情報を伝える
インタープリターには参加者を楽しませたり、参加者の主体性を引き出したり、プログラムを効果的にデザインしたりといった能力が求められます。インタープリテーションは教育であり、同時にエンターテイメントでもあります。
(左から、フスニさん、オパン、私、コマン、タンティ、ティウィ)
以上、これらの講座は来年度、サマラスメンバーがバゲッ・クンバールで、POKDARWISメンバー等に実施する予定です。
今回、ガイド役を務めたコマンさんは、インタープリテーションは単なるガイドではない、ということを知り何かに気づいたようでした。
(山)
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NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)