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【おひとりさまの老後】ひとりでも上手に生きる
しばらく前に「70万部突破」という新聞広告を見たので、今ではもっと部数を伸ばしているかもしれない。「売れた」と言ってよい本だろう。
ヒットした原因は、いくつかあると思うが、なんといっても、上手いのはタイトルだ。
「おひとりさま」といえば、30代以上の非婚女性を指しているのが一般的。この言葉をタイトルに採用したことで、老後を強く意識する中高年層だけでなく、より広い年齢層の人が手にとったのではないだろうか。
老後をテーマにした本はこれまでもたくさん出版されているが、老後を身近に感じられる中高年層や、介護に直面している人を読者対象に据えたものが多い。
老後の「お金」に注目して、年金の制度や資産形成のノウハウなどを解説した本や、家族の介護の手法や利用できるサービスを紹介した「介護」の本は、その分野に興味がない人が読むことはないだろう。「お金」「介護」などテーマを絞り込めば、それによって、読者の幅は狭くなってしまう。
「おひとりさまの老後」では、「住まい」「人との付き合い方」「介護」「お金」、そして、「終わり方」を取り上げている。これらの項目は、これまで出版された「老後」の関連書籍と大きく異なるわけではない
ただ、本書では、1つひとつの項目について細かい知識を授けるわけではなく、「おひとりさま」の特長を踏まえ、「こう考えていけばいいんじゃない?」という感じのざっくりした提案になっている。ハウツー本ではなく、「生き方」「考え方」を伝授している。
日本は「高齢社会」で、平均寿命は女性のほうが長い。
離婚率が上昇し、結婚しても、再びシングルになる場合も増えている。
息子や娘がいても、核家族化で、同居するケースも少なくなっている。
したがって、女性は、「老後」と呼ばれる時間を、ひとりで過ごす可能性が高くなっている。
多くの人は、すでに、これらのことに気づいている。
国の社会保障制度も頼りになりそうにない雰囲気で、若い世代でも漠然とした不安も感じている人が多いはずだ。しかし、一方で、老後まで時間がある人は、「じゃあ、どうする?」を学ぶためにハウツー本を買って知識を吸収しておこうというところまで真剣に考えてはいないにちがいない。「貯金をしておこう」とか「疾病保険に入っておこう」といったことで済ませていると思う。
「おひとりさまの老後」は、老後の生活に関して、ざっくり提案する内容にしたからこそ、老後にはまだ時間的に余裕がある人たちも気軽に読める「生き方の参考書」になった。