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【ベーシック・インカム入門】本当に必要なお金をどうする?

2009-07-05 19:51:25 | Weblog
ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
山森亮
光文社

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【ベーシック・インカム入門】本当に必要なお金をどうする?

「ベーシック・インカム」とは、すべての個人に対して、等しく、無条件で給付される所得(お金)のこと。毎月、すべての人の口座に一定額が振り込まれるイメージで、これは課税されず、生きていくために必要な所得として、公的に与えられるものだという。

ベーシック・インカムには、いくつかの利点がある。
・ 生活保護は、給付対象を限定しており、給付のために所得調査を必要とするが、ベーシック・インカムはすべての個人に等しく支払われるため、給付に必要な調査が必要ではなく、経費が節減される。

・ 生活保護のような制度では、本当に給付が必要な人が給付を受けられていない事態が発生する。公的機関に相談にいっても対応してもらえなかったりすれば、給付が受けられない。住む家がなく住所がなければ申請できない。すべての人に等しく給付されれば、このような問題は起こらない。

・ 「生活保護を受けるのは恥」というように、受給に恥辱感を持たなくてよい。

・ 子育てや介護は家庭内労働であるといえるが、これらに携わる人も一定の所得を得ることができる。などなど。

一方で、ベーシック・インカムは、労働の意欲を減退させてしまうのではないか?という問いや、ベーシック・インカムとして給付するお金の財源問題などがあり、実現が簡単なわけではないようだ。

ベーシック・インカムの制度があったら、労働に対する考え方や、生活の仕方、生き方は、大きく変わるような気がする。

また、ベーシック・インカムは公的な給付だが、つい、会社員の給与制度につなげて考えてしまう。

私の場合、会社員として、毎月、支払われる基本給がある。そのほかに、賞与があり、そこに個人に対する評価が絡んでくる。

年収=基本給+賞与だが、賞与は、社員が等しく貰える一定額と、各個人の評価に伴う業績評価額で構成されている。一定額と評価による額の割合をどの程度に設定されるかによって、モチベーションは変わってくる。

業績評価の方法についても、どのような指標で評価されるかが問題になっている。
正直なところ、業績評価の評価は曖昧で、評価が上がっても下がっても釈然としない気持ちを抱えることが多い。

ベーシック・インカムの制度が導入された場合、個人の所得は、ベーシック・インカム+自分が労働して得た所得となる。
ベーシック・インカムは課税されないが、労働により稼いだ金額には課税される。

ベーシック・インカムとして給付されるお金は、税金から工面されるため、ベーシック・インカムをどの程度の金額とするのかは大きな問題だ。ベーシック・インカムを多額にすると、労働しなくても十分暮らせると考える人が増え、労働意欲が下がると税収も減り、制度そのものが維持できなくなる可能性も抱えてしまう。

ベーシック・インカムの考え方そのものは、ずいぶん前からあるもので、日本にも90年くらい前に紹介されているという。

改めて注目されているのは、「派遣村」に来た人々や、孤独死する高齢者の存在など、既存の制度が十分に機能していない事態が目立っているからだろう。

本書は、ベーシック・インカムの考え方について、諸外国における社会運動などと絡めて紹介している。

私には少し難しかったが、ベーシック・インカムは、自分自身の所得や生活設計とあわせて考える中で、とても興味深い考え方だった。
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